天と地、二つの国を繋げるヤナタにある頂の世に住み、毎日、酒を飲み、両親が備蓄していた米を食い潰し、自堕落に過ごす上級神であるサクナヒメ。
見た目は幼女でも年齢は立派な齢となっており、武神の父タケリビと豊穣神の母トヨハナの娘という高貴な位を持ち、その恵まれた環境で育ったサクナヒメは次第にぐうたらになり、いつしか駄女神のレッテルを貼られるようになった……。
──そんな神々が暮らす頂、神の領域にある大橋にて、突如現れた人間たちの騒動により、蔵に火が燃え移り、主神カミヒツキへの最高の献上物、両親が育てた献上米さえも燃えて、全て灰にしてしまう。
怒ったカミヒツキはサクナヒメと乗り込んできた人の子らを、鬼が潜む人間と恐れられ、行方不明のサクナヒメの両親が稲作を営んでいた無法の地、ヒノエ島に追放することになり、サクナヒメは嘆きながら幼馴染みのココロワヒメに助けを求める。
サクナヒメのパートナーのタマ爺はこれはサクナヒメが心を入れ替えるチャンスだと言い張り、サクナヒメにライバル心を抱いていたココロワヒメもそんな逃げ腰のサクナヒメに檄を飛ばし、サクナヒメを都から追い出す形へと向けていった。
──木のボートで大嵐で荒れた海で何とか島にたどり着いたサクナヒメたちは、サクナヒメの両親が暮らしていた島に着くが、一緒についてきた5人の人の子らも実は親子ではないことが判明し、一月前に出会ったばかりだと知らされる……。
──元はへっぽこ武士でもある田右衛門、
常にメモを取る勉強家のミルテ、
トラブルメーカーで自己中のきんた、
控えめで品格のあるゆい、
ある事情から言葉を発せなくなったかいまる。
──そうして人の子らと行動を共にし、まずは住む場所の確保と探索している時に島に巣食う鬼が次々と現れる。
サクナヒメは武神の父タケリビによる潜在能力にて、草刈りカマで圧勝し、この程度の鬼ならばと安堵していたが、そこにアシグモ族という一人の住民と出会い、彼が手入れしていたサクナヒメの母、トヨハナが住んでいた空き家へと案内される。
──しかし空腹は満たされず、食事の調達を始めるが、思うように食料が手に入らず、野草やどんぐりなどと粗末な食卓に……。
野良仕事が得意だと言う田右衛門が米のなる種もみというものを見せ、稲を育てるまでは……。
──いきものがかりによる主題歌『晴々!』も明るく前向きなポップな曲調。
ボーカルをなぞるようにギターが鳴り、晴れ晴れと照らし、雨模様を咲かすという力強い歌詞で、この作品のイメージにピッタリである。
農民なのに笠を被った武士のような二面性がある、カッコいいPVにもグッとくる。
エンディング曲はORIGAMI。
人気アカペラ女性グループLittle Glee Monsterによるバラードソング。
古風で和のサウンドをベースに、伸びやかなハモリやコーラスが舞い、今は泣かないで、乗り越えたら願いは叶うから……の応援ソングに心から励まされる。
──この物語の原作はSwitchやプレステなどで販売されている、アクションと稲作を合わせたシミュレーションゲームからとなっており、キャラクターの声優陣もゲームと同じ声優陣という、驚きの内容でもある。
──何もない土塊な畑を耕して、土を田へと慣らし、肥料を撒いて、水に浸して、しろかきし、そこでようやく田植えができる状態に……。
そんな稲作に苦労しつつ、手間暇かけて育てるシーンが実にリアルで、農林水産省が全面協力したという部分も納得がいく。
──普段、私たちが食べている主食でもある米。
その米一粒一粒を育てるのに、米農家がどれほど苦労しているのかが、作品を通じて身にしみて分かるだろう。
稲作とは植えればすぐに食べれるものではなく約10年をかけて土や稲、田んぼの範囲などを改良し、ようやく質の良い米ができるとか……。
──そんな原作のゲームにより、米農家を目指す若者たちも増え、稲作は色々と大変な作業だと呟きつつも、丹精込めて育てた稲が立派に育った時の喜びは計り知れないとSNSなどで大きくアピール。
さらにアニメ化になると爆発的に大ヒットし、元が『えーでるわいす』からのゲーム作品からとは思えないほどの出来でもある。
──アニメ、ウマ娘などのキャラ絵を担当したP.A. WORKSにより、キャラクターもキッズアニメのような可愛らしい絵柄だが、それを裏切るように人の子らの心理描写もリアルである。
農業の知識以外は下手の横好きな田右衛門、きんたが必死に夢を追いかけるシーン、ゆいが実は異国人だったという展開などと見応えがあり、ゲームでは見れない、頭に付けた頭巾を外したミルテの素顔に彼女のファンが熱狂した。
──稲作と人間関係、両方の成長を上手い具合に捉え、将来的には豊穣神の母のような美味しい米を作るため、サクナヒメを中心にドラマチックに描いていくアニメ。
米を食べる前に感謝する気持ちにさせられる素敵なアニメでもある。
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