明日の日向を探す

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第7話 写真

公開日時: 2022年10月19日(水) 21:45
文字数:585

 少女は夢を見た。

 物を引き摺るような音がしっかりと聴こえてくる。

 呼吸を乱し、ゆっくり、確実にどこかへ向かう。

 少女は遠くから見つめている。

 太いタイヤがぐるぐる回る。

 少女は感情を……抑え込んだ。


 ひゅうちゃんは目を覚ました。

 ゆっくり起き上がり、服を着替えて洗面台へ。

 うがいをして、朝食を摂って、歯磨きをする。

 ごそごそと物音が倉庫から聞こえてきた。

 勝手口の扉を開けて、倉庫の様子を見に行くと、猫背気味の祖父が箱を動かしている。


「なに……してるの?」

「おう、ひゅうちゃん、倉庫の片付けをしてるんだよ。埃かぶってるし、いらないもん捨てないとなぁ」


 ひゅうちゃんは曜日を頭の中で巡らせた。

 同時に、田舎町に響くエンジン音と停止音、それから扉が開く音が届く。


「おはようございます!」

「おっ? 今日デイだったか、すっかり忘れとった。ちょっと行ってくるな」


 祖父は少し慌てた様子でニコニコと笑いながら倉庫を立ち去る。

 静かになった倉庫、置きっぱなしのダンボールを覗く。


「…………」


 ダンボールは開いたまま、たくさんのアルバムが詰められていた。

 1冊だけ背表紙が飛び出しているアルバムを取る。

 アルバムをめくった瞬間、小さく短い悲鳴をあげて反射的に手から離した。

 ぱらぱらとめくれていくアルバムの中はツーショットの写真がたくさん。

 満面の笑顔で写る祖父。

 隣には、黒い油性マジックで顔面を塗りつぶされた人物……――。

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