春になり、部員も卒業し、漫画研究部で一人となった高校二年の奥村正宗は、部室で人気アニメのリリエルの円盤を観ながら想いに更けていた……。
──8歳の頃、母親は男と共に蒸発、小学生の時に好きな子に告白したら逆にいじめられ、姉にはハゲと呼ばれ、おまけにクラスの女子からはオタクはキモいと散々な女性との交流。
そのせいか、3次元の女性に全く興味がなくなっていた奥村。
しかしリリエルというアニメキャラと出会い、彼女の主人公だけを慕う一途な性格に心を打たれるように……。
俺の嫁として2次元の女の子が好きになり、現実にこんな可愛い子がいるか、いや、いないから最高なんだと奮闘しながら、2次元の彼女だけを追いかけていた。
──そんな最中、この部室に3次元の眼鏡女子が見学にやってくる。
高校一年になったばかりの初々しい女の子、天乃リリサは漫画好きのオタクだった。
奥村はてっきり少女漫画好きなんだろうと思い、リリサを追い出そうとするが、リリサが棚に置かれたリリエルのフィギュアを前にして饒舌に語り出す。
リリサはリリエルの大ファンでもあり、リリエルのことなら履いてる物さえも理解できるという、奥村に負けないくらいの重度のオタクだった。
おまけにマニアックな劇場版のリリエルにも詳しいさま。
3次元の女子なのにリリエルに対して、熱い情熱を注ぎ込める……相手はリアルだが、そのリリエル愛の深さは申し分ない。
だが奥村はやっぱりリアル女には興味がないとリリサの入部を断ろうとする。
──所がリリサは私はリリエルになりたいんですと熱い想いを伝え、その場でリリエルのコスプレをし、奥村にカメラのシャッターを切ってもらう。
そうして奥村はレンズ越しにリリエルに成りきった彼女に惚れてしまう……ただし惚れた女性はリリサではなく、2.5次元のリリエルであったのだ……。
──主題歌はカメラのシャッター音がタイミング良く鳴る『シャッターチャンス』で、男性ボーカル、めいちゃんによるダンスナンバー。
元は動画サイトで活動していたが、このようなオリジナル曲も担当。
ボカロなどにも楽曲を提供し、ポップなメロディーが癖になり、ゲーソンのような感覚を突き刺してくる。
コスプレの私を愛してくれますかの大胆な歌詞に心さえも奪われる曲調だ。
エンディング曲はリリサと、奥村の幼馴染みでモデルの橘美花莉が一緒に歌うキャラソン『Watch Me』であり、オープニングに比べ、こちらはよりダンスっぽくなったアゲアゲの曲。
一昔前の萌え系のパラパラ音楽というイメージで二人の女の子が音楽に合わせてステージで可愛く踊る。
観客席でサイリウムを振る奥村が顧問の女性に合わせてフュージョン(ドラゴンボール風?)して応援する姿に、何かが揺さぶられる感触(苦笑)がする。
──2次元に関しての究極なテーマとは……。
どれだけ、その作品に対しての想いがあるかとは……。
その永遠の質問に答えるべき、オタクというちょっと変わった人種……。
アニメやゲームに出てくる好きなキャラを推し、そのキャラのコスプレになって、自身のキャラへの愛を表現するロマンチックな人々……。
アニメやゲームなどの作品は観ないと分からないが、見た目や形から入るコスプレイヤーという世界は2次元に詳しくない人でも納得できるものがある。
普段は地味で目立たなくても、共通の趣味が集まるコミケなどでコスプレをして着飾ることで自分の存在をアピールできるせいか……。
作中のリリサみたいに自分で生地を買って、一から衣装を作る人もいるほど、コスプレという言葉は裏を返せば、運動会や文化祭のような大イベントな世界でもある。
──この作品は少年漫画とはいえ、女性陣のお色気シーンも多めである。
自由に表現できる同人誌のような作りな原作よりも描写は抑えられているが、それでもギリギリの路線(ライン)を走っている。
どちらかというとみんなで仲よくお茶の間で観るのではなく、原作同様、一人でゆっくりと楽しんでください的な内容だ。
それゆえ万人向けではないが、リアルコスプレイヤーからの評判は上場で、自分たちレイヤーの苦悩な気持ちを良く理解していると太鼓判を押されるほど……。
──またキャラが口に出す台詞にも名言が多く、心から温まり、時に感動するという侮れない作品で、ワンピースに続き、ジャンプ史上最も熱い作品と言われるくらいである。
原作と似たようなアニメの絵柄もありがたい。
──3次元に関心がないオタクな奥村の周りに集まってくる、魅力的な女の子が集まってくるハーレム設定のラブコメ。
彼はその恋心を抱くコスプレイヤーたちに対して、カメラを通じてどんな気持ちを寄せるのか……。
──さざ波のように寄せては、離れてを繰り返す……。
彼は心の傷を乗り越え、3次元の女の子を好きになれるのか。
奥村の揺れる恋心にも期待したい……。
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