エアコンを浴びながらの爆睡中、急にドアベルが鳴り、ゴミだめの部屋から這い出して、モニター越しに応答する高校生の横谷人好。
──私をこの家の使用人として雇ってもらえませんか。
日射しが強い夏休みとなり、親のいない一人暮らしを満喫していた人好の家に清楚可憐なメイドさんが営業に来たのだ。
──お人好しで優しい人柄な人好はとりあえずメイドさんを部屋に招き入れて、色々と事情を伺うことにした。
……前職は殺し屋であり、得意は暗殺。
しかもここの依頼は、人好と繋がりのない赤の他人の親方様から頼まれたと恐ろしいことばかりを口に出し、何かと理由をつけてメイドさんを帰らせる人好……。
──これからどうしようとトボトボと帰りながら、踏切の前で立ち止まるメイドさん。
そこへ人好がメイドさんの忘れ物を届けるが、不意に来たトラックにはねられそうになり、メイドさんに助けられるはめに……。
──私は殺し以外に初めて人を助けることをした。
メイドさんが戸惑う中、人好は人助けをするからに悪い人じゃないんだなと思い、命を救ってくれたお礼として、メイドさんに住み込みで家事をしてくれないかとお願いする。
──こうして家政婦として、せっせと働くメイドさんだったが、部屋の掃除中にバケツの水を頭からかぶったりとドジっ子のような一面も持っていた。
そんなメイドさんには名前はなく、殺人道具として使われていたダークな日々。
人好はご機嫌直しとして、メイドさんに夕食で有名惣菜店のトンカツを振る舞い、食事も一時の業務と捉えていたメイドさんに有名ブランドのトンカツソースをつけて食べることをオススメする。
するとトンカツソースを口にしたメイドさんが顔色を変えて、絶品な味わいに感動し、お腹を空かせた深夜帯にトンカツソースだけを味わいに冷蔵庫を漁ったりと、お茶目な部分もあるのだった。
──人好はメイドさんに一言伝える。
メイドさんは失敗する度に後悔する性格みたいだけど、初めてすることなら失敗するのが普通なんだと。
メイドさんは普通の女の子になりたいんじゃないかと。
メイドさんは自分の考えや憶測で判断せず、人好の言ってることが普通だと信頼するようになるのだった。
メイドさんが冬生まれなので雪という名前を付けて……。
──オープニングテーマ曲はtricotによる『おとずれ』だ。
絶妙な加減でゆっくりなテンポのスピードで、トリッキーに奏でる高度なギターのテクニック(遅いテンポの方が難しい)で突き進み、サビから速弾きの演奏となる。
実写と漫画のコマで展開する映像とミステリアスな音楽が実にマッチしている。
雪が好きな揚げたてのトンカツにかけるトンカツソースのシーンもバッチリ再現だ。
エンディング曲はDUSTCCELLの『表情差分』である。
フォーカスを雪に絞り、実写映像を水彩絵の具みたいに滲ませ、モヤがかかった演出が何とも味わい深い。
嬉しい時も涙が出て、悲しい時はお互いに慰め合うという雪が忘れていた心境を丁寧に表現。
パーカッションとバスドラムの効いたデジタルロックも切なく、前を向いて歩く前向きな締め方だ。
両曲とも女性ボーカルであり、アニメらしい艷やかな表現力を放っている。
──この物語はサンデーアプリで公開されているネット漫画が原作であり、70万部を達成したラブコメでもある。
殺し屋系の海外映画などの作品から影響され、大ヒット作『ブラックラグーン』さえも意識したという、殺し屋風のアクションを含めた強烈な作品でもあるのだ。
──家の玄関に捨てられていた子犬、あげもち太郎との暮らしや、美人さんと強い人がタイプな人好の妹である李恋との絡みと一癖も二癖もあるキャラばかりだ。
李恋の親父ギャグや後先考えない行動力、少女漫画のような妄想力にヒイてしまう部分もあるが、人好と雪の大人な対応で特に暴走もなし。
いささか登場人物が少ないようだが、二学期と同時に話の輪が広がり、早速、クラスメイトの大河たちから、祭りの時に気合の入ったコスプレメイドが夜空の下を走り回っていたと噂し、改めて雪の存在感を知らされる。
──人好はなにかと面倒なので、雪が自宅に住んでることはまだ秘密にしておくかとパックの牛乳を飲んでいると、自身の名義を使った雪がクラスの転校生としてやって来るのだ。
──このようにラブコメと見せかけて、随所にシリアスな過去の部分もあるが、基本的にギャグのシーンが濃い目であり、全体的に明るい感じの内容である。
特にメイドさん、殺し屋以外は初めての経験な雪の反応がピュアで実に面白い。
恋愛要素よりもギャグの方が強めなので気楽に観れるのも特徴だ。
──メイドとは、冥土の意味でもあり、冥土の土産に極楽を見せてあげましょうかと……。
様々な暗殺道具を忍ばせながら、いかにも雪が口に出しそうな作品でもある。
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