「ここから行くぜ! オレのターン、ドロー! そしてエネルギーチャージ!」
召喚するのは、《リヴァイムート・ニライカナイ》。コスト七の大型ドラゴンである。
「バトルだ、相場! オレは《リヴァイムート・ニライカナイ》で《ドラゴニュート・アロー》に攻撃!」
「……《ドラゴニュート・シールド》でブロックだ…」
攻撃は通らなかった。
「だが今、《リヴァイムート・ニライカナイ》はバトルでお前のドラゴンを破壊したよな? その効果で破壊されたドラゴンのコスト分、カードをオレは引くぜ!」
一気に五枚ものカードがリュウシの手札に舞い込む。
(き、来た…!)
切り札を引き当てたリュウシ。
「そして、《リヴァイムート・レムリア》で《ドラゴニュート・アロー》へ攻撃!」
「それは、《ドラゴニュート・トンファー》でブロックだ!」
「だがこれで邪魔なドラゴンは消えた! 一気に潰す! 《リヴァイムート・ネプチューン》で今度こそ!」
もう防げるドラゴンはいない。よって相場は《ドラゴニュート・アロー》をついに失った。
ここでリュウシは、一瞬迷う。
(今、相場の場はがら空き。《リヴァイムート・キャンサー》で直接攻撃して体力を減らしておくべきか…? だがさっきみたいに《ウェポンリクルート》があると……)
だが、同時に思う。
(ここで引くのは男じゃないぜ!)
躊躇ことなく宣言する。
「《リヴァイムート・キャンサー》で、お前に直接攻撃だ!」
「たかが三点、くれてやる」
相場、残り体力二十一点。
「よし!」
「よし? それは違うなあ? 俺はトリガーカード、《ウェポンマックス》を発動だ」
しかし、止まっておけば良かったのである。
「その効果! 俺が直接攻撃を受けた時に発動! まずはお前のドラゴン一体を破壊する。選ぶのは…《リヴァイムート・ニライカナイ》!」
コストの大きさ及び効果を吟味すれば、それ一択である。
「そして今破壊したドラゴンのコスト! 俺のデッキからドラゴニュートを、その合計以下になるように場に出せる!」
「な、何と!」
コストは七。よって相場は、
「行くぜ…? 俺は《ドラゴニュート・サーベル》、《ドラゴニュート・ランス》、《ドラゴニュート・アロー》の三体だ!」
一気に三体のドラゴンを場に出した。コストの合計は七ちょうどなので、問題はない。
「あっという間に、また場にドラゴンを呼び出した?」
これにはこのバトルを見ている客たちも騒ぐ。
「大丈夫なの、リュウシ?」
菖蒲は心配そうな視線とセリフをリュウシに投げかけた。
「………まあ、な」
ワザと曖昧な返事をする。
「俺はターンエンド」
「へ! 俺のターンだ! さっきお前によって手札に戻された《ドラゴニュート・ハンマー》を再び召喚!」
まだ、相場のエネルギープールにはカードが三枚残っている。それを疲労させて新たなドラゴンを呼び出すのだ。
「《ドラゴニュート・ソード》を召喚!」
コストは《ドラゴニュート・ハンマー》と同じだが、これは自分の他のドラゴニュートが相手に与えるダメージを一点多くする効果を持つ。
「へへへ! まずは《ドラゴニュート・ランス》でお前の《リヴァイムート・キャンサー》に攻撃だ! こっちの元々のコストは下だが、《ドラゴニュート・ハンマー》で倍化!」
よって、リュウシに一点、《ドラゴニュート・ソード》でさらに一点、合計二点のダメージ。しかもそれだけではない。
「今、バトルでお前のドラゴンを《ドラゴニュート・ランス》は破壊したな? その時! 俺の墓地のドラゴニュートを一体、疲労状態で場に出せる。もちろん選ぶのは……《ドラゴニュート・シールド》!」
コストは低いが、決まれば効果は強力。これで相場は再び、強固な盤面を取り戻した。
「さあ、次は! 《ドラゴニュート・サーベル》と《ドラゴニュート・アロー》で直接攻撃だ!」
さらに今の攻撃で、七点も体力を持って行かれる。あっという間に十一点しか残っていない。
「うぐっ! これは堪えるぜ…! でもオレは、二枚目の《リベンジチャンス》を発動だ。選ぶ効果はエネルギーチャージ!」
「…まあいい。今ので決定的に差がついた。俺はこれでターンエンドだ」
この猛攻、次のターン以降は来ない。リュウシのドラゴンが疲労状態から回復し、攻撃しなければブロックできるからである。だが《ドラゴニュート・アロー》の三度目の直接攻撃が来ると、リュウシの敗北は免れない。
(生き残った《リヴァイムート・レムリア》と《リヴァイムート・ネプチューン》はもう、他のドラゴンのブロックに回すしかない。となると………出すか!)
