──金を捧げると食べ物が手に入る。
税を納めると国民としての権利が手に入る。
労働をすれば賃金が手に入る。
ならばこの世のすべてを知るには何をして、どうすればいいだろう──。
──15世紀前期のヨーロッパにあるPと呼ばれた一つの大国。
ポトツキの義弟であるラファウという少年は12歳に大学に進学でき、信者の役に立てる神学という分野に席を置くとクラスの前で大胆に宣言する。
しかしちょろい生徒たちだと心の中で小馬鹿にし、昔から好きだった天文を進学しても続けるつもりでいた。
──普通の人には判別できない六等星まで見えるようになりましたと、星座表片手に担任の先生に自慢するが、先生から今すぐ天文を辞めて、これからは神学だけを勉強しなさいという声が上がる。
──そんな時、異端者でもあるが、自ら改心して釈放されるフベルトと引き取ってくれるかと頼まれる。
黒いローブを着込み、木の杖を持ち、やたらと大きく怪しげな学者……それがフベルトとの出会いだった。
フベルトは天文に興味があるラファウの心を見抜き、目が悪い私のためにこれからも天文を続けて研究に加勢して欲しい、もし断ったらお前の命を奪うと脅迫する。
フベルトは地球が中心となり、惑星を回っている天動説とは違い、実は地球が太陽の回りを動いている自転と公転という二つの動きでもある地動説をラファウに言い聞かすが、ラファウは納得のいかない言葉を返す。
──森の丘でコケて倒れ込み、山がひっくり返ったかと思い、山が太陽で自分が地球ならと例えを計算式に現すと驚きの結果を導き出すラファウ。
ラファウはこれまでの過程を裏付ける天文学に心から打たれ、フベルトの弟子として正式に天文を学ぶことになるのだ。
──だが教会にとっては異端思想だったフベルトの研究に反対し、国の汚点になるため、フベルトを処刑することに。
フベルトの遺産から地動説のヒントを得たラファウは個人的な探究心でひっそりと研究することを決意するのだった。
──オープニングテーマ曲はサカナクションの『怪獣』。
この世界は未完成でもあり、怪獣のように叫んでも消えてしまい、届かない日々。
デジタルロックと呼ばれる独自の音楽は歌謡曲のようなビートを刻んでくれる。
エンディング曲は電子ドラムによる打ち込みのサウンドに、ピアノの単音な音色がメインの落ち着いたジャズ感覚のメロディ。
『長い夢の中、僕らは星空が見える気球にいた』などと抽象的で熱いワード。
いかにもヨルシカの曲調らしい大人な楽曲で『アポリア』のタイトルもこの作品の締めくくりにピッタリだ。
──爪が無くなると何が困るのか。
握力が無くなり、物が持てなくなると答える学者。
その答えに異端審問官ノヴァクが激痛に悩まされるんだと尋問し、次々と異端者を処罰する始末。
異端者が拷問を拒み、私にも家族がいるんだと声を荒げると、自分にも娘がいるから、悪行を働く異端者がのさばり、娘の生活を脅かすことはしたくないと……。
幾度もの返り血を浴びてきた元傭兵なノヴァクが神聖なる聖職に就いた理由も分からないままで……。
──家の帰りにノヴァクに捕まり、本棚にある異端思想の研究を示した書類等を理由にラファウは処罰の対象となるが、そこで通りかかったフベルトがこんな子供にできる研究ではなく、私が書いたものだとラファウを庇うことに……。
二度目に捕まった異端者は確実に処刑されるというルール。
その理由からフベルトは火あぶりの刑にされるのだ。
自分のために亡くなったフベルトから渡された最期のアイテムを手にしながら、フベルトの遺書に目を通すラファウ。
私の天文学の思想を超える君になら、私が積み上げてきた研究資料を燃やせると……。
どんな理由であれ、ラファウは天文を続けていく決意を固めるのだ──。
──この物語は天文に関しての情報をこれでもかと詰め込んだ内容で色々と勉強になる作品である。
当時、ヨーロッパで行われていた地動説を唱える異端者を処罰するという事実を元にしており、過去のヨーロッパの歴史や様々な教養すらも与えてくれるだろう。
NHK放送なのでCMもなく、A〜Bパートに切り替わる場面もなく、集中して観れるのもありがたい。
多少、異端者を処罰する残虐性のある映像もあるが、物語のリアリティを求めるなら変に加工するのもおかしいかと思う。
以前の健全なアニメが主流なNHKでは考えられなかったことだ。
劇場版のエヴァをノーカットで放送したのが大好評だったからだろう。
──神を否定ではなく、神を信じる。
天動説が誤りで地動説に置き換わる世界。
人が星を観測し、無数の天文学を唱えると一緒で、常に時代は進化し続けるものなのだ。
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