カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 57

公開日時: 2020年9月14日(月) 16:00
文字数:2,456

「私のターン、二枚ドロー」


だがそれが油断を生む。井筒のエネルギープールも十三枚ある。強力なカードが飛んできてもおかしくはないのだ。


「コスト九のドラゴンを召喚しようか。《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》!」


大型のドラゴンの登場に、一瞬焦る菖蒲。しかしコストは《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》の方が上。バトルで破壊される心配はない。


「……と、思っているんだろう? ではさらにコスト三の、《ヌークリア・バッテリー・ドラゴン》を召喚だ」

「軽コストのドラゴン…?」


この場にそぐわない、軽いドラゴン。だが出したのには意味がある。


「バトルと行こう。私は《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》で、君の《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》に攻撃」

「でも、コストは私の…」

「確かに、カードに記載されたコストは君のドラゴンの方が上。だが、《ヌークリア・バッテリー・ドラゴン》の効果がある。相手のドラゴンとバトルする時のみ、私のヌークリアのコストは三上がる」

「しまった!」


この攻撃で、《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》は破壊され、菖蒲に初ダメージが通る。二点受け、残る体力は二十八点。


「すまない、説明がまだだったな? 《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》の効果…。ドラゴンに攻撃した場合、疲労状態から回復できる。そして二度目以降の攻撃が可能で、おまけに疲労状態でないドラゴンにも攻撃が可能だ」


二度目の攻撃宣言。菖蒲の《ビオランドラゴラ・フェランドラル》が破壊され、六点のダメージ。体力は二十二点。わずか一点だが、逆転した。

ただし、《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》は直接攻撃が行えない。今、菖蒲の場は空。だから《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》は再度疲労状態から回復するが、これ以上の追撃はない。


(でも、ドラゴンを出さないでターンを渡すのは危険すぎる! だけど出せば、攻撃されて破壊……)


かなり厳しい状況だ。さっき生まれた余裕はもう、一ミリも心に残っていない。


(……いや、ここで諦めちゃダメ! 気を強く持たないといけない!)


自分のデッキを信じ、カードを引く。


(《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》……! 悪くはないけど、どうする……?)


この時、エネルギープールは菖蒲が十一枚、井筒が十三枚。場にいる限り《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》のコストは自分と相手のエネルギープールの差分上がるので、このスタートステップでエネルギーチャージをしなければ、二上がって十一。わずかだが届かない。だが手札には、コスト三のスペルカード、《枯れ葉》がある。それで《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》を疲労させてしまえば、直接攻撃をくらわせることができる。しかしそうするには、エネルギーチャージをするしかない。が、そうすればエネルギープールの差は縮まる。


(でも、《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》は私のエネルギープールのカードを墓地に送れば、相手のドラゴンの攻撃を無効にできる…)


けれどもその効果を使えば、エネルギープールのカードが減り、《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》のコストは上がるが次のターン以降の展開力に響く。

本来なら冷静に考えられるはず。だが今は状況が特殊。カード・オブ・ドラゴンの未来がかかっているのだ。だから無駄なことでも余計に重要なことのように考えてしまう。


そう。つまるところ、菖蒲の心配は無意味。何故ならエネルギーチャージを行わずに《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》を出してターンを終えればいいだけの話だからだ。そうすれば、返しのターンの攻撃を効果で凌ぎ、かつエネルギープールに差が出るので、次の菖蒲のターンに《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》を相打ちだが打ち取れる。


「私は、エネルギーチャージをして……」


しかし菖蒲は、エネルギーチャージをした。そして《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》を召喚後、《枯れ葉》を使って《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》を疲労させる。


「《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》で直接攻撃!」

「そう来るか…。だがそれは、通じない。私は手札の《ヌークリア・シェルター・ドラゴン》の効果発動。相手ターンに自身を手札から捨てることで、相手のドラゴンの攻撃か効果を無効にする!」

「そ、そんなっ…!」


意を決した攻撃は、届くことがなかった。


「………………。ターン、エンド…」

「私のターン。このターンも《ヌークリア・プロポージョン・ドラゴン》の効果で二枚ドローする。そして……!」


さらにドラゴンを繰り出す井筒。


「コスト六、《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》! さらに私は残ったコストでスペルカード、《オンカロ》を発動」


その効果で井筒は二体のヌークリアを選び、片方を墓地に送って、もう一方のコストをこのターンのみ、倍に。《ヌークリア・プロポージョン・ドラゴン》を墓地に送り、《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》のコストが倍化した。


「ここで攻撃を止められては興ざめだな。残った一コストで、《スロー・ニュートロン》を発動。私の《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》と君の《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》を選択し、その効果をこのターンのみ、無効にする」


これで、攻撃を止められなくなった。まさに絶体絶命。


「ではバトル! 《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》で、君の《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》へ攻撃!」


この時、十八に膨れ上がった《ヌークリア・プロリファレーション・ドラゴン》のコストは《ヌークリア・バッテリー・ドラゴン》の効果でさらに三上がる。一方の《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》は、コストは九止まり。差分の十一ダメージが菖蒲を襲い、残る体力は十点。


「追撃だ、《ヌークリア・バッテリー・ドラゴン》、《ヌークリア・エクスペリメント・ドラゴン》!」


コストの合計は、九。よって菖蒲の残り体力はわずか一点。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート