足利尊氏の裏切りにより、鎌倉幕府は滅亡し、北条家の生き残りによる北条時行と名乗る少年が武士の世を駆け抜ける物語。
物語の主人公の時行は知恵や武勲はないものの、日頃の忙しい屋敷で培ってきた逃げ足の速さというスキルを武器に、面倒な行事や稽古から逃げ回る日々だった。
そんな中、尊氏との戦乱で敗れた鎌倉幕府の跡継ぎとして時行が選ばれることになるが、彼自身、武士にも関わらず、敵と刀を交えることが苦手で幕府が無くなっても逃げる日々……。
──例え、逃げたとしても行くあてなどなかった……。
まだ子供で頼れる味方も亡くし、ずっと逃げ続けるしか能がない臆病者と言われても、こうするしか、この動乱で生き残れなかったのだ。
時行はそれを武器にして、これが自身にとって最善の策だと思っていた。
──そこへ諏訪大社の巫女である雫と共に、怪しげでちょっとズレた性格の神官である諏訪頼重と出会い、時行を守ることを誓うようにと、髪の結び目のスイッチでオンオフできる眩しいライトをちらつかせ、執拗以上に迫ってくる。
大雑把なイメージ図だが、先を見通せる能力があるとか言いながら、時行を我が子のように愛し、時に異様ほどに優しく接してくる諏訪だが、時行にとってはウザい存在でもあった……。
そんなショタコンな気質な諏訪は、時行は今までの武士にはない平和的で争わず、どう足掻いても敵に捕まらないという計画、鬼ごっこな戦略を一括にすることに……。
そのうち『逃げることで天下を取れる英雄となる』と、いい加減なことを言いながらだ……。
──DISH//による主題歌『プランA』は逃げ行く時行の心情を歌詞に込めたダンスロックナンバー。
艶のある男性ボーカルに高いキーでは裏声で伸びやかに歌い上げ、かけ声や合いの手、ハモリなどが響き、お祭りソングのような賑やかな雰囲気を感じさせる。
サウンドも良質で、和太鼓などの和楽器がダンスチューンなロックと絶妙に絡み合う。
音楽だけではなく、アニメーションの動きでも魅せる、滑らかな映像は必見である。
エンディング曲担当は地球外生命体のユーチューバーであるぼっちぼろまる。
4つ打ちのダンスナンバーに『鎌倉STYLE』というタイトルに合わせて、鎌倉時代に場違いなDJのおじさんが登場。
鎌倉時代の絵面なのにマイクで歌ったり、ゲーセンの人間モグラ叩きや、メンバーを乗せた大型バスが走ったりと、ツッコミどころが満載だ。
両曲とも歌詞のテロップ付きで、最近のアニメでは珍しい明度を抑えた淡い映像からして、一昔前のアニメーションを彷彿させる。
──この作品は放送直後から神アニメとネットで評判となり、大ヒット作となった暗殺教室の漫画家が描いた歴史スペクタクルな物語である。
登場人物も過去の歴史上に実在した人物なので、歴史が好きな人にもおすすめできる。
あの名作のキングダムに似ている雰囲気もあり、それを目指して作った感も伝わってくるだろう。
──だが、実際の時代の流れを忠実に再現してるため、先が読めてしまう部分もあり、飽きられてしまう場面もあるし、鎌倉時代という古い舞台でもあり、意図的に描いたのか、イラストも少々古臭いイメージがある。
そうにも関わらず、アニメとなって、どのように再現されるのかという期待感もあり、人によって好き嫌いがはっきりと分かれる両極端な作品でもある。
そんな歴史ものであるが、少年漫画という設定か、ギャグのシーンを無理に詰め込んでいても余計に笑えず、イタいのが難点でもあるが、物語や舞台設定はしっかりと練られており、今回のアニメ化になったことで時行の逃げっぷりも丁寧に表現している。
──しかし、鎌倉幕府という時代設定で、残酷な描写が所々にあり、血塗れで倒れた武士や、刀で斬られたり、弓が刺さって血が飛び散るシーンなどもあり、こういう場面が苦手な人には抵抗があるのも事実だ。
第一話による、一見のどかな世界観と見せかけて、突然、蹴鞠から首をはねられる所に変わる箇所もあり、戦乱の世と思って、警戒して観ていても油断はできない。
決してお子様にもおすすめなアニメとは言い難いが、大河ドラマのような作品でもあり、話数を重ねる度に味わい深くなるだろう。
──オープニングの歌詞のように『逃げるが勝ち』を連呼する意味の通り、中々奥深い作品でもある。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!