カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 21

公開日時: 2020年9月6日(日) 13:00
文字数:2,674

「では俺のターン。お前の手札は今、七枚あるな?」

「それがどうした?」

「クク、俺はな…。コストを六支払い、《ヒュドラフニール・フォトール》を召喚! その効果…疲労状態にすることで発動! 相手は手札をすべて捨て、捨てた数だけドローするんだ」


 手札リセット系のカードであった。


「…いいぜ、別に」


 しかしリュウシは驚かない。手札は腐っていたために、相手から引き直しのチャンスをくれると言うならもらっておくだけだ。手札を全て墓地に置き、七枚引き直した。


「おい今! お前はカード効果でドローしたよな?」

「ま、まさか…?」


 そう言われると、流石に表情が曇る。


「そう、そのまさか! 《ヒュドラフニール・ササニトン》の効果でデッキの上から七枚を墓地に送ってもらおうか!」


 一気に七枚のカードが、デッキから消し飛ぶ。これによってリュウシの残りデッキ枚数は、十九枚。


「俺はターンを終わらせる。さあ、お前のターンだぞ?」

「ど、ドロー…」


 墓地の枚数よりも少ない残りデッキ。その少なさがリュウシに、エネルギーチャージを躊躇わせた。


(でも! 今の手札リセットでオレの手札は良くなったことに違いはない!)


 ここでコスト六の《リヴァイムート・ポセイドン》を召喚する。


「おいお前……やる気があるのか?」

「何だ?」

「そのドラゴンは、相手プレイヤー…つまりは俺がカード効果でドローした場合にコストを支払わずに場に出せるはず。何故今、普通に召喚した?」

「それは……」


 盤面を強化するため、と言う前に亨が、


「お前には、俺が見えてないみたいだな? だからそういう変なプレイングをする。枝垂のことを認識して動揺しているんだろう? それがプレミを誘発している」

「ち、違…」

「じゃあ、どうだって言うんだ? お前は考えているはずだ。どうすれば枝垂に勝てるかを。そのせいで今、心がこの場にないんだ。だからヒュドラフニールの毒に四苦八苦する。ここはエネルギーチャージをしてでも、強く反撃しなければいけない状況だろう?」

「……何が言いたいんだ!」


 一聞すると、精神攻撃に聞こえなくもない亨の発言。だが、


「俺と真剣に勝負をしろ! それをできないんなら、お前に枝垂と戦う資格はない。ドラゴンテイマーにとって、目の前の対戦相手に、自身が持てる最大限のプレイングを披露するのは、最大限の相手への敬意の表し方! 違うか?」


 その言葉は、リュウシに響いた。


「……言われてみれば、そうだな…」


 ここで目を瞑った。


(オレは何故か、焦っていた。当たるかもしれないからと、優勝するなら倒さないといけないからと、目の前にいない枝垂に怯えていた…。だが今は亨の言う通り、このバトルに真剣にならないといけないんだ!)


 そして目を開く。


「バトル! オレは《リヴァイムート・ニライカナイ》でお前の《ヒュドラフニール・フォトール》を攻撃!」

「ふむ! 俺は…ブロックはしない」


 これで亨はそのドラゴンを失い、やっと一点のダメージを受けた。《リヴァイムート・ニライカナイ》のドローは強制効果ではないので発動しない。


「まだだ! 《リヴァイムート・レムリア》と《リヴァイムート・ポセイドン》で直接攻撃だ!」

「それは通さん! トリガーカード、《緊急召喚きんきゅうしょうかん》発動! その効果で手札の《ヒュドラフニール・ニューロニア》を場に出し、ブロックで相打ちだ!」

「だが、それで凌げるのは《リヴァイムート・レムリア》の攻撃だけ! 《リヴァイムート・ポセイドン》の攻撃がお前に直撃するぜ!」

「それは、仕方がない…。受けようではないか!」


 これで亨の体力は残り、二十三点。


「では俺のターン! ドローしてエネルギーチャージ。これで九枚か、出せるな…《ヒュドラフニール・アピット》を!」


 大型のドラゴンが場に出た。


「クククク…。一ターンに一度、自身を疲労状態にすることで! 相手のドラゴンを一体破壊し、そのコストの分だけお前のデッキを削る! 俺が選ぶのはもちろん、《リヴァイムート・ニライカナイ》!」


 これが通ったのなら、リュウシのデッキは七枚も失われてしなう。


「させないぜ? オレはトリガーカード、《デストロイアッパー》を発動! 次の俺のアタックステップをスキップする代わりに、ドラゴンを破壊する効果を発動したドラゴンの効果を無効にして破壊だ!」

「……ほう? いいカードを持っていたな?」

「誰かさんが引き直させてくれたからな?」


 亨に言い返せるぐらいには、リュウシの精神面は回復している。


「まあいい。安全は確保されているんだ、俺はターンエンド」

「オレのターン、ドローしてエネルギーチャージ!」


 デッキが二枚減ったが、ここは強く出ないと逆転は不可能。


「コスト九、《リヴァイムート・メガラニカ》を召喚だ!」


 リュウシも大型のドラゴンを繰り出した。


「効果発動! 自身を疲労状態にし、お前の場のドラゴン一体、手札に戻す!」


 亨の場には、《ヒュドラフニール・ササニトン》のみ。それを彼は手札に戻した。ただの遅延行為に見えなくもないが、これは大きな一歩。亨は次のターンに再度同じドラゴンを繰り出すか、それとも他の手を使うかを選ぶ羽目になるからだ。もし別の手段を取るのなら、リュウシにとって一番厄介な《ヒュドラフニール・ササニトン》は場には出ないので、次のターンに安全にドロー効果を使える。


「だが、そう簡単にはいかないのがカードゲーム!」


 しかし彼には、リュウシをもっと追い込む秘策が。


「まずはコスト一のスペルカード、《アタックガーター》を発動! 次に召喚するドラゴンのコストを一下げる。そしてそのドラゴンはこのターン、バトルでは破壊されない! さらに重ね掛け、《アタックスルー》!」


 そして繰り出されるのは、コスト九の《ヒュドラフニール・テトロドックス》。さらに亨はこのバトルで初めて、アタックステップを行う。


「クククククク…《ヒュドラフニール・テトロドックス》でお前の《リヴァイムート・メガラニカ》を攻撃!」


 発動された《アタックスルー》の効果でこれはブロックできないので、通すしかない。そして相打ちにもならないので、リュウシの《リヴァイムート・メガラニカ》が一方的に破壊された。


「この瞬間、《ヒュドラフニール・テトロドックス》の効果発動! バトルで相手のドラゴンを破壊したのなら、そのコスト分、お前のデッキを蝕むのだ!」

「それが狙いだったか!」


《リヴァイムート・メガラニカ》のコストは九。よってそれだけリュウシはデッキのカードを墓地に送らされる。残るデッキは、たったの七枚。


「最後に、《ヒュドラフニール・テトロドックス》はターンの終わりに疲労状態から回復して、ターンエンドだ」

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