「俺のターン。お、来たか……!」
どうやらキーカードを引いたらしく、ここで初めて輝明の表情が緩んだ。
「俺はコスト六の《サラマンフリート・フレイム》を召喚! そして効果を使用する! 自分の場の、他のサラマンフリートを疲労状態にすることで、そのドラゴンのコストの分だけ場の自身のコストが上がる!」
「何だって?」
そうなると、《サラマンフリート・フレイム》のコストは十八も上がることになる。つまり、二十四。
「く、来るか…!」
だが、このまま輝明はターンを終わらせる。
「来ないのか…!」
冷や汗を拭うと真子は、コストを上昇させ続けるサラマンフリートに対処すべく、壁となるドラゴンを場に呼び出す。
「私はまず、コスト三の《ミキサーの建築龍機》を召喚! 残ったコスト四も支払って、《ダンプの建築龍機》も場に出す!」
一度ブロックで相手を消耗させれば、サラマンフリートのコストは元に戻る。真子は自分が攻めるのはそれからでも遅くないと確信している。
だが、
「俺のターン! ドロー! エネルギーチャージ! コストは七、貯まったぜ! これで召喚できる…《サラマンフリート・ステラー》をな!」
「こ、これは…!」
嫌な予感が、真子の中で生まれる。そのドラゴンを見ているだけで体が熱くなっている気がするのだ。
「では、行くぜ? アタックステップ! 俺はまず、《サラマンフリート・ヒート》で直接攻撃!」
コスト十八の直接攻撃など、通せるはずがない。
「ブロックだ! 私は…」
「おおっと、よく考えてブロックした方がいい。今、《サラマンフリート・ステラー》の効果が適用されて、ブロックでも戦闘ダメージが生じるんだからな」
「そんな危険な効果を、持っているのか!」
真子の手札には、墓地より戻した《緊急成長》がある。コストを三上げれば、《サラマンフリート・ステラー》にも届くドラゴンはいるにはいるのだが…。
(きっと、《サラマンフリート・ステラー》の攻撃は最後だ…! アイツは私の手札が一枚、《緊急成長》であることを知っている! 今私の場のドラゴンのコストは、三が二体、四、六が一体ずつ…。ここは!)
そして、ブロックするドラゴンを選ぶ。真子の選択は、《ブルドーザーの建築龍機》によるブロック。
「この時私は、《緊急成長》を使わせてもらう!」
しかしそれでも、《ブルドーザーの建築龍機》のコストは九で止まる。差の九点が体力から削られた。不動だった体力が、残り二十一点に。
「う、うぐっっ!」
これで《サラマンフリート・ヒート》のコストは元の五に戻った。しかしまだ安心はできない。
「続け、《サラマンフリート・フレイム》!」
今度はコストが二十四に膨れ上がったドラゴンの攻撃。
「こ、この……! 《ミキサーの建築龍機》でブロックだ!」
「それをすると、お前の体力は残らないが?」
「わ、私はトリガーカード、《ビルドアップ》を使う…!」
その効果で、真子は手札のコスト十の《エクスカベーターの建築龍機》を捨てて、十点体力を回復させた。つまり体力は三十一点になった。が、この一撃で二十一点削られるので、残りは十点。
「場から離れた《ミキサーの建築龍機》は、墓地には行かずエネルギープールに送られる…」
この攻撃が終われば、《サラマンフリート・フレイム》のコストも六に戻る。
「かわしたか! なら俺はターンエンド!」
「私のターン!」
ここで真子のエネルギープールは九枚になる。
(攻撃力が下がったサラマンフリートは、今のタイミングで除去する!)
そう。何とかして爆発的な猛攻を凌いだ今が、サラマンフリートを場から退ける最大のチャンス。
「私はコスト九の《ホールドリルの建築龍機》を召喚だ!」
エネルギーチャージも同時に行えるドラゴンを召喚した。《ホールドリルの建築龍機》は場に出た時、自分の墓地のカードを三枚まで選び、エネルギープールにおくことができるのだ。これで彼女のエネルギープールは十二枚。
(さっき、《ビルドアップ》で《エクスカベーターの建築龍機》を捨てていなければ、次のターンに出せていたが…。他にドラゴンがなかったのか?)
輝明は真子の盤面を見て考える。体力の回復は一点でも十分だったはず。そして今、真子は《エクスカベーターの建築龍機》はエネルギープールに置かなかった。
(何かを仕掛けるつもりか! でもまずは、サラマンフリートを攻撃するはずだ)
その読みは的中する。まずは《ホールドリルの建築龍機》で《サラマンフリート・フレイム》を攻撃。コストの差、三点が輝明の体力から削られた。
「ここで俺はトリガーカード、《リベンジチャンス》を使う。選ぶ効果はエネルギーチャージだ!」
「まだだ! 私は《ダンプの建築龍機》で《サラマンフリート・ヒート》に攻撃!」
「おい、コストはそっちが下回ってる。血迷ったか?」
口ではそんなことを言ったが、
(ま、戦略だろう。あのドラゴンに何か、効果がある)
と、わかっていた。
「《ダンプの建築龍機》は相手のドラゴンに攻撃する時、サイコロを一回振ることができる。出た目の数だけこのターンコストを上げられる!」
コストの差は、たった一。つまり出目に関係なく《サラマンフリート・ヒート》は破壊できるのだ。
「四だ! よって《ダンプの建築龍機》のコストは九に! お前のドラゴンを破壊しつつ、三点のダメージを!」
輝明の残り体力は、二十四点。
「どうだ! お前の場には、《サラマンフリート・ステラー》しかいなくなった!」
「勝ち誇るのは、勝ってからにしなよ…。俺はトリガーカード、《燃料補給》を使用。デッキからカードを三枚、エネルギープールに置ける。ただしこの効果で置いたカードは俺のターンが終わる時、墓地に送られる」
エネルギープールに十一枚貯まった。
「……ターンエンドだ」
真子はできることをし終えたので、ターンを終わらせた。
(次のターンまで生き残れば! 私は手札のスペルカード、《ドラゴンリベンジ》が使える! そうすれば墓地の、《エクスカベーターの建築龍機》を蘇生して。さらに戦闘でアイツのドラゴンを戦闘破壊すれば!)
《エクスカベーターの建築龍機》の効果は、戦闘で相手のドラゴンを破壊した際に発揮できる。自分の墓地のドラゴンを二体まで蘇生するか、相手の場のドラゴンを二体まで破壊するかのどちらか。決まれば真子が有利になることは間違いない。
「…いいや、決まらないさ。俺のターン!」
そう。この時既に輝明は切り札を手札に呼び込んでいたのだ。
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