「じゃ、私のターン! これであっという間に、エネルギープールは十枚!」
しかしまだ超大型のドラゴンは出さない。
「まずは、邪魔なドラゴンに退場してもらおうかしら? コスト四のスペルカード、《デストロイバース》発動! 場のドラゴンを一体破壊し、そのドラゴンのコントローラーは一枚ドロー。私が選ぶのは当然、《災害竜UVレイ》!」
無効効果を持つ《災害竜UVレイ》が狙われた。
「《女帝眷龍ミクロコスモス》の効果で、お前のドラゴンは墓地には送られずデッキの一番下に戻る。そしてさあ、一枚ドローしなさい!」
「引いたカードは《災害竜ストームサージ》! カード効果でドローされたこのカードを相手に見せることで、コストを支払わず場に出せる!」
「ああぁ、コスト六のドラゴンが湧いて出た! でも私は残ったコスト六で、《女帝の祝福》を発動! 次の私のターンが来るまで、私の場の女帝眷龍は破壊されない!」
ここでアタックステップに移行。当然攻撃するのは《女帝眷龍ブラインドアイズ》。
「それは止めよう。われは《災害竜ストームサージ》でブロック!」
「でもその時、そのブロック時のバトルで私は《女帝眷龍ダークオビディエンス》の効果を使う! 《災害竜ストームサージ》のコストはそのバトルの間だけ、四下がる!」
コストは、攻撃側が五、ブロック側が二。この時の枝垂の手札にはトリガーカード、《退化》がある。しかしそれを使って相手のコストを下げても相打ちにはできないので、使わない。
「仕方ないな、われのドラゴンは破壊じゃ…」
そして《女帝眷龍ミクロコスモス》の効果でそれをデッキボトムに送る。
「ようし! やったわ!」
さっきのターンとは違って、紅葉は戦闘ダメージを与えられていない。にも関わらず喜んでいるのだ。
「そんなに嬉しいか? 女帝眷龍の効果を使えることが?」
「当たり前じゃない! 私は《女帝眷龍ブラインドアイズ》の効果! 自身をデッキに戻し、名前が違う女帝眷龍を場に! 《女帝眷龍ダーティーウィング》を!」
光の女帝眷龍共通効果では、疲労状態でリクルートすることになる。だが呼び出されたドラゴンの効果は強力。相手のドラゴンが発動する、破壊効果を一ターンに一度だけ無効にできるのだ。
(これでは、《災害竜カルデラ》を場に出す意味はないな…。さっきの攻撃、《災害竜オゾンホール》で無効にしておけばよかったか? だがそれでも結局は《女帝眷龍ブラインドアイズ》に逃げられるだけ…)
枝垂は直感する。まだ決勝ではないがこの戦い、己のプレイングが試されている、と。
「われのターン!」
エネルギーチャージしても八枚。
「どうやら、エネルギープールに決定的な差が出始めたようね?」
意気揚々と枝垂を煽る紅葉であったが、
「まあそなたの考えることはその程度じゃな。踊らされていたことに気づけぬとは…」
「な、何を遠吠えを!」
「われはコスト六、《災害竜ダウンバースト》を召喚。その効果で、相手のエネルギープールの方が我よりも多い場合、その分だけエネルギーチャージを行える。そなたのところには十枚貯まっておるのだろう? じゃあわれも十枚になるようにエネルギーチャージさせてもらおうぞ」
「それを忘れていたわ…。でも運がいいのね、この場面で手札に呼び込んでいるなんて…」
「運がいい、とは?」
その言葉に、枝垂が反応した。
「だから、言葉通りじゃない? ここで有効活用できるドラゴンを握っているっていうのは……」
「われはそうは思わない」
紅葉の発言を、枝垂はそう言って切り捨てた。
「何よ……」
「われの運がいいのではない! デッキが言っておるのだ、ここでこのカードを使え、とな! われはデッキのカードの声を聞く! そしてその声に導かれるのだ、勝利が!」
そして、増えたコストで発動する。スペルカードを。
「コスト四の《ネーミング・ディザスター》! お互いのプレイヤーは、デッキをシャッフルした後、カード名を宣言する。そしてお互いにデッキの一番下のカードを確認し、それが宣言したドラゴンならば、コストを支払わず場に出せる! 外れた場合は場のドラゴンを一体失う」
「ここに来て、運にすがるとはね…。でもわかってる? 確かに私の《女帝眷龍ミクロコスモス》はお前のドラゴンをデッキボトムに戻したけど、シャッフルしたら意味ないのよ?」
紅葉の指摘はもっともだ。四十枚以上残っているデッキのカードの内、一番下のカードをピンポイントで当てるなど、神業に等しい。しかも枝垂はドラゴンカードはハイランダー気味…スペルカードとトリガーカード以外は全てピン挿しなのだ。まず当てられるわけがない。
不正防止のため、各自デッキをシャッフルした後は交換して相手に切らせる。それから効果を処理する。
「まずはそなたからでいいぞ?」
「……じゃあ、《女帝眷龍ブラインドアイズ》!」
デッキに戻ったのだから、紅葉はそう宣言した。カード・オブ・ドラゴンにおいて、同名カードは四枚までデッキに投入できるから、確率が高いと踏んだのだ。ちょうどそれはエネルギープールにも落ちていないし、手札にもない。
「まあ、外れるよね…」
デッキの一番下は、《女帝眷龍アズールキャノン》。彼女の方は失敗に終わった。ので《ネーミング・ディザスター》の効果で、《女帝眷龍アクアホール》を墓地に送る。
(別に痛くもないわ。もうエネルギープールは十分だし、闇の女帝眷龍の共通効果! 墓地からでもコストを支払えば召喚できる! それで場から離れたらデッキの一番下に戻るけど、いざという時はどうにかなる…)
一方の枝垂はというと、目を閉じている。
「何、第六感でもあるって言いたいの? それとも透けて見えるとか?」
「耳を傾けておるのだ、デッキに」
彼女の脳裏に一枚のカードが浮かんだ。
「宣言する! われのデッキボトムのカード…。それは、《災害竜ボルケーノ・エラプション》!」
そしてデッキをひっくり返してお互いに確認する。
「ま、まさか! そんな馬鹿なことってある! あり得ないでしょう、こんなこと!」
紅葉が酷く動揺した。会場にもどよめきが走る。彼女は真っ先に不正行為を疑ったが、枝垂のデッキをカットしたのは彼女であるため、それはない。
そのカードは枝垂の言った通り、《災害竜ボルケーノ・エラプション》なのだ。
「言っただろう? デッキがわれに語り掛けてくるのだ。これを使え、とな!」
そしてコストを支払わずに場に出せる。
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