しかし、それは引けなかった。カードとの絆が弱くなっているからではなく、デッキが、それを使うことを良しとしなかったのである。
代わりに引いたカードを使う。
「スペルカード、《強制防衛》発動! 次の相手ターンが終わるまでに、ブロック可能なドラゴンは必ずブロックしなければいけない! さらに残った六コストで、《災害竜アップリフト》を召喚! 災害竜が場に出たので一枚ドロー」
そしてアタックステップが始まる。まずは《災害竜タイダル・ウェーブ》の攻撃。これは何で防いでも破壊される。
「…《ビオランドラゴラ・メントール》でブロック!」
「次は、《災害竜サイレントスプリング》! 直接攻撃!」
「それは防げる! 《ビオランドラゴラ・アントシアニン》でブロック!」
「では、《災害竜アップリフト》で攻撃」
「コストは六…。なら、《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》でブロックよ!」
ブロックした《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》は各ターン最初に疲労状態になった場合、一度だけ回復できる。故にこの攻撃に意味がないように見える。しかし、
「破壊された《災害竜アップリフト》の効果! 相手によって破壊された場合、墓地から別の災害竜を場に蘇生させる!」
「で、でも! それは《ビオランドラゴラ・アントシアニン》の効果で一ターンに一度だけ、コストを支払わないでドラゴンを召喚するならエネルギープールに……」
「ここで! われは手札の《災害竜フラッド》の効果発動! 相手のドラゴンの効果が発動した時、これを場に出してその効果を無効にできる!」
「え…!」
だが、この効果で場に出た《災害竜フラッド》は、攻撃することはできない。
「これで安全に、災害竜を墓地から出せるな…。われが呼び戻すのはもちろん……《災害竜ライトニング・ストライク》!」
しかもドラゴンが合計二体場に出たために、枝垂は二枚ドロー。おまけに《災害竜ライトニング・ストライク》の効果も発動し、デッキから災害竜を場に。
「コスト九の《災害竜プレートテクトニクス》を場に! そして一枚ドローし…おっと、《災害竜ストームサージ》を引いた! ので、これを相手に見せて場に出せる! よって、さらに一枚のドローと災害竜のリクルートを行う!」
繰り出すのは、《災害竜アース・クエイク》。まず一枚ドローし、それから蘇生効果とリクルートを発動。墓地から《災害竜サイレントスプリング》を、デッキから《災害竜デフォレステーション》を場に。これでさらに二枚のドロー。また蘇生とリクルートである。
「デッキから《災害竜ファイアストーム》、墓地から《災害竜メテオフォール》! そして二枚ドローし……」
まだ展開は行える。が、ここで枝垂の動きが止まる。
「私はトリガーカード、《枯葉剤》を発動! その効果で、私の場の森のドラゴンを一体…《ビオランドラゴラ・シトロネロル》を破壊する。そして相手の場の、コストを支払わずに場に出したドラゴンも全て破壊!」
「うぐ! ここで、か!」
本当なら、まだ墓地にドラゴンがいるのでそれを吐き出させてからでも良かった。だが、ドローし続けるのは心地よくない。よってこの辺で打ち止めさせる。
効果処理としては、《災害竜メテオフォール》が蘇生し、それに対して《災害竜タイダル・ウェーブ》の効果が発動した瞬間に打った。ので、さらなる蘇生とリクルートの前に《枯葉剤》の効果が適用される。また、場に残っていなければドラゴンの効果は発動できても処理されないので、効果の処理後にドラゴンが出てくることもない。
「だからあなたの…《災害竜ランドスライド》以外のドラゴンは全て破壊!」
一気に十体のドラゴンが破壊された。災害竜、壊滅的打撃。そして残された《災害竜ランドスライド》は、攻撃できないドラゴン。よって枝垂はこのターン、もう終わらせるしかない。
「だが手札は、十一枚! これでそなたのターンを防いでみせようぞ!」
「ところが、そういうわけにもいかない! 私はさらにトリガーカード、《間引き》も発動!」
それは、相手の手札を自分と同じ枚数にさせるカード。今、菖蒲の手札はたったの一枚。よって枝垂は十枚ものカードを捨てなければならないのだ。
「………この一枚を残し、残りは墓地か…」
序盤に手札に加えていた《災害竜ダウンバースト》も、更なる展開の起点にしようとしていた《災害竜フォトンベルト》も墓地へ。場だけではなく、手札もボロボロ。
(済まぬ、災害竜たちよ……。われが甘かった。このターンで決めれると思ったが、それは愚かな選択であった…)
そしてターンは菖蒲に移る。場には生き残った《ビオランドラゴラ・アントシアニン》と《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》がいる。しかしこの二体は《災害竜ランドスライド》にコストで負けているため、攻撃はできない。
「私は、コスト十! 《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》を召喚。効果で相手のドラゴンを一体、エネルギープールに送る!」
枝垂の場には、《災害竜ランドスライド》のみ。それをエネルギープール送りにされた。
「さあバトル! 《ビオランドラゴラ・アントシアニン》と《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》で直接攻撃!」
一気に十八点のダメージが枝垂を襲った。これで残りの体力は十一点。
(い、行ける! 勝てる…! 今はまさにその流れ!)
菖蒲は自分の勝利を確信した。唯一の懸念材料は、枝垂の手札がトリガーカードでドラゴンを展開できる場合。
(でも、《ビオランドラゴラ・アントシアニン》……効果は一ターンに一度しか使えないけど、一度に二体以上ドラゴンが出てもそれらをエネルギープールに送れる! このバトル、勝てる!)
勝利が近い。そう感じると、胸の鼓動が高鳴る。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!