カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 65

公開日時: 2020年9月16日(水) 13:00
文字数:2,610

「ほう?」

「だって、あんたのことだ。自分のドラゴンを破壊する手筈ぐらいは持っているはず。おそらく《デストロイバース》とかだろう? コスト二の《デス・ギフト》もあり得る。だが、今あんたのエネルギープールで使えるカードはわずか一枚のみ。これじゃあたとえ握っていても、《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》を破壊できない」

「……ふむふむ、一理あるな……」


 実は図星。今、井筒の手札には《デストロイバース》があった。だがエネルギープールの関係上、使えなかったのである。


「では、《ヌークリア・ウェポン・ドラゴン》を召喚してターンを終了するしかない」

「オレのターン、ドロー!」


 今引きで《リヴァイムート・レムリア》を手札に。すぐに召喚し、二枚ドローする。内一枚は《リヴァイムート・ネプチューン》。これをコストを支払わずに場に出す。


「どうだ? 盤面の差は埋めた。それに手札に差が出始めたぜ?」


 リュウシの手札は七枚。対する井筒は三枚。


「言えている。ちょっと危ういな。ところで、攻撃はするのかね?」

「まだだぜ」


 リュウシは見抜いているのだ。井筒の手札にあるであろう、自分のドラゴンを破壊するトリガーカード。


「そうか。では私のターン」


 この時の井筒、リュウシが警戒するようなカードを実は握っていなかった。仮に《デススキップ》が手札にあったら、使えばいいだけの話。しなかったということは、そういうことである。


「まずはコスト五、《ヌークリア・ディベロップメント・ドラゴン》を召喚だ。その効果で手札を一枚捨て、デッキから任意のヌークリアを手札に加える。私が加えるのは、《ヌークリア・シェルター・ドラゴン》!」


 残るエネルギープールのカードは二枚。


(来るか……? いや、来ない!)


 その読みが当たり、井筒はターンを終わらせた。


「変だな? ホッとするような顔をすると思ったのだが?」


 手札のカードを見抜いているのなら、使わなかったことに疑念を抱くはず。見抜いていないなら、使われなかったことに安堵するはず。しかしリュウシの顔は、そのどちらでもない。


「確かに使おうと思えば……だろうな。だがそれが本当に最適解か? それは疑問だぜ! 《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》の効果で出したヌークリアは、このターン攻撃を行えない。そして《ヌークリア・ウィンター・ドラゴン》は効果を使う場合、他のドラゴンで攻撃できなくなる。これではオレの場を吹き飛ばしても、攻め込めない。それにオレの場は、そんなテンポを乱してまで除去したいカードはない。だとしたら、出すうま味はない!」

「なるほど、当たりだ…」


 鋭い洞察力に、思わず感服する井筒。


「オレのターンだ!」


 だが逆に言えば、リュウシは強力なドラゴンを出せないということでもある。


(出したら即刻、吹き飛ばされてしまうからな……)


「まずは《デス・ギフト》を発動だ! 選ぶのは《リヴァイムート・ネプチューン》。だがこの時、《リヴァイムート・オホーツク》は代わりに破壊されて一枚ドローできる。その後に《デス・ギフト》の効果が適用され、一枚のドローとエネルギーチャージをする!」


 このプレイング、井筒には、


(まだキーカードを引けていないらしいな…)


 そのように見える。だが実は、


(二の矢、三の矢が必要……。《リヴァイムート・ニヴルヘイム》だけでは仕留めきれない。ここはドローを優先させる!)


 他の超大型のドラゴンを引くのを待っているのだ。


「フン。ま、私のターンだ」


 これでエネルギープールのカードは、いよいよ八枚。《ヌークリア・ウォー・ドラゴン》がついに動き出す。


「の前に、スペルカード……《フォール・アウト》を発動。その効果によってこのターン、私のヌークリアが相手のドラゴンをバトルで破壊するたびに、私はカードを一枚ドローできる」

「ハンドアドバンテージの差を埋める気か!」


 そしてアタックステップ。まずは《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》で攻撃。


「それは、通すぜ……」


 六点をえぐり取られた。これでリュウシの体力は残り二十四点。


(結構残っているように見えて、【ヌークリア】相手じゃすぐに消し飛ぶ! ここは慎重にカードを使わないといけないな…)


「では次だ。《ヌークリア・ウォー・ドラゴン》で直接攻撃!」

「《リヴァイムート・ネプチューン》でブロック!」

「だが戦闘破壊はされた。よって一枚ドロー!」

「おっと? 今お前、カードの効果でドローしたよな? となると《リヴァイムート・ポセイドン》の効果発動! コストを支払わずに場に出すぜ?」

「……しまった。これ以上は攻め込めない、ターンエンドだ」

「そしてオレのターン!」


 リュウシのドロー。カードを確認するすると、


「悪いな井筒! どうやら《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》の効果は完全に死んだみたいだぜ?」

「何を言うか? 破壊されればすぐにでも……」

「オレは《リヴァイムート・メガラニカ》を召喚し! 効果発動! 相手の場のドラゴンをバウンスする! オレが選ぶのはもちろん、《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》!」

「そう来るか、リュウシ君!」


 そして攻めに転ずる。


「バトル! オレは《リヴァイムート・レムリア》で直接攻撃!」

「《ヌークリア・ウェポン・ドラゴン》でブロック……」

「だが《リヴァイムート・ポセイドン》でも直接攻撃だ!」


 井筒の場には、ブロックできる《ヌークリア・ディベロップメント・ドラゴン》がいるが、


「受けよう」


 これで残り体力、二十二点。


「良し! ターンを終了するぜ!」


(してくれたな……)


 井筒のターン。エネルギープールは九枚。これでは《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》が召喚できても、《デストロイバース》が使えない。


(それにリュウシ君はかなり警戒している……《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》のリクルート効果を。だとすると、これで《ヌークリア・ウィンター・ドラゴン》を狙うのは危険……)


 そこで、《ヌークリア・ディベロップメント・ドラゴン》の出番だ。何と井筒は、手札に戻された《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》を捨てた。


「馬鹿な?」


 これにはリュウシも驚きを隠せない。


「そして、デッキからヌークリアを一体、手札へ! 私が選ぶのは……」

「ま、まさか! 《ヌークリア・ウィンター・ドラゴン》……?」


 そう、そのまさか。次のターンには井筒のエネルギープールは十枚になり、コストを支払っての召喚が可能になる。

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