突然の交通事故で家族を亡くし、一人取り残され、極度の人見知りとなった高校生の男の子、朝野太陽。
そんな彼が唯一心を開く相手は幼馴染みの女の子の夜桜六美だけだった。
しかし六美は七兄姉の三女であり、実は闇を暗躍するスパイの一家、夜桜家の当主でもあった。
さらに六美は兄の凶一郎に溺愛され、六美に悪い虫がつかないよう、常に太陽の動きを監視していたのだ。
ゆえに巨大なシスコンである。
──凶一郎からストーカー扱いされ、散々、うねるようなワイヤーで攻撃され、痛めつけられる日々。
そのシスコン兄から六美を守り抜くには、幼馴染みとしての関係ではなく、彼女と婚約するしかないと知った太陽。
そうして凶一郎の激しい攻撃に耐えながらも金の結婚指輪を手にした……。
だが、それは単なる茶番であり、夜桜家の夫婦になったのなら、六美を守るべく、夜桜家のスパイになるしかないと……。
凶一郎や兄姉の猛攻なスパイ技術を上げるためのトラップや任務を攻略しつつ、スパイとしての腕を磨く太陽であった……。
──人生ゲームのように夜桜家ファミリーが一台の車に乗って進み、手拍子とバスドラから始まるポップな主題歌。
全体的に明るい印象を受ける女性ボーカルによる『運命ちゃん』だ。
様々な音楽メディアに登場し、JPOPの金字塔とも言われるいきものがかりが楽曲を担当している。
歌詞も分かりやすく、歌というかメッセージソングでもある楽曲。
あばれるぞの歌詞につられて同名の芸人が踊り狂うというPVもインパクト大だ。
エンディング曲は『fam!』。
CHiCO with HoneyWorksとしての8年の活動を休止し、さらにボーカルの質を上げたいとソロアーティストで歌う、女性ボーカリストCHiCOとしての歌唱曲である。
そんなエンディング映像はファミコンのゲーム世界となり、自宅から始まる。
ドット絵による二人の散歩のイラストが終始流れ、タコやらくらげになった凶一郎の姿が次々と登場する……その姿は着ぐるみどころの変装ではない。
ボーカルに合わせて画面上のアイコンが反応するのもリズムゲームっぽくもあって、視覚的にも面白く伝わってくる。
音楽もファミリーらしい優しいタッチのバラードナンバーで遊び心あふれるエンディング曲だ。
──このアニメは暗い過去を背負って生きてきた太陽が、まさしくお日様のような存在の幼馴染みの六美と、明るく前向きな夫婦になるという物語から始まる。
本来のラブコメでは付き合って恋愛結婚したら物語終了な場面でもあるが、結婚して結ばれた先にも様々な苦難が待ち続けるというリアルな設定をモチーフにしている。
──夜桜家の住人たちも裏で活動するスパイとは思えず、個性豊かでユニークな顔触れだ。
狂ったほどに六美大好きな凶一郎。
クールで殺人術を得意とする二刃。
銃火系に詳しいが、ひきこもりがちな辛三。
ハッキングを武器にし、普段はゲーマーな四怨。
どんなキャラでもできる変装の達人の嫌五。
常に怪しい毒物を研究している七悪。
六美にしか懐かない狂犬のゴリアテ。
こんな癖のある兄姉たちと暮らしていく太陽も大変である。
夜桜家になるために様々なスパイ技術を学ばされ、太陽は六美を守れる男になれるのか?
……と言いたいところだが、屋敷内のトラップも何とか攻略でき、スパイ見習いになれたものの、任務は思ったように激務であり、さらに学業も専念しないとなると……。
毎日、ボロボロの雑巾になって帰宅する太陽に尊敬の念を抱きたくなる。
──だが、この作品は理不尽な部分も多い。
自宅で目覚めたら、爆弾で家を吹っ飛ばされて夜桜家に寝泊りとなったり、
校内で六美をターゲットに部屋を爆破されたり、
デタラメな刀さばきで骨ごと鍋の材料を切ったり、
トイレに厳重な何重もの鍵がかけてあり、さらに暗号ロック付きで、
地下に落下しつつものの複数のトラップを華麗に避けたり、さらに街中でカーチェイスの銃撃戦……。
……などと、通常の人間では太刀打ちできないイベントが多く、ラブコメの常識を反した内容がやたらと目立つ。
こんな妙な部分があちこちにあり、展開もゴリ押しで消化不良でもある本作。
これまで色んなラブコメを見慣れてきた方なら、この点が不思議に思えてしまうだろう。
──似たようなアニメ『スパイファミリー』という人気作品と比べ、こちらは和風でいくらかファンタジー寄りな設定。
この作品はリアルなスパイの一家の騒動を描いた壮絶なるアニメでもある。
例え、守るべき相手と結婚しても、夜桜家でのドタバタな生活は変わらない……。
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