高校二年生になる花岡まことは男の子だが、わけあって学校ではウィッグを被り、女子の制服を着て、女装をしていた。
小さい頃から可愛いものに興味があり、小学生になると女の子用のピンクのランドセルが欲しく、いつの間にか服も女の子ものの種類が好きになっていったのだ……。
──そんな男の娘のまことに女の子と思って近付いてきた後輩の蒼井咲に放課後、告白される。
テストの居残りで遅くなった咲は多少おかしな性癖でも、まことという女の人が好きだと言い切るが、まことは誤解されないよう、体をチラ見させ、自分は男なのに女装が好きな変わった男の子だよと受け答えする。
──まことの正体にショックを受けた咲だったが、女の子の格好で男の娘だったなんて、二度美味しすぎると鼻血を吹き、逆に興奮するが、まことは意外な対応に戸惑い、逆に告白に対し、断りを入れる。
しかし健気で明るい咲は『だったら私があなたにとって特別な初恋の人になってあげます』と言い切り、二人は友達から始める決心を固めるのだった……。
──そこへまことと仲が良い男性、幼稚園からの幼馴染みの大我竜二も絡んできて、咲とトラブルになり、咲から竜二はまことの彼氏かと誤解されるが、それはただの思い違いだと状況を説明する。
さらに咲は竜二が思ってるようなそんな悪い子じゃないよとまことは答えるのだが……。
こうして勘違いから生まれた三人の微妙な恋の駆け引きが始まろうとしていた……。
──『我がまま』がタイトルの主題歌は女装したまことと咲と竜二の三人が夏の空の下、線香花火や海辺、屋上からの景色を楽しむという青春溢れる映像が流れる。
序盤は気の赴くままに過ごす三人の雰囲気だが、サビの部分から自分らの想いに対する葛藤が強く表現され、特に二人のまことによる恋する心情がスライドされる場面は、何とも捨てがたいシーンでもある。
エンディング曲は『あれが恋だったのかな feat. にしな』。
色鉛筆のような優しいタッチのイラストから、アニメ特有のデジタルペイントとなり、ラストの締めくくりで、咲が木に引っかかったピンクのハンカチを持って飛び降りる本編を再現した名場面もしっくりとくる。
両曲とも気鋭の音楽クリエイターであるくじらが作詞や作曲を担当しているが、エンディング曲はゲストボーカルのにしな氏が参加している。
──この作品はアニメになってほしいランキングで一位になった人気作品であり、原作のLINEマンガでは1億8000回以上も読まれた超話題作でもある。
──学校限定で女装した男の娘として過ごすまことが、生徒から後ろ指を指されながらも、高校生活を奮闘する作品でもあり、男女の関係を上手く表現した内容だが、咲と同じく、男の竜二までもがまことが好きという展開になっており、普通の三角関係とは少し違う恋模様を描いている。
初めはちょっと変わった百合系の物語かと観ていたら、実はBLな部分が含まれているというオチだ。
──まことの声優が男性という部分もリアルで、たまに雰囲気を壊すようなアナログな手抜きのアニメーション(四コマ漫画風?)が入るのも面白い。
ドロドロになりがちな恋愛模様をこの古典的な表現を導入することで後味が悪くなく、さっぱりとした関係を描いている。
そのお笑いなシーンが予想外な異次元のところから入ってくるパターンが多い。
あまりにも自然体の流れでもあり、絶妙なバランス加減でもあって、途中でつまらないとか、面白味がなくて飽きるということもなし。
こんなギャグなイラストが随所にあるが、変な鬱陶しさや癖も感じず、シリアスな場面でも鬱になることも少ない。
──キャラの絵柄も丁寧な作りでもあり、この手のアニメにありがちな、よくあるゲームのようなやたらと萌系な作りではなく、3次元に近いキャラの表現となっている。
──基本、三人を中心に物語が流れていく感触だが、これほどまで爽やかな恋愛アニメも今どき珍しい。
あの名作『恋は雨上がりのように』の作風を思い浮かべてしまう。
──まことが母親を心配させないよう、学校や遠方の外でしか女装しないという箇所や、校庭のロッカーに可愛い女装道具を隠し持ってるという点、さらに咲を案ずるため、一時的に女装をしない日々にもグッときてしまう。
──見た目から入る男と女という手法な恋愛ではなく、男の娘を主軸にし、一見変わった恋愛ものに近いが、誰にでも気楽に観やすいラブコメのような切り口となっているのが本作の最大の特徴だ。
──ラブコメの神髄とは何か。
異性ではなく、同性を好きになるのも一つの恋の形なのか。
そう思わせるような固定概念を壊すテーマが実に興味深く入り混じっており、万人向けのアニメでもある。
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