【完結】厨二病を患う幼馴染みの自称・魔族の姫君は真実でした

ダーク・ガーディアンとかに任命されたけどこれ厨二病の造語なのか本当にある役職なのか?
和美 一
和美 一

第6話:みんなでお風呂

公開日時: 2021年5月1日(土) 21:09
文字数:2,219


「入るのか、本当に入るのか……」


 多くの日本家屋がそうなっているように朝比奈家も洗面所とお風呂場が繋がっている構成になっている。なんの因果か、妹の瑞穂と幼馴染みの千晶と三人一緒にお風呂に入る事になってしまった俺は先に入っておいて、との瑞穂の言に従い、一足先に洗面所に来ている所だった。

 本当に入るのか……。その思いが脳裏をよぎる。妹の瑞穂とは今でも一緒にお風呂に入る事がある仲だが、幼馴染みの千晶とも一緒に入るというのは小学校低学年以来である。千晶の大きな胸を想像し、顔が赤くなるが、とりあえず入るしかないと割り切り、服を脱ぐ。先に風呂に入っておいてと言われたのはある意味、幸運であった。一緒のタイミングで入る事になり、この広いとはいえない洗面所で三人揃って服を脱ぐなどとんでもない。そう思いながら、服を全て脱いだ俺は風呂場に入る。既に湯舟にはお湯が張られていて、俺はかけ湯をして、湯舟に浸かる。そういえばこの浴槽では三人もの人間が入るなど不可能だが、どうするのだろう。金持ちの巨大な風呂場じゃないんだぞ。入るのも子供でもない。二人

がやっとという所だ。残り一人はその間、体を洗う事になるのか。体を冷やさなければいいが……。などと的の外れた心配をする。真に問題なのは中学生女子と高校生女子と共にお風呂に入る事であるというのに。


「お兄ちゃん、お湯加減はどう?」


 そう思っていると妹の瑞穂が入って来る。タオルも巻かず全裸だ。これはいつもの事であるのでそれほど動じずには済んでいるのだが。


「ああ、いい加減だ」

「そっか。それじゃあ、私も入ろっと」


 かけ湯をして妹が湯舟に浸かる。妹と二人、湯舟に浸かり、やはり妹は中学二年生にしてはまだ発育が遅いな、などということを密かに思う。口に出すとどうなるか分かったものではないので絶対に言わないが。そう思っていると再び風呂場の扉が開く。


「秋吾、瑞穂ちゃん、私も入るね」


 千晶が入って来た所だった。こちらもタオルなど巻かず全裸だ。長い黒髪は纏めているが。こちらに向かって来る千晶。ぶるるん、と巨乳が揺れた。やっぱり胸、大きいな……。目の前の妹の瑞穂と比べればその差は歴然だ。魔族の姫君という血筋も胸の大きさに影響しているのだろうか? ともあれ、思わず目を奪われそうになり慌てて視界をそらす。千晶も胸をガン見などされいい気分になるはずもない。


「ふふふ、私のおっぱい、大きいでしょ。チャームの魔法も使っているから秋吾が私に恋に落ちてしまうかもね」


 と思っていたらそんな事を言い出す。俺は返事に窮し、困っていると瑞穂が「エッチ」と俺に冷たい声をかけてくる。このチャームの魔法とやらは事実なのか。ただの厨二病だと思うが、本物の魔法も使える魔族の姫君だけに分からない所がある。


「二人が入っていると私は入れないね。体から洗う事にするよ」

「千晶さん、私が背中流すわ」

「ありがとう、瑞穂ちゃん」


 そう思っていると女性陣が二人して体を洗う体勢に入った。俺に依頼されなくて良かった、と思う。


「別に秋吾が流してくれてもいいけど?」

「いや、遠慮しとく」

「そう?」


 千晶のとんでもない申し出をお断りして、俺は湯舟を堪能する事にする。浴槽の外では二人の全裸の女子が体を洗っていて、とても視界を向けられたものではない。そう思っていると体を洗い終わったのか、千晶が湯舟に入って来る。


「久しぶりだね、秋吾と一緒のお風呂」

「ああ……小学校低学年以来か……」

「私は秋吾と一緒にお風呂に入ってもいいのに、秋吾ったら恥ずかしがっちゃって……」


 一緒にお風呂に入らなくなったのも俺から言い出した事だったな。そう思い出し、嘆息する。それが今はこうして一緒の湯舟に浸かっている。どうしてこうなったのやら。

 千晶の方をチラリと見る。ご機嫌そうに湯舟を堪能している。その体はすべすべで大きな胸以外にも魅力が溢れている。思わずガン見しそうになり慌てて視界をそらす。この幼馴染みと一緒のお風呂というのは危険だ。


「お兄ちゃん、私、体洗い終わったから湯舟変わって」


 瑞穂からそう言われ、ある意味安堵し湯舟から出てスペースを譲る。これで女子二人とはある程度離れる事が出来た。さっさと体を洗ってそのまま上がってしまう事にしよう。いつもより早い風呂上りになるが、止む無し。そう思っていると、


「秋吾、私が背中流すね」


 千晶が湯舟から上がって、俺の後ろに陣取った。困惑する俺に構わず千晶はタオルに石鹸を付け、背中を流す。俺はやけくその体で千晶に背中を任せ、俺自身は頭を洗う。何故、こんな事になったのか。千晶のタオル捌きは優しくて背中を綺麗に流してくれる。


「むー、お兄ちゃんったら、デレデレしちゃって……」


 瑞穂にそんな事を言われるが、仕方がないだろう。千晶の全裸姿は男子高校生には刺激が強すぎる。千晶は終始笑みを浮かべているようであったが。

 そんな風に体を洗い、さっさとお風呂場から出る。これで何とか女子二人の全裸姿から解放された。俺はホッと息を吐く。


「やれやれ……」


 千晶がこの朝比奈家に居候している限り、こんな事が何度もあるというのか? それは御免だな、と思いながら、部屋に戻る。後は寝るだけという中。今日習った授業の復習でもしておくか、と教科書とノートを広げていると千晶が俺の部屋に入って来た。


「千晶、男子の部屋にそうそう入るな、と」

「それより大変、秋吾。魔物が現れた」


 それは聞き流せる事ではないようだった。


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