地上で鳴る警戒警報が遠くに響く。
「わしに会いたかったじゃろ」
「おぉ、会いたかったぞ、勘ちゃん」
不気味な程に静かなアルガスの最下層に、はつらつとした笑い声が反響した。
面会は20分までと制限されていて、会話も鉄格子を挟んでするのが決まりだ。なのに大舎卿は持参した鍵を取り出し浩一郎へ見せつける。
アナログな鉄の鍵と電子錠の拘束は、彼の罪の重さだ。まだ何年も残っている獄中生活を断つように、 大舎卿はパチリと鍵の開く音を響かせる。
「いらっしゃい」と迎えた浩一郎の笑顔が途端に冷めた。
「何してるんだよ」
「お前をここから出してやる。一緒に戦え」
「はぁ?」
「誠の許可は取ってある」と加えて、大舎卿は淡々と扉の中へ入り込んだ。
「罪人を出すなんて穏やかじゃないな。前に俺が戦ってやろうかって言った時は、そんな気がないって言ってたじゃないか。そんなにアルガスは切羽詰まってるのかい?」
「上に松本がおる」
「──ヒデか」
浩一郎の瞳が鋭く光った。しかしそれは一瞬で戻り、クツクツという笑い声が牢に反響する。
「この間も京子ちゃんがハガちゃんを連れてここに来たけど、まるで同窓会だな」
京子の記憶の解除を浩一郎に頼んだ時だ。出戻りの颯太を彼女に同行させた。
「浮かれた話ではないわ。できるだけ被害を出したくないだけじゃ」
「そんなんで俺を開放するって? ライオンの檻を開けるつもりかい? バーサーカーならあの眼鏡くんだっているだろう?」
「綾斗とはもう戦った後じゃ。余力なんて残っていないだろうが、暴走されたら困るんでな」
「壁要員ってことか」
銀環のない能力者の衰弱は暴走を引き起こす。バーサーカーの松本がもしここで暴走を起こせば、被害は相当だろう。
松本と綾斗は今回の戦いで刃を交えたが、致命傷に近い傷を受けた松本は現場から忽然と姿を消したのだ。
その事をざっくりと話すと、浩一郎は「分かったよ」と興味あり気に眉を上げる。
「優しいな、勘ちゃんは」
「はぁ?」
「まぁいいけどさ。それより、俺は一応トールって事になってるんじゃなかったっけ?」
試すような浩一郎を、大舎卿はじっと睨んだ。
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