14. 相棒なので
何とか悪魔憑きと思われるゴブリンを討伐することができた。そのあとも何体か出てきたが、同じような個体はいなかった。そして目的の数を討伐したのだが……
「セリア=グランメール。遅いですね?」
「……ここにいても仕方ないし戻るか。」
オレとアリスは戻るために歩き出す。すると前方に人影が見えてきた。そこにいたのは……
「セリア!?」
「うわっ!ビックリした……。あれ終わっちゃった?2人ともお疲れさま~。」
そこにはトマトジュースを両手に持ち、幸せそうな顔を浮かべるセリアがいた。
「何してたんだよ……?」
「これ飲む?」
「いらん。」
まったく自由なやつだ。でもセリアがいなくてちょうど良かったな。じゃなきゃオレたちの魔法を見られるところだったしな。
「それでは戻りましょうか。」
「ああ。」
こうして実地授業は終わりを迎える。そしてその帰り道。
そういえば……あのゴブリンは結局なんなんだ?明らかに他の個体とは違う強さを持っていた。それにあの魔力は間違いなく悪魔のものだった。やはり魔物も悪魔憑きになるのか。だとしたら、かなりヤバイことになりそうだけどな。
そんなことを考えていると、あの銀髪ツインテールが唐突にオレに向かって言ってくる。
「ねぇねぇ!アデル君!」
「どうしたんだ?」
「今度さ、一緒にデートしようよ!」
「はっ!?」
突然の誘いにオレは驚いてしまう。
「デッ……!?いや……無理だろ。」
「どうして?」
「オレたちはそういう間柄じゃ……」
「間柄?でも友達じゃん!」
友達になった覚えはないが、そう言われると言い返せない。オレはセリアになんて言えばいいか分からずに困ってアリスを見てしまう。するとすごく蔑んだ目でオレに言う。
「なんですか?私を巻き込まないでください。」
くそぉ……味方がいない。頼む助けてくれオレは女の子に免疫がないんだよ相棒!オレは心の中で必死に助けを求めたが、もちろんアリスが応えてくれるわけがない。
「そういう事で決まりね!」
「おい勝手に決めんなよ!」
「いいじゃないですかアデル=バーライト。あなたにはこの先訪れない奇跡かもしれませんよ」
こいつ……絶対楽しんでるだろ?アリスまでオレの敵になった。もうダメかもしれない。オレは肩を落として歩きだす。
「アデル君。約束だよ!」
後ろから聞こえる声にオレはため息を吐いて答えた。
「はぁ……。分かったよ。」
「やったー!!じゃあまた連絡するね!!」
「おう……」
元気よく去っていくセリアを見ながらオレは呟く。
「デートか……」
オレは女友達がいない。だから当然デートの経験もない。というかそもそもオレはモテたことなんか一度もなかった。だから今回のことは本当に予想外だ。正直どうすればいいのか分からない。
オレが気軽に話す異性は、愛しの癒しの存在エミリーと横にいる鉄火面無表情公爵令嬢だけだし。
「はぁ……」
自然とため息が溢れてくる。
「何を悩んでいるんですか?たかがデートくらいで。」
「たかがって!オレにとっては死活問題なんだよ!デートしたことねえし……何着ていけばいいかも分かんねぇし……。そもそも男と女が2人で出かける意味もいまいち理解できねぇ。」
「子供ですかあなた?はぁ……。情けないですね。そんなことで悩むなんて。」
「だってなあ……今までこんなこと考えたこともなかったし……。」
「まあいいです。私に任せてください。」
「任せるって?」
「私があなたの初めての相手になってあげますよ。感謝してくださいアデル=バーライト。これは借りですからね」
ん?どういうことだ?つまり……アリスがデートしてくれると言うことか?
「お前が練習相手になると言うこと?」
「はい。不本意ながら。相棒なので仕方なく」
すごく不機嫌そうな顔でそう言うアリス。不本意なら別にしてくれなくても……。でもアリスなりに気を使ってくれたのだろう。ここは素直に感謝しておく。
「ありがとうな。」
「いえ……。あくまで練習ですので。」
「それでも助かるよ。」
「はい。では今週末にでも。」
「ああよろしく頼む。」
こうしてオレの初めてデートの練習相手がアリスに決定した。そして翌日。放課後にオレとアリスは『レイブン』本部に呼び出しを受けていた。おそらく新しい悪魔の情報だろう。
「おう!悪いなアデル、アリス。また仕事だ。ネージュ頼む」
「はい。今度の悪魔の名前は『エキドナ』といい、多くの男を誘惑して喰らう悪女の悪魔です。なんでも、その女を見た男はどんな美男子でも骨抜きになってしまうとか。」
「美男子……良かったですねアデル=バーライト。悪魔にすら相手にしてもらえませんね」
「うるせぇ!ほっとけ!」
「それで、2人にお願いしたいことがあります。その悪魔の目撃情報なんですが……あら?」
そこまで言うとネージュさんはオレとアリスの顔を交互に見ると微笑みながら言う。
「ふふっ。この王都でも若者に人気のスポット。ちょうどあなたたちが週末デートする場所なの。良かったわ。若いっていいわね」
そしてすぐにオレの左脇腹に肘打ちが飛んでくる。
「痛っ!……何すんだよ!」
「何、心を読まれてるんですか?練習と言ったでしょう。下心を出してるからですよ。最低ですねアデル・バーライト。」
「なんでだよ!そんなこと言ってお前じゃねぇのか?」
「なぜ私なんですか?そんなこと絶対ありえませんが?」
「ふふっ。どっちかしらね?それじゃあ詳しい説明をするから聞いてちょうだい」
そう言ってネージュさんはオレたちに地図を見せる。そこは中央広場にある大きな時計台だった。
「目撃者によると、ここに夜な夜な現れて男を魅了していくらしいの。アデル君とアリスちゃんには明日の夕方にここで張り込んで欲しいのよ。」
「分かりました。」
「了解です」
そうしてオレは、デートの練習と悪魔討伐依頼を同時に受けることに決まった。
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