ドンという衝撃に、走行中の自動車が跳ね上がる。
ダイレクトに尻を突き上げられ、龍之介は「うわぉ」と目の前にある運転席のシートにしがみ付いた。
「ごめんね」と久志はハンドルを握りながら振り向くが、彼も朱羽も大して驚いても居ない様子だ。
「やってるやってる」
駅の前にあるタクシープールに車を停め、3人は久志の積んできた荷物を分担して抱え廃墟のある方角へと歩いていく。
観覧車の光る手前では、激しい戦闘音と光が止むことなく炸裂している状態だ。
龍之介が目に見えるままの状況に息を呑みながら二人に付いて行くと、中立地帯だという小さなエリアにかまぼこ型の巨大なテントが張られていた。アルガスの救護エリアらしい。
「お疲れ様です」と制服姿の護兵に迎えられて中へ入ろうとすると、テントから少し離れた位置に桃也が居る事に気付いた。施設員から渡されたドリンクを手にフィールドを見つめている。
龍之介の視線に気付いた朱羽が彼へ声を掛けた。
「桃也くん、中に入らないの?」
「俺は境界線から外には出られないルールなんですよ」
「確かにそんな条件が入ってたわね。貴方がそこを超えたらアルガスの敗北になるって事ね」
「そう言う事です──って、朱羽さん? なんで……」
あまりにも自然な朱羽の合流に、桃也がハッと目を丸くした。
「私も戦うつもりよ。今更だけど、キーダーとして本部に戻っても構わないかしら?」
きまり悪そうに微笑む朱羽に、久志が「心強いよね」と付け加える。桃也は「はい!」と破顔した。
「勿論ですよ、有難いです!」
「お礼なんて言われる立場じゃないわ。サボってたのは私なんだから」
「そんな事ないですよ」
「ううん。桃也くんも頑張ってね」
次期アルガス長官の高峰桃也は、今回の戦いで初めて指揮を執る事になった。まだどこか緊張は晴れていない様子だ。
久志は朱羽から荷物を受け取って中へと運び込んでいく。
龍之介はさすまたを抱えながら持ってきた荷物を手に彼を追い掛けた。地面は土のままで、「失礼します」と入口を潜ると、テント内のすぐそこに怪我人が居る事に気付く。
胸騒ぎにハッとして、龍之介は相手を確認した。まさかの相手だ。
「修司さん!」
頭部を包帯で巻かれた修司が簡易ベッドに横たわっていたのだ。
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