迷宮でのダンジョンを旅しながら、お腹が空いたら食事を摂るという生きてくゆえに人間がする行為。
干し肉にチーズに燻製とダンジョンの中での食卓は質素で味気のないもの……。
だが、ダンジョンにて一人で生活してきたセンシというモジャ髭の男はダンジョン内の魔物を食べながら生き永らえてきた……。
──これはシリーズ累計1000万部によるコミックの売り上げを誇る大人気異世界ファンタジー。
食うか、食われるかの瀬戸際の物語である……。
──ある日、物語の主人公ライオスはメンバーと共に迷宮の主、レッドドラゴンと戦っていたが、妹のファリンが食べられて犠牲となり、全滅を避けるために一度地上に出ることに……。
何名かのメンバーが抜け、魔法使いで年長でも若い女性のマルシルと、おっさんだけど見かけは子供な盗賊のチルチャックとのパーティー編成で新たにダンジョンに潜るものの、ダンジョンの構造は複雑でおまけに頭を使うせいか、当然のように腹も減る……。
その状況で持っていた食料も底を尽きかけ、外の世界に戻ろうとすると、それじゃ、また1から迷宮の攻略をしないといけないから、この場で魔物を狩って調理しようとの決断……それが事の顛末であった。
──オークのいた住処を離れ、レッドドラゴンと再び対峙するライオスたち。
真っ向から戦っても負けると感じていたメンバーはもぬけの殻の建物を利用してレッドドラゴンの動きを封じる。
──戦いは全て終わりに見えた。
だが、胃袋にいたファリンは既に肉体を無くしており、ファリンを助けるのが目的だったゆえ、メンバーは絶望するしかなかった。
そこでマルシルは禁忌の古代魔術を使うが、今度は古代魔術に詳しい『狂乱の魔術師』とやらに目をつけられて……。
──オープニング曲のタイトルは『運命』。
ロックバンドsumikaによる賑やかなキーボードの音色に、ポップなロックチューン。
映像に合わせて男性によるバンドメンバーのかけ声が入り交じる。
ワイバーンの足に捕らえられたライオスのパーティーが次々と野菜とだし汁が入った大きな中華鍋に落とされ、それを食するのは実物大の本人たちという、作品のキャッチフレーズでもある『食うか、食われるのか?』の衝撃的なシーンが特長的だ。
エンディング曲はガールズバンド、リーガルリリーによる疾走感のあるロックナンバー。
サビのイラストである氷に包まれた洞窟内で流線的なギターと、縁の下の力持ちでもあるベースによる彩り。
『キラキラの灰』の曲名の如く、灰のようにキラキラと粉雪が舞い、二つの主役と両手を広げたファリンの後ろ姿が一対の綺麗な一枚絵となり、軽快にサウンドを奏でる。
──本来、このようなRPGのような展開の物語では、魔物というものは倒して、お金や経験値を得て旅をするのが目的だ。
つまり経験値でレベルを上げて、落としたお金で武器や防具などを買い揃えて、強敵と戦って進むというのがセオリーである。
しかしこの物語は飢えをしのぐため、魔物をわざわざ調理して食べるという常識から外れた内容となっている。
──ライオスのモンスターに対するマニアックな知識はダンジョンでも通用し、獲物を倒し、ライオス自らの手や、料理人で通なセンシに調理させる。
その気味が悪い魔物を自ら捌いて食べるというのだから、マルシルの『嫌だー!』と強烈に叫ぶ人気声優の演技力もネット上で有名となった。
チルチャックは洞窟内のトラップや暗号解読を得意とし、完全無欠なメンバー編成に見えたが、メンバーにはどこか抜けている一面もあり、数々のモンスターの攻撃や、他の冒険者たちの心理戦などに苦戦させられる。
──なお、コミックは既に完結しており、アニメの第二期も終わりを迎えるダンジョン飯。
異世界ファンタジーには稀をみない魔物食を題材としており、そこに立ちはだかる魔物たち。
アクションシーンやメンバーたちの心理描写なども細かい仕組みとなっており、食事以外にも見応えがある作品だ。
──敵に傷つき、赤い血を流し、生きた証を散らすリアル感のある設定であるせいか、異世界という違和感がなく、作画が崩れてるシーンもない。
隙のない丁寧な作りでもあり、このアニメが高く評価されるのも分かるような気がする。
──なろうからの小説ではなく、漫画というメディアから、異世界ファンタジーとしての実力を秘め、今ではそれなりの人気が出ない限り、積み上げられた山に埋もれそうな異世界ファンタジーというジャンル。
それにも関わらず、工夫とアイデア次第では終わりが尽きないジャンルということを本作で思い知らされた。
──できればコミックの完結まで描いてほしく、インパクトが大きいアニメでもある。
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