少年は終始無愛想で見下ろしている。
しばらく踏みつけたあと、軽く揺するように蹴って離れた。
「う……げほッ、げほ……」
ひゅうちゃんは少しむせ込む。
「平八ってジジイがボケてたせいで滅茶苦茶だ。クソ、クソ……ボケたらさっさと薬で死なせときゃいいのに」
唾を吐いて少年はガラクタ置き場から離れていく。
苦い表情で起き上がったひゅうちゃん。
土を抉るほど拳をつくり、瞼をぎゅっと閉ざして足先に力を入れた。
「平八さんは……ボケてません……」
「あぁ?」
土で汚れた服。
腹を押さえて立ち上がった。
振り返った少年に、
「認知症じゃなかった!」
強く答えた。
タケルは鼻で笑い、表情を歪ませる。
「ああそう、じゃあなんでまともな奴が夜中に3車線の道路に飛び出すんだよ? 警察は徘徊したんだろうって言ってたぜ?」
「それは…………」
ひゅうちゃんは言い淀む。
顔色を曇らせて、頭に浮かび上がるのは細いタイヤと太いタイヤ。
ぐるぐる回っている。
ガラクタ置き場の底に埋まり、錆びれた単車のフロント側だけがはみ出ている単車。
「知ってるなら言え!!」
「あ……あ、あの」
再び詰め寄られ俯いてしまう。
ジリ、ジリ、と足音が聞こえてきた……――。
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