大ヒットなろう小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』を描いた原作者による新作であり、魔法至上主義という学園にて、魔法が全く使えない無能者の男の子、ウィル・セルフォルトによる冒険ヒストリーである。
──天井の侵略者により、空を失った学園に対抗しつつ、五人のトップクラスの魔法使いが侵略者を封印し、空高くそびえる塔で最強の魔法使いの座、マギアヴェンデという称号さえも得て、自らの糧にしていた。
──ウィルは魔法こそ使えないが、剣の腕前に対してはプロ顔負けの戦士の能力を秘めており、正確な剣の捌き方、二歩先を読んだような素早い動き、鋭い洞察力などで並み居るモンスターを倒していく。
──一方でウィルの幼馴染みである女性エルファリア・アルヴィス・セルフォルトはマギアヴェンデの一員となり、塔のてっぺんで地上を見下ろしている中、ウィルもエルファリアに恋い焦がれており、いつか彼女と同じ舞台に立ち、作られてない自然の夕陽を見るために、最強の魔法使いを目指す。
しかし最強になる前に単位を取らないと卒業すらもできなく、さらに今年で最高学年の6年生でもあり、下手すると退学になりかね
ない状況で焦るウィル。
学園で生活するにも受講料が必要で新聞配達や飲食業でバイトをし、地下にあるダンジョンで単位が取れるモンスター狩りに明け暮れる毎日だった。
魔法が主流の課外授業では無能者のウィルはポイントが全く貰えなく、こうしてモンスターを剣などの物理攻撃で倒しながら、少しずつ単位を得るしかなかったのだ。
だが魔法が支えないボンクラと言われて、同級生のシオン・アルスターからイジメられ、教師のエドワルド・セルフェンスからも力を試されるウィル。
──幾度もなく、それらの危機を乗り越えるウィルであったが、それには自分一人の力ではなく、味方になってくれる仲間たちもいたからである。
ウィルの理解者でもある教師ワーグナー・ノーグラムに、彼を慕う優しい女の子のコレット・ロワール、ナーと妙な鳴き方をする黒猫のキキに、魔法が使えない同じよしみでもあるドワーフ族たち……。
沢山の仲間に支えられ、メイジは駄目でも、戦士としては最強のウィルが最強の魔法使いと呼べる、次世代のマギアヴェンデの名をものにするために……。
──主題歌は5人組ロックバンドのPENGUIN RESEARCHによる『Fire and Fear』。
高音さえもやすやすと歌う男性声優ボーカルに、お得意の速弾きを得意としたアップテンポな演奏で、これまで色々なアニソンを歌ってきた有名なバンドでもある。
どんなに怖くても立ち向かうというウィルの心境を丁寧に表している。
エンディング曲は今やアニソン界では神格化されたTRUEが歌うポップソング『フローズン』。
好きな相手をアイスクリームに例えている擬似的表現で、ウィル目線の主題歌と違い、今度はエルファリア側の視点(歌詞)で描いている。
主題歌が炎でエンディングが氷という歌詞のタイトルも両極端で、この物語の影と光を表現しており、手抜きがない作風だ。
──この作品はとにかく絵柄が非常に綺麗であり、細かい作画でもあり、まるで劇場版のアニメを観るように錯角することがある。
物語の主軸でもあるバトルシーンも非常に凝った作りで、尺も長めで見応えがあり、よくありがちな同じ映像を続けて見せられるという安っぽい作りでもない。
そんなクオリティーの高さで、さらにゴールデンの時間帯でも堂々としており、声優陣も超豪華。
なるべく制作費を抑えるために深夜帯で放送してもおかしくないほどの驚きのレベルの高さでもある。
──登場するキャラも個性豊かであり、ウィルにとっての味方と敵のイメージがくっきりと分かれている。
ただ登場するキャラが多いため、覚えるのが大変でもある。
その対処法として、初見では名前を表示してくれるのがとてもありがたい。
パートの挿入にキャラクターなどの説明のコマが入るのも良い。
まあ文字が小さく、文章量も多いのでリアルタイムで読み上げるのは不可能だが……。
──まるで映画『ハリーポッター』のような雰囲気を醸し出す本作で似てるように見えて、こちらの主人公は魔法はてんで駄目で剣でなら戦えるという変わったスタンス。
戦士としては無双という流れでもあり、どんなモンスターも我流で倒してしまうという場面に飽きられたり、その強さゆえにどんな強敵にも勝ってみせるので目新しさがなく、先の展開が読めてしまう。
おまけにダンまちと同じく、ほとんど学園とダンジョンのみの範囲で構成されており、キャラのプライベートのシーンもあまりない……。
……それにも関わらず、作品全体の出来はかなり質が良くて純粋に面白く、気軽に観れる時間帯というのがとても良い。
最初は魔法使いと黒猫という設定であのラブコメの新作かと目で追ってみたら、全く違う作品だったのにショックを受けてもだ……。
例え、ハイファンタジー好きじゃなくても、観るたびに続きが気になってくる不思議なファンタジー作品でもある。
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