3. 裏組織魔法ギルド
そして午後の授業も終わり、放課後になる。そしてオレは王都の裏路地にある一軒のアイテム屋に向かう。店の名前は『リリィ・ガーデン』そして中に入ると、そこには赤髪のポニーテールの少女がいた。
「遅いわよ!何してたの!?」
彼女はオレの顔を見るなり怒鳴ってくる。こいつはオレの幼馴染みで名前はカタリナ=ルナレット。『リリィ・ガーデン』というアイテム屋の店主で、オレの協力者の1人だ。
小さい頃からよくこの店で買い物をしていたこともあり、オレのことをかなり気に入ってくれている。そして魔法に関する道具も売っており、オレはここで魔法具を買って使っている。
「まったく!アデルあんた連絡もできないの?」
「悪かった……」
「まぁいいわ。『聖水』は?」
「いや……実は昨日2本使ってだな……今は残り1本しかないんだ」
「あーもう!また使ったのね!作るの大変なんだから、早めに言ってよ!だから連絡寄越せって毎回言ってるのに!」
そう言ってカタリナは頭を抱える。オレが昨日悪魔討伐をしたときに使った『聖水』はカタリナが作ってくれたものなのだ。
守り専門。アリスがオレに言った言葉。あれはあながち間違いじゃない。オレは悪魔討伐をする魔法を使うことができない。だからカタリナの『聖水』とある程度の護身術を使う。まぁ……本当はアリスがいれば何も問題にならんのだけど。
「仕方ないだろ?アリスが近くにいなかったんだ。それにオレはお前の『聖水』には感謝しているんだぜ?」
「はいはい、分かったわよ。それでどんな悪魔を倒したの?」
「ああ、それは……」
オレはカタリナに昨日倒した悪魔のことを話す。すると彼女は腕を組みながら考え事をする。
「ふむ……。まぁ『聖水』が活躍して良かったわ。でも、そんな奴を相手にできるなんてさすが私のアデルね」
「その言い方だとなんか嫌味みたいだが……。まぁいいか。とにかく次からは気をつけるようにするよ」
「もう何回も聞いてるわよ。それ。今『聖水』を作るから待ってて」
それからしばらく待っているとカタリナが戻ってきた。
「はい、『聖水』できたわよ。代金は500万ゴールドね」
「えっ!?高すぎないか?」
「バカね。材料費が高いのよ。それにあんたが早く言わなかったんでしょ?これくらい当然よ。と言いたいけど、お代はいらないわ。エミリーちゃんにケーキでも買ってあげなさい」
「マジか!助かるぜ!」
「その代わり私のためにもっと頑張りなさいよね!」
そう言ってカタリナは笑った。オレもつられて笑う。本当に良い奴だ。こんなことを無償でしてくれるのはこいつだけだしな。オレたちはその後少し雑談をして別れた。
そして次の日。家を出てしばらく歩くと、場違いな馬車が止まっている。オレが横を通り過ぎようとすると中から金髪の可愛い少女が声をかけてくる。
「アデル=バーライト。無視はいただけませんけど?」
「なにか用か?」
「通信魔法具のメッセージを見てないのですか?本部からの召集です」
「はぁ。またかよ、最近多いんだが」
「それだけ王都の治安が悪くなっていると言うことです。あなたは本部までの足がないと思ったので、こうして迎えに来てあげたんです。土下座して感謝してほしいですね?」
「へいへいありがとよ。相変わらず口が悪いなお前は」
「微塵切りにしますよアデル=バーライト?」
「冗談だよ冗談。それより早く乗せてくれ」
オレはそう言いながら馬車に乗り込む。そしてアリスの隣に腰掛ける。そしてアリスの方を見ると、いつものように無表情だが、その中でも不機嫌そうな顔をしているような気がした。
「どうしたんだよ?」
「別になんでもありません。それよりもなぜわざわざ私の隣に座るんですか?」
「いやオレ乗り物酔うから、進行方向を向いてないと吐きそうになるんだ。だから隣に失礼するぜ」
アリスは大きな溜め息をつく。なんだよ……オレ何もおかしなこと言ってねぇぞ?
窓から外を眺めると、大通りには色々な店が立ち並び、大勢の人が忙しく働いている光景が見える。この王都の平和を守るためにオレは『レイブン』の一員として戦わなければならない。
しばらく馬車を走らせると王都のギルドにたどり着く。
「到着しましたお嬢様。アデル様。」
「ありがとう。帰りにまた連絡します」
「じゃあ行くぞアリス」
「指図しないでください」
オレたちはそう言って、そのままギルドの正面から中に入るわけでもなく、そのまま裏口に行く。この裏口は特殊な魔法で管理されており、特定の人間しか入れないようになっている。
オレは扉を開けて中に入り、アリスもそれに続く。そしてそのまま地下に向かう階段を下っていくとそこには大きな空間が広がっていた。そこはまるで訓練施設のような場所だ。天井は高く、壁際には剣や槍などの武器が置いてある。
「来たな!アデル!アリス!休む暇がなく申し訳ないが緊急事態でな。実力を考えれば適任はお前たちしかいなかった。」
オレたちの入ってきた入り口とは別のところから大柄な男が入ってくる。彼は『レイブン』の団長であるグレン。昔はかなり有名な冒険者だったらしいが、今は引退してここでギルドの職員をしている。ちなみに元Sランクの冒険者で『豪腕』という二つ名を持っている。
「緊急事態ってなんですか?また悪魔が出たのか?」
「ああ。そのまさかだ。ネージュ説明してやってくれ」
彼女はネージュ。この『レイブン』の参謀的な存在。もちろんネージュさんも実力者だ。能力は『読心術(テレパシー)』。読んで字のごとく心の声を読み取る力がある。だからオレはこの人と話す時は緊張してしまう。
「分かりました。今回の悪魔は『ナイトメア』と呼ばれる悪魔です。その名の通り悪夢を操る悪魔で、その能力のせいで討伐が難航しています。現在確認されているだけでも犠牲者は30人以上。このままでは王都全体の被害も出かねません」
ナイトメア……。厄介な相手が出てきたな。人の夢の中に入って、精神を壊してくる悪魔。普通なら夢を見るのはレム睡眠と言われているが、その状態で攻撃されるとその人はショック死する可能性が高い。それほど危険な奴なんだ。
「それで、どんな姿なんだ?」
「はい。見た目は人間の子供の姿をしており、その外見からは想像できないほどの力を秘めています。また奴の能力は『悪夢』。人々の心に恐怖を植え付けます。さらに奴は夜にしか現れないため、我々もなかなか手が出せていません」
「なるほど……」
「そこであなたたちには奴の能力を受けないようにするための護符を渡します。これを持っていけばある程度は大丈夫でしょう」
「とは言っても、とりあえず相手は未知数だ。油断するなよ?この任務やってくれるな?アデル、アリス」
「了解だ」
「はい」
こうしてオレとアリスはナイトメア討伐の任務を受けるのだった。
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