異界料理譚

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1章 腹が減って死にそうなんだ。

カレー屋とコンカフェを間違えた。

公開日時: 2025年1月13日(月) 23:43
文字数:1,164

 腹が減った。

 

 人間だれしも一度は思ったことがあるだろう。

 32歳、会社員である私こと三輪義経みわ よしつねも当然のごとく思ったことがある。というよりも絶賛ただいま腹が減っている。

 外回りを早めに終わらせ、時刻は現在14時30分ちょうど。4月中旬のこの時間は気温もちょうどよく天気は快晴。昼寝をするのならこれ以上のベストコンディションはない。腹が満たされているのなら最高だろう。

 だが、私は朝にスープをすすってからは何も口にしていない。つまり腹が減っているのだ。

 

 現在地は住宅地のど真ん中であるため、駅に向かって足を進める。近くに何かしら飯屋があるだろうとおもって、スマートフォンは特にいじらず、足だけをとにかく進める。

 とにもかくにも腹が減った。

 コンビニで済ませても良いが、今回は普段あまり来ない土地であることもあって前々から何かしらの料理屋に入ろうと考えていたのだ。

 コンビニを通りすぎて駅まで一直線に足を進める。

 

 「ごはん、ごはん、ごはん。」

 

 ごはんと連呼していると不思議と白米を食べたくなるのが日本人の性だ。よし、今日はごはんもので攻めようと決意する。

 

 すると、ちょうど良く香辛料の匂いが漂ってくる。これはカレーか?

 匂いにつられて十字路を右に曲がって、住宅地を進むとスマートフォンで調べるまでもなくカレー屋に行き当たった。「坂本カレー」とはなんと直球なんだ。しかもちょっと古めの看板だから昔から営業しているのだろう。

 

 「おお、日本人がやってるっぽいな。」

 

 勝手なイメージでカレー料理店は最近は外国人が多いのかと思っていたが、世の中にはこんな雰囲気のよい店があるものだ。

 よし、今日はここにしよう。そしてカレーを大盛で食べるのだ。

 少しオシャレなドアに手をかけようとすると、バチっと手とドアのぶの間がはじけた。

 

 「うぉっと。」

 

 静電気にしては異常な電気が走っていたような気がするが、そんなことは気にしていられない。

 とにもかくにも腹が減っているのだ。腹が減って死にそうなのだ。

 ドアノブにもう一度手をかける。今回は問題がない。しっかり握れる。

 ドアノブを勢いよく引く。ようやくカレーにありつける。

 

 腹が減った。

 人間だれしも一度は思った事があるだろう。

 そして、私は忘れていた。いや、そんなことが考えられないほど腹が減って死にそうだったともいえるが、人間だれしも腹が減っている時は注意力散漫だったり、怒りやすかったりするものなのだ。


「あんた、あたしに惚れたんじゃないんなら、あんま人の顔をじろじろ見るもんじゃないよ。」


 19、18世紀風の着古した洋服のようなものをまとう40代ほどの西欧系の赤髪の女性。木で作られたイスとテーブル。なんかよくわからない動物の頭骨が飾ってあるカウンター。怪しく紫に光る光源多数。

 

 私の大盛カレーはドアを開けた瞬間に広がった光景に全て吹き飛ばされてしまった。

 

 

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