王女さまとゆかいな仲間たち

よぞら
よぞら

第3話 ところで結局

公開日時: 2020年10月8日(木) 19:00
文字数:2,645

 その日はとりあえず、パメラは未来の家に泊まることとなった。これからどうするかは、明日また集まって考えることとなり、その日は解散した。

 そして次の日。春休み初日に、茅尋は未来の家に予定通りやってきた。今後どうするかを決めるためである。

 未来の家にやってきた茅尋は、未来が項垂れているのに気がついた。


「どうした、未来?」

「だ、騙されたぁ!」

「は? 騙された? 何の話?」

「パメラさんが、パメラさんがぁ~」


 未来が唐突にグズりだした。要領を得ないので、一旦未来を慰めてから、話を聞くことにした。ちなみに、パメラはまだ隣の部屋で寝ている。


「で、パメラ王女がどうしたって?」

「うん、実は・・・・・・」

「はぁ!? お、男!?」


 未来が言うには、パメラは男なのだという。昨日、お風呂に一緒に入ろうとしたところ、パメラの下の部分に、象さんがくっついていたそうだ。


「ま、マジで?」

「うん・・・・・・。これ、写真」

「写真!?」


 そう言って、未来が裸のパメラの写真を見せてきた。確かに、下半身に男性にしかついていないハズの象さんがいた。


「ま、マジか・・・・・・。あんなに可愛いのに・・・・・・」


 ちなみに、その後は普通に一緒にお風呂に入ったらしい。


「いや、なんで!?」

「お互い服も脱いじゃってたし、どちらかだけ外で待ってるのもアレでしょ?」

「いやいやいや! 年頃の男女が一緒にお風呂入っちゃダメでしょ!?」


 と、そんなツッコミをしていると、ドアが開かれて、パメラが部屋に入ってきた。

 寝ぼけ眼をこすりながら、まだまだ眠そうに歩いて近づいてきた。


「あ、チヒロさん。おはようございます・・・・・・ぐぅ」

「また寝た!?」

「はっ。す、すいません。庶民のベッドにしては寝心地がよかったので」

「あれ、これ、私ディスられてる?」


 パメラは、未来のベッドにそっと腰掛けると、横になってまた眠ってしまった。

 茅尋のツッコミの声の大きさに驚いたのか、膨らんだ鼻提灯を破裂した音でなのか、パメラは起き上がって、自然にディスり始めた。


「お早いですね、どうしたのですか?」

「いや昨日、どうやったらガーネット王国に戻れるか話し合おうって言ったじゃないですか」

「あー、そういえばそんな話をしてたような、してなかったような」

「未来ー。パメラちゃーん、朝ご飯ですよー」


 ようやく、パメラも目が覚めてきたようで、会話もハキハキとしてきた。

 さっきの未来の話もそうだが、聞きたいことはいくつかあるものの、それはまた今度にしておこう。

 パメラと未来は、未来の母親に呼ばれて朝ご飯を食べに降りていった。今のうち、と考えた茅尋は、昨日のうちに調べておいたことをまとめながら宿題をして、二人が帰ってくるのを待っていた。しかし・・・・・・。


「遅い!」


 時計の針は、13時を指し示していた。茅尋が未来の家に来たのは、午前9時であったことを考えると、実に4時間経っていた。さらに3時間ほど経ったところで、部屋のドアが開いた。


「あっ」

「じー」


 パタン。と、開かれたドアが再び閉じられた。

 扉を開けた主は、部屋の中にいた茅尋を見て、即座に判断し、脱兎のごとく逃げ出した。


「こらー! 待ちなさーい!」

「ごめん! 茅尋、ごめん!」

「ごめんで済むか、バカ未来! 何時間経ったと思ってるの!? 7時間だよ、7時間! あんたは、バカか! 普通、友達来てるのにそれ忘れて外出なんてするか!?」


 どうやら、未来とパメラは、茅尋が来ていることを忘れて出かけていたらしい。

 本当にバカである。ボケ倒すというレベルじゃないほどボケボケのバカである。


「全く・・・・・・。あんたたちが帰ってくるの待ってる間に、宿題ほとんど終わっちゃったじゃない!」

「ええええ!? ズルい! 一緒にやるって言ったのに!」

「帰ってこないあんたが悪い」


 そんなやりとりを端から見ていたパメラは、オロオロしていた。

 それから数分は同じようなやりとりが続いたものの、ようやく本題に入ることができた。


「それで、件のガーネット王国のことなんだけど」

「ガーネット王国・・・・・・? なんだっけ、それ」

「ねぇ、未来。私時々思うんだよね」

「なにが?」

「未来さ、一旦病院行った方がいいんじゃない?」

「なにそれ、ひどっ!」


 茅尋の発言に、未来は涙を流して驚いてた。実際、病院に行った方が良さげなのはその通りな気がしないでもないが。


「んで、話を戻すけど、ガーネット王国。昨日、ざっと調べた限りだと、そんな王国は、過去から現在にかけてまで、存在していた記録は残ってなかった」

「ぶつぶつぶつ」

「残っていなかった、とは?」

「記録に残っているのは、有史以降の出来事だけだから、もしかしたら有史以前には存在していたかもしれないってこと」


 文字、というのは人類史で最も偉大な発明の一つである。

 それまでは、口語でしか伝えられてこなかった伝承や出来事などが、全て文字として残ることで、後世にまで残り、後世の人間が、過去に何が起こったのかを知ることが出来るようになったからだ。


「ただまぁ、有史以前にガーネット王国っていう王国があったとしても、私たちにそれを知る方法はないんだよね」

「そう、なんですか・・・・・・」


 ガーネット王国があろうとなかろうと、茅尋たちは困ることがないが、パメラはそうもいかない。パメラにとっては、母国なのだ。

 気丈に振る舞っているが、パメラの気苦労は底知れないだろう。こんな、右も左も分からない、異世界のようなところにいるのだから。


「ん、異世界?」

「え?」

「そうか、異世界だ!」

「パメラって、どうやってこの世界に来たんだっけ?」

「え、ええと、魔法を練習してて・・・・・・」


 この現代社会は、かつて魔術と呼ばれるものは確かに存在した。しかし、その魔術と呼ばれたものは、錬金術と同じように科学的に証明されて次第に廃れていった。そうして辿り着いたのが、現代の科学社会である。つまりは、魔法や魔術、錬金術といったものは、空想上のものと成り果ててしまったのである。だのに、パメラは魔法が使えるのだ。


「もう一度、同じ魔法を使えば元の世界に戻れるかも!」


 そう聞いたパメラの顔は、さっきまでの曇った顔ではなく、晴れ晴れとした、輝いている顔であった。ちなみに、未来は未だに部屋の隅でいじけていた。


「そっか、同じ魔法で・・・・・・」

「よし、試してみよう!」

「はい!」


 力強く返事をしたパメラは、その場で魔法の杖を取り出して、詠唱を始めた。そして、呪文の詠唱が終わったのか、パメラが目をカッと見開いた。そしてその瞬間、爆発した。

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