昔から人には見えない妖怪、妖の存在が分かる夏目貴志。
夏目の祖母のレイコは妖が見える能力を活かして、妖怪と勝負して、一方的に勝利し、妖怪が負けたら名前そのものを紙に書かせて自由を奪い、悪さができないようにしていた。
そうして集めた祖母の遺産の紙は友人帳として孫の代の貴志の手に渡り、友人帳の放つ妖力に導かれるように次々と妖が現れるようになる。
──ニャンコ先生という用心棒と一緒に夏目は名前を奪われた友人帳の紙を口にくわえ、自身の霊力を秘めた唾液を浸して、妖に名前を返す日々。
今回の妖は律儀であり、助けてくれたお礼に焼き物に混ぜると桜の香りがする灰を貰い、同級生の田沼との話を持ちかける。
すると、同級生の田沼から余り物である焼き物用の粘土を貰い、折角、灰があるのならと、何か工作してみようかと手頃な一輪ざしを作ろうとした夏目だったが、不器用さが災いし、中々難しい作業でもあった。
せめて見本があればと苦悩していた夏目は、ふとニャンコ先生の姿が頭に浮かぶ。
すぐ隣で肉球と爪で必死にとっくりを作っていたニャンコ先生の後ろ姿をモデルにミニ先生を完成させるのだ……。
──放課後、田沼を連れて自宅に帰ると塔子さんがタンスの下に入った500円玉を取るのを見かねて、夏目が変わろうとするが、見えない何者かがタンスの後ろから硬貨を押し出すように硬貨が転がり出る。
夏目は妖怪の仕業かと思ったが、テーブルに置いていたミニニャンコ先生の置き物が無くなっており、平穏だった日常は急変する。
──私立恵比寿中学を卒業後、『AIca』という女優でも活動している柏木ひなたが歌うオープニングテーマ曲。
自転車の前カゴにニャンコ先生を乗せて走る夏目。
草原を抜け、林の間を走り、田舎の道、田園風景が見える丘を軽やかに走っていく。
アコギの弾き語りにハモリやコーラスワークが加わり、風を切って走る自転車のようなイメージだ。
一昔前のJPOPのような曲調でもあり、聴いてると癒されるナンバーでもある。
あなたと描いた世界は美しい色。
それはプリズムのように輝いているが、一人では見えないものもある。
エンディングテーマ曲は『こまりわらい』でウクレレシンガーの近藤利樹が歌う。
こちらはアナログで描いた映像で少々古臭い部分もあるが、シリーズらしい作りとなっている。
──冒頭一話にて、ある屋敷に偶然にも野球のボールがガラスを割り、置き物が破損。
正直に謝る子供二人に『大丈夫、物にもみんな寿命があるから』と言ったくせに割れてしまった鳥の置き物の置き場所に後悔するおじさん。
粘土細工で作ったミニ先生は語る。
本物の鳥だったらこんな災いは避けられただろうかと……。
──この物語は少女漫画月刊LaLaからの作品であり、アニメ好きなら誰でも通るアニメで、タイトルだけで男女ともに認知されている王道シリーズでもある。
──今回も妖怪騒動でてんやわんな日常。
自宅でお花を育てるために花壇を作っていたら積んでいた石が盗まれたり、
夜中になると屋敷から案山子の集団が移動したり、
古本屋に忍んで、大切なものを奪い取る危険な怪の気配に、
とある特徴的な妖でもある驚きな真の姿など……相変わらずネタが尽きない好調な流れである。
──何作とナンバリングを重ねても、相変わらずの安定した面白さを放っている本作。
妖怪絡みの作品のせいか、ミステリーのようでホラーな場面もあり、時折流れるBGMが推理探偵になったような気分にもさせてくれる。
TVシリーズとしては異例の七作目でもあり、地上波で何期も放送し続ける勇敢さも高く評価したい。
──原作が少女漫画なのだが、ボーイズラブのような恋愛要素はなく、親しげな友達関係で物語が進む。
だがその友が妖怪であり、姿形はまんまるとしたぽっちゃり体型な猫のニャンコ先生と共に悪い妖怪を退治していく。
──基本、ニャンコ先生は甘いものやお酒、酒のツマミが好きな堕落した猫でもあり、夏目にツッコむ時の毒舌な発言は時に凶器を生む。
でも周囲ではお茶目な可愛い猫と思われており、美少年な夏目と共に人気が高い。
──ニャンコ先生の姿は仮の姿であり、本気になると斑と呼ばれる大きなオオカミとなり、体中から発する眩しい光で相手を威嚇する。
斑自身の戦闘能力は高いのだが、大抵の妖怪は斑から発する強い光に戦わずとも怯んでしまい、この世界で生きる妖怪の中で最強クラスの腕前を持っているという噂も……。
──そんな噂に尾ひれと背びれが付いたボス、ニャンコ先生に集う妖怪の仲間たち。
妖怪とはいえ、一人ぼっちは寂しいもの。
人間と同様、妖怪も沢山の仲間たちの支えがあって生きてることが痛感できる。
──異世界へ転生などというなろう的な作品で溢れている中、最近の手腕に珍しい、現代ファンタジーとして、常にファンタジーの先頭を歩く独自のスタイル。
物語も一話完結で、どの話からでも見やすく、絵柄も展開も柔らかなタッチ。
妖怪という暗くなるようなイメージに光のスポットを当ててみた明るい作風でもあり、稀に見ない素敵な作品だろう。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!