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第11話 喧嘩独学

公開日時: 2024年6月9日(日) 11:59
更新日時: 2024年6月9日(日) 20:06
文字数:2,010

 母親の高額の入院費を稼ぐためにファーストフード店でがむしゃらに働く物語の高校生、陰キャ生徒の志村光太しむらこうた

 通っている高校も底辺レベルであり、校内で何かしらのトラブルを起こしても、それを止める教師の陰もなく、弱者は強者を敬えのカースト制度付き……。


 志村は不良の親玉でもあるハマケンにイジメを受け、毎日殴られ、蹴られるでボコボコに……。

 さらにハマケン自身のユーチューブ配信のネタとして、変な化粧を塗られて晒し者にされたりと、ノーギャラで様々な脅迫をされる志村。

 ユーチューブの映像担当で金に目がない金子亮かねこりょうこと、カネゴンも志村に対し、ゴミを見るような目で蔑んでいた。


 ──金もない。

 夢もない。

 友達もいない。

 恋人もいない。

 学校ではイジメ。

 唯一の肉親は入院中。

 おまけに金を稼ごうとして始めたユーチューブもほぼ皆無……。


 ──志村の心は打ち負かされ、毎日負け組の人生を送っていた。


 同じくカネゴンもハマケンから見捨てられ、新たな金づるへと志村側の味方になるが、志村の自宅にて、配信中にもめて、カット前のキムチ二刀流を武器にした志村と対立するさま……。

 そのおかしな模様の喧嘩が動画配信の電源を切り忘れて、全世界に発信されており、ユーチューブというのはヒットすれば、膨大なお金に化けることも判明した。 


 ──しかしそれは一時しのぎだった……。

 ボロアパートで絶望の生活を送ることは変わらず、どうにかしてハマケンに対抗できる手段はないのかと……。

 暗い部屋でPCのディスプレイを眺め、そんな迷いをかなぐり捨てる志村。


 志村はハマケンにどうにかして勝ちたいという理由で『喧嘩独学』で検索したユーチューブにて、同名の喧嘩独学というチャンネル登録者数ゼロの番組をクリック……。

 鶏頭のお面を被った柔道着の男に、素人でも一般人相手に喧嘩で勝てるイロハを学ぶことになる。


 ──頭に意識を集中し、殴られても痛くない方法。

 ローキックに似せた一撃でダメージをあたえるカーフキック。

 カーフキックと見せかけ、一撃必殺なオーバーハンドフックで決めるシーン。


 ──ハマケンを何とか力で屈し、個人に密かに始めていた不良コンテンツであるユーチューブのチャンネル登録者数も一気に増え、志村の世界は一気に勝ち組となった。

 バイト先で出会った一人の美少女、朝宮夏帆あさみやしほとの関係も良好で、このまま幸せな人生を送れると思っていた。


 だが、それはつかの間の幸せに過ぎなかったのだ……。


 ──負け犬を語る志村の化粧姿から始まり、ほぼ静止画で綴られるオープニング曲『Wild Boy』。

 安定したドラムにバスドラというシンプルなサウンドのヒップホップで、ラップ調の歌に合わせ、フェンスで隔てた大勢の観衆を前に、黒パーカーでフードを深く被った志村がクールに踊る。

 ボーカルはEXILE THE RAMPAGEからの派生グループ、MA55IVE THE RAMPAGEからだ。


 エンディング曲『バイラルハック』はエッジの効いたスピード感のあるメロコアよりなロック。   

 速弾きのギターと変幻自在のドラムが志村たちの日常の画面上を駆け巡る。

 どんな強敵にも臆せずに立ち向かえという謎のロックバンド、Crab 蟹 Clubからの力強いメッセージソングでもある。


 ──元はといえば、韓国の人気漫画からのアニメであり、物語の設定を日本版にアニメ用に再編集した作品である。

 キャラや街並みの名前などを強引に日本語にし、そのせいかおかしな部分もちらほら……。


 物語もヤンキーやプロの格闘家などの悪い行いをする相手を、自身の喧嘩で勝つという内容であり、相手を殴る、蹴る、一歩間違えれば、ボコられてやられるのは当たり前。

 

 そのせいか激しい描写もあり、暴力シーンも多い。

 子供向けのアニメではなく、年齢規制してほしいほどの酷さでもある。

 この令和の時代に喧嘩上等な不良アニメなんて流行るはずがないと……。


 ……とここまでは批判的な意見ばかりだが、個人的には面白いと思う作品である。


 ──ユーチューブの撮影時による視聴者の反応、

 超能力などの飛び道具とかもなく、ひたすらリアルに漫画のような集中線を多用した喧嘩のシーン、

 一般人との喧嘩から、プロのスポーツ選手、複数人との流れになる喧嘩の行方、

 いい感じに随所に入る、韓国語寄りの挿入歌などなど……。


 ──基本、物語構成がしっかりしており、テンポも良く、夢中に観れて、いい具合での次回予告の挿入もいい。


 そして何度、攻撃を食らっても勝てそうにない相手に対抗する勇ましい志村にも注目したい。

 陰キャでイジメられっ子だった弱い彼が、視聴者のために勝ちたい、番組のためにお金を稼ぎたいという強い執念が伝わってくる。


 ──原作漫画は200話以上も続いており、原作をアニメで全て再現するのは不可能と思われている作品。

 海外からの作品であり、色々と叩かれるアニメだが、これもこれでアリだなと思ってしまう。


 ──これは衝撃的なシーンで幕を開ける正統派な喧嘩アニメである。








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