回ってきたリュウシのターンにそれは降臨する。
「エネルギープールには、十一枚のカードがある。オレはその内の十枚を疲労!」
(コスト十! カード・オブ・ドラゴンのコスト上限も十……。超大型ドラゴンが来るか!)
相場は予感する。
「行く手を阻む水流は、留まることを知らない。今、渦巻く海が船をも沈める! 出現せよ、《リヴァイムート・サルガッソー》!」
その予感は的中することになる。だが、
「出やがったか…」
言うほど驚いてはいない。
(コスト十じゃあよ、《ドラゴニュート・シールド》で相打ちに持ち込める…)
そう考えていると、リュウシが、
「バトルだ! 《リヴァイムート・サルガッソー》で《ドラゴニュート・アロー》へ攻撃!」
「馬鹿め! 俺はもちろん《ドラゴニュート・シールド》でブロック! そしてそのバトルの時、《ドラゴニュート・ハンマー》の効果でコストは倍に……!」
「それはどうかな?」
「何だと?」
ここでリュウシは、《リヴァイムート・サルガッソー》の効果を告げる。
「このドラゴンは自分の他のリヴァイムートの数だけ、場にいる間コストが上がる!」
「ま、まさか…!」
相打ちではない。コストが二上がっている《リヴァイムート・サルガッソー》が一方的に勝つのだ。
「まさか、《ドラゴニュート・シールド》が負けただと……」
「傷心のところ、悪いなあ! 《リヴァイムート・ネプチューン》で《ドラゴニュート・アロー》へ攻撃するぜ!」
この攻撃を《ドラゴニュート・ハンマー》か《ドラゴニュート・ソード》でブロックする手もある。だが相場は、その二体を失いたくはない。場にいるだけで効果を発揮できるドラゴンだからだ。
「……クソが!」
《ドラゴニュート・アロー》は破壊。相場は二点のダメージを受けて、残り体力は十九点。
「これでオレのターンは終了だが、それだけじゃないぜ?」
「何だと?」
リュウシは、疲労状態の《リヴァイムート・サルガッソー》を回復させた。
「オレのターンが終わると、疲労状態から回復できるのさ!」
攻守を兼ね備えたドラゴン。それが《リヴァイムート・サルガッソー》である。
(コイツめ、一見すると後手後手に回っているようだが、確実に俺との間合いを詰めて着てやがる! このターン、プレイングに隙がなかった!)
実はこの時、相場の手札には先ほど猛威を振るった《ウェポンマックス》があった。もしリュウシが直接攻撃をしていたら発動し、《リヴァイムート・サルガッソー》を破壊、コスト合計が十二になるようにデッキからドラゴニュートをリクルートできた。それをリュウシは回避したのだ。
「俺のターンだ、ドロー。そしてエネルギーチャージ…!」
ここで相場には、迷いが生じる。
(もうリュウシの残り体力は十一点。ならば全力で攻めてもいいか……)
その迷いが、このゲームの行方を左右することになるとも知らずに。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!