黒と銀の二つに分かれた髪色を持ち、目の色も黒と金と別々な少年、桜遥。
彼はそのコスプレのような容姿と、喧嘩早いのが原因で大した友達もできず、一人孤独に過ごしてきた。
──弱いものには興味がなく、強い者にしか関心がないこだわりを持った桜。
ある日、その孤独から逃れるように中学から外の世界にある、遠くの高校に入学を決め、誰よりも喧嘩が強いという理由で、てっぺんをとるために喧嘩が日常茶飯事の風鈴高校に通うことになる。
──だが、この街には暗黙のルールがあって、弱い者を傷つけたり、建物を破損したり、悪意を持ち込んだりすると『ボウフウリン』というある集団により、処罰の対象となっていた。
その制裁する集団が風鈴高校の生徒たちだったのだ。
──入学式前日、男たちに絡まれる一人の困っている女性を助け、お礼に喫茶店を訪れるのだが、そこの店員でもあった橘ことはに本心を突きつけられる。
そんな彼女による図星の発言に桜は思わず照れくさくなり、あやふやな答えで返す。
すると明日から登校と浮かれ気分で学校の制服を着ていた生徒の一人、データ収集が得意だが、喧嘩が弱すぎる楡井秋彦とも出会う。
──桜はこれなら確実に学校の頂点が狙えるなと思っていたが、街中でのボウフウリンの実力差や、高校の屋上で呑気に家庭菜園をしていた学校ナンバー1と呼ばれる梅宮一による真の力を知り、上には上がいることを思い知らされる。
今ここに新たなる不良のてっぺん争いが始まろうとしていた──。
──オープニングナンバーは意味深な四字熟語のようなタイトルの『絶対零度』。
シンガーソングライター、なとりによるキレのある変拍子のあるロック。
腕に風鈴高校の制服を羽織り、ボウフウリンのメンバーの心境を上手く表現した歌詞と、流れの良い喧嘩シーンがスピード感のあるサウンドと絶妙にマッチしている。
代わってエンディングは『無敵』。
こちらもシンガーソングライターのYoung Keeによるバラードな楽曲であり、見た目とは裏腹の癖のある魅力的なボーカルは多くの音楽ファンの高い支持を受けている。
ボーカルをリードするギターに各キャラが見せる意外なイラストからも目が離せない。
──近年、ファンタジーやラブコメが次々と生み出される中、ぐんと減ったこのような不良たちによる喧嘩によるアニメ。
要するに野郎たちが野郎たちと殴り合い、拳と拳で語る熱血作品であるが、ナイフや鉄パイプを持った危ない喧嘩ではなく、己の拳と足のみで戦うという珍しいスタイルの作品でもある。
──また数人で一人をボコるという卑怯な場面もなく、一対一での正統派な戦い方もあり、陰湿になりそうで暗いテーマを明るく持っていくという巧みな手腕にため息が漏れる。
──実際の高校生活に寄せたリアルな青春時代、しかしながらこの近況ではあり得ない喧嘩という名のフィクション。
この二つのジャンルを高度に絡み合わせていい感じに表現しているのだ。
しかもキャラたちによる胸にしみるような名言が連発し、アニメというより、名作映画を観ているような感覚に陥ってしまう。
ただの暴力テイストかと思っていたら、良い意味でのちから比べでもあり、感涙する場合もちらほらとあり、物語の主人公同様、油断できない展開でもある。
──だが、話の流れが非常にスローペースであり、獅子頭連編との喧嘩のシーンで第一期のほとんどを占めており、何話も作品を跨いでも結局は二日しか経っていないので、人によっては飽きられやすい内容だ。
だからといって話数を飛ばして観ると、物語についていけない感が惜しい。
──喧嘩に強いイメージがある主人公の桜も癖があり、純粋で天然、ツンデレ、さらに明るいのか、暗いのか、はっきりしない性格でもあり、他のキャラより若干浮いて見える。
強いて言えば、喧嘩が好きなだけの変人にも見て取れるかも知れない……。
まあ、構成は良くできており、次回予告の紙芝居のようなコントは面白いが……。
──無限にもある喧嘩を繰り返し、ボロボロで汚れた格好でも、翌日には何ごともなかったようにピンピンとした元気な姿で現れる彼ら……。
アクション漫画が原作だからとはいえ、サイボーグの肉体ではないらしい……。
──喧嘩による美学とは何か。
例え、敵同士として拳を重ねても、勝負が終わればみんな仲良しこよし。
時には雨が降るシーンもあるが、同じ人としての差別という垣根がない。
そう思わせてくれるカラッとした天気のアニメでもある。
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