部屋に鉄の音が鳴り響く。
カンッ、カンッ、カンッとゆっくりと一回ずつ何かを絞り出すように鉄の音が鳴る。
真っ赤に燃える火炉だけが部屋の中を照らし、地獄のような暑さの中で一人の悪魔がニヤリと笑みをこぼす。
ただの鉄の板金に命が吹き込まれ形ができあがっていく。
ゆっくり、ゆっくりと悪魔はまるで我が子を愛でるように鉄を叩いた。
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どれくらいそうしていただろうか。
悪魔がそう思い気づくと金床の上には美しく黒光りするシンプルなデザインの片手剣ができあがっていた。
「綺麗だ」
悪魔がそうつぶやくとおもむろに袋から小さな赤い宝石を出して剣の鍔に一つ埋め込んだ。
「完成した!」
悪魔は子供のように喜びながら剣を手に取る。
「あ、こりゃダメだ……」
しかし悪魔がそういうと手に持っていた剣を地面に投げ捨てた。
「次はどこに捨てようかな~。前は南かどっかの洞窟に捨てたんだっけな~」
悪魔はなにかに悩むように手で顎を押さえながらうんうんと唸っていた。
「そうだ、次は東にある人間が住み着いていない最果ての大地にしよう!」
すると手をポンッと叩き納得したような顔をする。
「あそこなら誰にも迷惑をかけずゴミを処分できる!」
悪魔は地面に落ちている剣を拾い、目の前に黒く渦巻くゲートを出す。そのゲートの中に黒い剣を投げ捨てゲートは消える。
「あーあ、せっかく今までで一番のできだったのにな~」
もったいないと言わんばかりの口調で悪魔はそう言うと道具の片付けを始め、それが終わると部屋をあとにした。
「お前は駄作だ。だけど……誰かに使ってもらえるといいねア……」
最後に悪魔はそう言ったような気がした。
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