【最強の剣×盾 魔法士バディ誕生!】絶対領域と瞬撃の剣姫

夕姫
夕姫

4. 情報屋を探せ

公開日時: 2022年7月10日(日) 18:00
文字数:2,296

 4. 情報屋を探せ




 今日は休日。オレは今、王都の噴水広場にいる。なんでも『ナイトメア』の情報をある情報屋から聞いてこいって話だからな。その情報屋はオレたち『レイブン』のお得意様らしいけど、オレは会ったことがない。


 それにしても団長のグレンさんが『絶対に失礼のないようにな』と真面目な顔して念を押すくらいだから、余程の人物なんだろうな。


 なぜ噴水広場にいるかと言うと……ああ来たな。ちょうどそこに一台の馬車が到着し、中から可憐な少女が出てくる。


「お待たせしました。アデル=バーライト」


「ああ。別にそこまで待ってないから気にするな」


 今日のアリスは私服だ。それもかなり可愛いやつを着ている。いつもの制服も似合っているが、こういう格好もいいな。とかなに考えてんだオレは。これも仕事だからな……。そんなことを考えているとアリスは不機嫌そうにオレに言ってくる。


「あの。私の格好を見て何も思わないんですか?」


「え?いやーまあ似合ってると思うぞ」


「最低な褒め言葉ですね?彼女いない歴=年齢のあなたに期待しても仕方ないということですか。まぁいいです。とにかく行きましょうかアデル=バーライト」


 そう言ってアリスは前を歩いていく。なんかムカつく言い方だが、事実だし反論できないので黙っていることにする。変な反論して面倒なことになるのは御免だからな。そのままオレたちは王都の街へと繰り出す。まずは情報屋のところに行くのかと思ったら、なぜか違う場所に向かっている。


「おい。どこ行くんだよ?」


「決まってるじゃないですか。あなたの洋服選びですよ?」


「いやなんでだよ!?」


「あなたのそのダサい格好じゃ私には釣り合わないです。元の素材も普通ですし。」


「お前喧嘩売ってんのか!?」


「はい?私はただ客観的な意見を述べただけですが?それに私が選んであげると言っているのですから大人しく言うことを聞いてください。ほら、早く来てください。置いていきますよ?」


 こいつマジでムカつくんだけど!でもここで言い合いしたらまた時間食うだけだから我慢するか……。というわけで、アリスの選んだ服を買うことに。そして試着室で着替えて出てきたオレを見たアリスはいつものように無表情で言い放つ。


「まぁ……及第点ですね。昔の王都なら万死に値するレベルですが、仕方ないでしょう」


「お前な……」


「せっかくなのでお代はいりません。あなたにプレゼントしてあげますよアデル=バーライト?」


「それはありがたいけどさ。なんでこんなことをしてくれるんだ?」


「これは貸しです。いつか返してもらうための準備みたいなものですよ」


「わかった。いつか返すよ。それにしてもお前って意外といい奴なんだな」


 するとアリスは無表情のまま顔を背ける。あれ?怒ったのか?


「……別にそういうわけではないです。ただこの借りは絶対返してもらいますからね?覚悟していてください」


「あーはいはい。覚えとくよ」


「あと、お前じゃありません。あなたはいつになったら私のことをアリスと呼ぶのですか?」


 アリスは少し不機嫌そうな顔で言う。確かにまだ名前呼んでなかったっけ?まぁこれから一緒に行動することも多いだろうし、そろそろいいか。


「悪かったよアリス。これでいいか?」


「それでいいです。では行きましょうかアデル=バーライト」


 そしてオレとアリスは情報屋がいるという喫茶店に向かうことにする。良く物語の世界に出てくる裏路地にある怪しい店だ。


「喫茶店『ブラック・キャット』ここみたいです。入りましょうか」


「おう」


 中に入ると客は誰もおらず、カウンターの向こう側に一人の男が座っていた。どう見てもマスターにしか見えない。


 落ち着いた色合いのテーブルや椅子は全て木製で、使い込まれた年季が刻まれていた。


 天井で回るシーリングファンの動きはぎこちない。


 薄暗く不気味さすら感じる店内……幽霊でも出そうだな。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」


「二人です」


「かしこまりました。こちらへどうぞ」


 案内された席に向かい合うように座り、コーヒーを注文する。すると男は奥に行き、数分後カップを持って戻ってくる。


「ごゆっくり」


 そう言って去っていった。そしてオレたちは出されたコーヒーを一口飲む。うん美味いなこれ。今まで飲んだことがない味だ。アリスの方を見ると、同じように感心したような顔をしていた。こう見るとやっぱりこいつは美人だよな。


「なかなか美味しいですね」


「ああ。そうだな」


「情報屋はまだ来てないようですね」


「ああ。来るまで待つしかないな」


 それからしばらく待っていると、店の扉が開き誰かが入ってくる音がする。ようやく来たか。オレとアリスは立ち上がり、入ってきた人物を見る。そこにいたのは一人の少女だった。見た目は10歳くらいだろうか。とても小柄で可愛らしい女の子だ。そんな子が一人でこんなところにくるなんて珍しいなと思っていると、その子がオレたちに話しかけてきた。


「あの……。もしかして『レイブン』の方たちですか?今回の方はお若くて優しそうな人ですね!」


 その子は嬉しそうに言う。若いって……?お前の方が十分若いんだが……。そんなことを考えているとアリスが声をかける。


「あなたの名前は?」


「あ、すいません。申し遅れました。私は……『クイーン』と言います。本名は内緒です。一応あなた方が探している情報屋ですよ?」


 マジ?この子本当に情報屋なのかよ。なんか全然強そうに見えねえんだけど。でもオレたちが探してる情報屋ってことは間違いなさそうだけど。でもなんでこんなに幼いんだろうな。


 こうしてオレとアリスは『クイーン』と名乗る幼い情報屋の少女と対面するのだった。

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