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第12話 言えないこと

公開日時: 2022年10月20日(木) 12:25
文字数:490

 少年は終始無愛想で見下ろしている。

 しばらく踏みつけたあと、軽く揺するように蹴って離れた。


「う……げほッ、げほ……」


 ひゅうちゃんは少しむせ込む。


「平八ってジジイがボケてたせいで滅茶苦茶だ。クソ、クソ……ボケたらさっさと薬で死なせときゃいいのに」


 唾を吐いて少年はガラクタ置き場から離れていく。

 苦い表情で起き上がったひゅうちゃん。

 土を抉るほど拳をつくり、瞼をぎゅっと閉ざして足先に力を入れた。


「平八さんは……ボケてません……」

「あぁ?」


 土で汚れた服。

 腹を押さえて立ち上がった。

 振り返った少年に、


「認知症じゃなかった!」


 強く答えた。

 タケルは鼻で笑い、表情を歪ませる。


「ああそう、じゃあなんでまともな奴が夜中に3車線の道路に飛び出すんだよ? 警察は徘徊したんだろうって言ってたぜ?」

「それは…………」


 ひゅうちゃんは言い淀む。

 顔色を曇らせて、頭に浮かび上がるのは細いタイヤと太いタイヤ。

 ぐるぐる回っている。

 ガラクタ置き場の底に埋まり、錆びれた単車のフロント側だけがはみ出ている単車。


「知ってるなら言え!!」

「あ……あ、あの」


 再び詰め寄られ俯いてしまう。

 ジリ、ジリ、と足音が聞こえてきた……――。




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