王女さまとゆかいな仲間たち

よぞら
よぞら

第5話 いざ、王都へ!

公開日時: 2020年10月12日(月) 16:00
文字数:2,364

 次の日。茅尋と未来は、パメラと一緒に大神殿の部屋で寝るわけにはいかなかったので、小屋で寝ていた。

 王侯貴族の為に、大神殿には特別な部屋が7箇所ほど用意されているという。


「お二人とも、おはようございます」

「おはよう、パメラ」

「おはー、パメラちゃーん」


 日が昇るくらいの時、小屋の扉が開いてパメラが中に入ってきた。

 自分たちも早起きだと思ったが、パメラは昨日とは違う服を着ていたので、パメラの方が早起きだったようだ。一体、何時頃に起きているのだろうか。


「殿下、こちらが?」

「ええ、そうです」


 すると、パメラの後ろから男の人の声が聞こえてきた。頭に?を浮かべていると、パメラが少し横にずれ、パメラの後方にいた聖職者風の男性が小屋の中に入ってきた。

 中世の聖職者がつけていそうな高い帽子を被り、服はどこからどう見ても聖職者ですよ、という雰囲気丸出しの、白を基調とした服であった。


「ふぅむ」


 その男性は、小屋の中に入ってくると、ツカツカと茅尋と未来の方へ歩いて寄ってきた。寄ってきたその男性は、茅尋と未来の顔をマジマジと見つめたあと、下から頭の先までなめるように見た。

 な、なんなんだ、この男は。乙女の顔をマジマジと見つめたあと、なめるように見て・・・・・・。変態か!?


「なるほど、異世界からやってきた、というのは本当のようですな」

「え?」

「だから、そう言ってるでしょう? ウェッジ司教」

「あ、あのー・・・・・・?」


 ウェッジ司教と呼ばれた人がパメラにそう言うと、ウェッジ司教は顎に手を当てて何かを考え始めた。何がなんなのかわからず少し混乱していると、それに気がついたパメラが、ウェッジ司教のことを紹介してくれた。


「あ、ご紹介が遅れました。こちら、ジェイフス司教区で司教を務めています、ウェッジ・ミュラー様です」

「初めまして、ウェッジです」

「は、初めまして」


 ウェッジ司教は、左胸に手を当ててうやうやしく頭を下げたので、こちらも釣られて頭を下げた。

 司教区を任されている司教ということは、かなりの高位聖職者であるということだ。どちらかというと平民みたいな自分たちにも頭を下げられると、どうしても申し訳なくなる。


「そういえば、司教区を任されているのに、大司教ってわけじゃないんだね」

「司教区の責任者が司教ってだけだからね。首都とかにいる司教は、大司教って呼ばれたりするけど、基本的な権限とかは変わらないんだよ」

「へー」


 未来に聞かれたので、地球での司教について軽く説明した。むろん、この世界での司教や大司教のくくりが異なる可能性はあるので、この限りではないが。


「それで、ウェッジ司教。どうですか?」

「ええ。私ではどうすることも出来ませんね」

「教皇はいらっしゃらないのですか?」

「天使降臨祭の準備のため、他の6国へ外遊へ行っておられます」

「戻られるのはいつになるのです?」

「あと2ヶ月ほどはかかるのでないか、と」


 この世界にも、教皇はいるようだった。そして、この世界の教皇も、現代の地球のキリスト教のトップと同じくファブリス教のトップのようだった。しかし、天使降臨祭とかいう祭りの準備の為に、外国へ出かけているらしい。


「あの、天使降臨祭というのは?」

「天使降臨祭というのは、天上におわす、天の使いの皆さまをお迎えし、崇め敬うお祭りです。2年に一度行われるお祭りで、今後2年間の五穀豊穣を願うお祭りでもあるんです」

「へー」

「殿下。一度、王都へ戻られたらいかがですか? 先日、国王陛下より書状が届いておりました」


 すっかり忘れていたが、パメラは現在のガーネット王国国王の娘で、姫さまなのだ。何人兄弟の何番目なのかは知らないが、王位継承者の一人であるといえる。


「そうですね、長いこと王都へ戻っておりませんから、王都へ一度里帰りしましょうか」

「それがよろしいかと」

「チヒロ、ミク。私とともに、王都・・・・・・いいえ、王城へ来てくださいませんか?」

「「「え?」」」


 三人の声が重なった。ある意味で奇跡と言える出来事である。

 一体、この姫様は何を訳の分からないことを言い出すのだろうか。平民だとかいう以前に、そもそも、異世界人である自分たちが王都に入るだけでも畏れ多いのに、その上、王城にまで入るとなると、心臓が破裂してしまうのではないだろうか。


「で、殿下。このような、得体のしれない連中を王城へお連れするなど・・・・・・」


 確かに、異世界人である私たちは、こっちの世界の人間からすると得体の知れない人間なのかもしれないが、甚だ失礼である。


「ウェッジ司教、それは失礼ですよ。お二人は、異世界に飛ばされた私を、介抱してくれただけではなく、こちらに戻ってくるためのヒントもくれた、私の恩人です。それに、お二人がこちらの世界に来てしまったのは、私の責任です。なれば、お二人の身分を保障するためにも、王城へ来てもらうのが、最も手っ取り早い方法だと思うのです」


 ものすごい早口でまくし立てていた。その姿を見たウェッジ司教は、若干引いていたようにも見えた。しかし、その熱意(?)に押されたのか、ウェッジ司教は長いため息をついたあと、パメラの方を向いた。


「分かりました。それでは、国王陛下により身分が保障されるまでは、我々ファブリス教がその身分を保障致しましょう。侍者として殿下に付き従い、教会の者として王城へ入れるよう、手配いたします。今日中に手配は致しますので、ご出立は明朝がよろしいかと存じます」

「ウェッジ司教・・・・・・ありがとうございます」

「で、殿下。お顔をお上げください。お世話になっている殿下へのせめてもの恩返しです。これくらい、なんともありません」


 自分たちの知らないところで、トントン拍子に話が進んでいき、茅尋と未来は2人揃って侍者としてパメラとともに、王城へと向かうことになるのであった。


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