「な、何やってんすかタケル先輩。今の話、もしかして先輩、あの事故の」
無愛想な顔をした少年の背中から、ハジメが声をかけた。
悲しそうに眉を下げ、亀裂の入ったブタ貯金箱を手に駆け寄る。
「あぁッ⁉」
「あ……その貯金箱」
ひゅうちゃんは目を伏せて、小さく息を震わせた。
「なんだよお前ら、俺をそうやって加害者だって、人殺しの子だって言いたいのかよ!? 悪くねぇ、悪いのは飛び出したジジイだろ!! クソ、くそ、くそ、クソッ!!」
頭を掻き乱してハジメを突き飛ばした。
衝撃で後ろに下がり、持っていたブタ貯金箱が地面へ。
大きく割れて破片が散らばる。
中身はたくさんの500円玉が入ったポリエチレン袋。
「お金? あっ! ひゅうちゃん唇切れてる!」
ひゅうちゃんは指先を唇の端に添えて、ゆっくりなぞる。
ピリッと裂けたような痛みと、指の腹に赤が照る。
「アイツに何された? あれ、服も汚れてる。ごめん、一緒に行けばよかった」
「…………気にしないで、大丈夫だから」
頬を撫でるようにつたう温もり。
ボロボロ、ボロボロ、とめどない。
ハジメは慌ててポケットからハンカチを取り出す。
柔らかい繊維が水分をゆっくり、じわりと吸い取っていく……――。
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