ある日ある朝目覚めると。
「何っ!そうか、なるほど、覚醒させなければならないのか」
「うん、そうなんだよ。僕もまだゲルニカだけだけど、作品数は多いから楽しみなんだ。君も多いよね?」
「ああ。それにしても音が聞こえる世界とはいいものだな。少しうるさいが」
「そういえば君は難聴なんだっけ?」
「ああ、難聴だったのだ。曲を作るのが大変だったぞ」
知らないおじさんが1人増えていた。
「いや誰だよ」
「あ、太一君起きたのかい?」
「パブロは寝ないのかい?」
「うん、僕は生きてないからね。っていうか、やっぱり君には彼が見えているんだね?」
「うん、見えてるけど。というかパブロの同類?同類じゃなかったら泥棒だから追い出さないといけないんだけど」
同類でも追い出したいけど。
「同類っていう言い方はひどいけど、まあ同類だね。霊のようで霊じゃない、そんなあやふやな存在だよ、彼も。それにしても、やはり僕らのパートナーには僕らが見えるのか、たとえパートナーでなくとも」
「お前が太一か。もっと鍛えないと世界を救えないぞ」
鍛えたら世界が救えるのか。
それなら世界中の正義感のある中学二年生特有の病気にかかっている人は皆鍛えている。
「で、どちら様ですか?」
「私の名前はLudwig van Beethovenだ」
「ごめん聞き取れない」
「彼の名前はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンだよ。君も知ってるよね?というか話したよね?僕の友達だ」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン?
ベートーヴェンだけなら聞いたことがあるな。
ベートーヴェンで検索する。
すると確かにルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンって出た。
運命とか田園とかエリーゼのためにとかを作ったあのベートーヴェンの霊がここにいるのか。
ってか本当に友達だったのか。
ってか友達って生きてるときになった友達じゃなくて霊体になってから知り合ったんだろう。それなら納得できる。
「何でうちに?」
「俺と相性がいいパートナーを探して日本にきていたのだが、テレビのニュースでエンバーディメントのことが流れていたからな。もしかしたらパブロがいるのではないかと思い、ここに来てみたらいたのだ。パブロとの再会に、乾杯っ!」
「ルート、僕らは杯なんて持てないよ」
「ふっ!気持ちでよいのだ」
ベートーヴェンをルートって呼んでるのか。
「ベートーヴェンさん」
「ルートヴィヒと呼んでいいぞ。それで、どうした太一」
「これからどうするの?」
「これから、とはどういうことだ?」
「パートナーを探すの?」
「ああ。だが、俺らのパートナーというのは1人いれば近くに何人かいるものだ。だから1週間程度はこの辺りで探す」
そうですか。頑張って下さい。
「ところでさっき言ってたエンバーディメントって何?」
「僕と君のゲルニカみたいなものだよ。芸術家の霊のような僕らが、自分たちの作品に関係するもので何故か使える能力のようなものかな」
「ルートヴィヒは何か使えるの?」
「俺はまだ何も使えない。さっさと1つぐらい覚醒したいものだが、パートナーが見つからんのだ」
「パブロはゲルニカ、どうやって覚醒したの?」
「質問ばっかりだねぇ。ヨーロッパの方の地域紛争の中を歩き回っていたら覚醒したよ」
へー。
地域紛争なんてあってるんだな。
ヨーロッパで?
ちょっと違和感があったがまあいいや。
「地域紛争で覚醒したってことは、覚醒にはパートナーは必要ないってことだよね?」
「そうだね。覚醒するだけならパートナーは必要ない。でも、エンバーディメントをおこすにはパートナーが必要なんだ。憑依せずにエンバーディメントをしたところで、僕らみたいな霊体にしか影響はでない」
へー、そうなんだ。
「憑依した状態でのエンバーディメントは現実へも影響を及ぼす。一昨日やったゲルニカみたいにね」
グラウンドがぐっちゃぐちゃになったあれね。
「ところで太一君、時間大丈夫?」
あ、やばい。遅刻する。
「太一、今日遅かったな。何かあったのか?」
「ちょっと寝坊した」
寝坊などしてない。
このパブロとルートヴィヒのせいだ。
「むむ。俺はこいつに惹かれる。こいつは素質があるぞ」
どうやらルートヴィヒは剛が気になっている様子。
「パブロ、俺はこいつに話しかけようと思うのだが、どう思う?」
「やってみればいいんじゃない?ルートの思うようにやればいい。まだ危機的状況にはなっていないし」
「そうか」
え、ちょっと。
何勝手に話進めているんですか。
「おい少年」
「うわっ!だ、誰ですか?ここ、学校ですよ?不審者ですか?」
突然の剛の大声に周りの人が一斉にこっちを見る。
そして。
「あぁ、剛も太一の影響受けちゃったか・・・・・・」
2人とも変人扱いされていくことになってしまいそうだ。
○新田太一><パブロ・ピカソ
○大山剛><ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
○灰田加奈子>
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