カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 4

公開日時: 2020年9月1日(火) 15:00
文字数:2,987

「ここから行くぜ! オレのターン、ドロー! そしてエネルギーチャージ!」


 召喚するのは、《リヴァイムート・ニライカナイ》。コスト七の大型ドラゴンである。


「バトルだ、相場! オレは《リヴァイムート・ニライカナイ》で《ドラゴニュート・アロー》に攻撃!」

「……《ドラゴニュート・シールド》でブロックだ…」


 攻撃は通らなかった。


「だが今、《リヴァイムート・ニライカナイ》はバトルでお前のドラゴンを破壊したよな? その効果で破壊されたドラゴンのコスト分、カードをオレは引くぜ!」


 一気に五枚ものカードがリュウシの手札に舞い込む。


(き、来た…!)


 切り札を引き当てたリュウシ。


「そして、《リヴァイムート・レムリア》で《ドラゴニュート・アロー》へ攻撃!」

「それは、《ドラゴニュート・トンファー》でブロックだ!」

「だがこれで邪魔なドラゴンは消えた! 一気に潰す! 《リヴァイムート・ネプチューン》で今度こそ!」


 もう防げるドラゴンはいない。よって相場は《ドラゴニュート・アロー》をついに失った。

 ここでリュウシは、一瞬迷う。


(今、相場の場はがら空き。《リヴァイムート・キャンサー》で直接攻撃して体力を減らしておくべきか…? だがさっきみたいに《ウェポンリクルート》があると……)


 だが、同時に思う。


(ここで引くのは男じゃないぜ!)


 躊躇ことなく宣言する。


「《リヴァイムート・キャンサー》で、お前に直接攻撃だ!」

「たかが三点、くれてやる」


 相場、残り体力二十一点。


「よし!」

「よし? それは違うなあ? 俺はトリガーカード、《ウェポンマックス》を発動だ」


 しかし、止まっておけば良かったのである。


「その効果! 俺が直接攻撃を受けた時に発動! まずはお前のドラゴン一体を破壊する。選ぶのは…《リヴァイムート・ニライカナイ》!」


 コストの大きさ及び効果を吟味すれば、それ一択である。


「そして今破壊したドラゴンのコスト! 俺のデッキからドラゴニュートを、その合計以下になるように場に出せる!」

「な、何と!」


 コストは七。よって相場は、


「行くぜ…? 俺は《ドラゴニュート・サーベル》、《ドラゴニュート・ランス》、《ドラゴニュート・アロー》の三体だ!」


 一気に三体のドラゴンを場に出した。コストの合計は七ちょうどなので、問題はない。


「あっという間に、また場にドラゴンを呼び出した?」


 これにはこのバトルを見ている客たちも騒ぐ。


「大丈夫なの、リュウシ?」


 菖蒲は心配そうな視線とセリフをリュウシに投げかけた。


「………まあ、な」


 ワザと曖昧な返事をする。


「俺はターンエンド」

「へ! 俺のターンだ! さっきお前によって手札に戻された《ドラゴニュート・ハンマー》を再び召喚!」


 まだ、相場のエネルギープールにはカードが三枚残っている。それを疲労させて新たなドラゴンを呼び出すのだ。


「《ドラゴニュート・ソード》を召喚!」


 コストは《ドラゴニュート・ハンマー》と同じだが、これは自分の他のドラゴニュートが相手に与えるダメージを一点多くする効果を持つ。


「へへへ! まずは《ドラゴニュート・ランス》でお前の《リヴァイムート・キャンサー》に攻撃だ! こっちの元々のコストは下だが、《ドラゴニュート・ハンマー》で倍化!」


 よって、リュウシに一点、《ドラゴニュート・ソード》でさらに一点、合計二点のダメージ。しかもそれだけではない。


「今、バトルでお前のドラゴンを《ドラゴニュート・ランス》は破壊したな? その時! 俺の墓地のドラゴニュートを一体、疲労状態で場に出せる。もちろん選ぶのは……《ドラゴニュート・シールド》!」


 コストは低いが、決まれば効果は強力。これで相場は再び、強固な盤面を取り戻した。


「さあ、次は! 《ドラゴニュート・サーベル》と《ドラゴニュート・アロー》で直接攻撃だ!」


 さらに今の攻撃で、七点も体力を持って行かれる。あっという間に十一点しか残っていない。


「うぐっ! これは堪えるぜ…! でもオレは、二枚目の《リベンジチャンス》を発動だ。選ぶ効果はエネルギーチャージ!」

「…まあいい。今ので決定的に差がついた。俺はこれでターンエンドだ」


 この猛攻、次のターン以降は来ない。リュウシのドラゴンが疲労状態から回復し、攻撃しなければブロックできるからである。だが《ドラゴニュート・アロー》の三度目の直接攻撃が来ると、リュウシの敗北は免れない。


(生き残った《リヴァイムート・レムリア》と《リヴァイムート・ネプチューン》はもう、他のドラゴンのブロックに回すしかない。となると………出すか!)


 回ってきたリュウシのターンにそれは降臨する。


「エネルギープールには、十一枚のカードがある。オレはその内の十枚を疲労!」


(コスト十! カード・オブ・ドラゴンのコスト上限も十……。超大型ドラゴンが来るか!)


 相場は予感する。


「行く手を阻む水流は、留まることを知らない。今、渦巻く海が船をも沈める! 出現せよ、《リヴァイムート・サルガッソー》!」


 その予感は的中することになる。だが、


「出やがったか…」


 言うほど驚いてはいない。


(コスト十じゃあよ、《ドラゴニュート・シールド》で相打ちに持ち込める…)


 そう考えていると、リュウシが、


「バトルだ! 《リヴァイムート・サルガッソー》で《ドラゴニュート・アロー》へ攻撃!」

「馬鹿め! 俺はもちろん《ドラゴニュート・シールド》でブロック! そしてそのバトルの時、《ドラゴニュート・ハンマー》の効果でコストは倍に……!」

「それはどうかな?」

「何だと?」


 ここでリュウシは、《リヴァイムート・サルガッソー》の効果を告げる。


「このドラゴンは自分の他のリヴァイムートの数だけ、場にいる間コストが上がる!」

「ま、まさか…!」


 相打ちではない。コストが二上がっている《リヴァイムート・サルガッソー》が一方的に勝つのだ。


「まさか、《ドラゴニュート・シールド》が負けただと……」

「傷心のところ、悪いなあ! 《リヴァイムート・ネプチューン》で《ドラゴニュート・アロー》へ攻撃するぜ!」


 この攻撃を《ドラゴニュート・ハンマー》か《ドラゴニュート・ソード》でブロックする手もある。だが相場は、その二体を失いたくはない。場にいるだけで効果を発揮できるドラゴンだからだ。


「……クソが!」


《ドラゴニュート・アロー》は破壊。相場は二点のダメージを受けて、残り体力は十九点。


「これでオレのターンは終了だが、それだけじゃないぜ?」

「何だと?」


 リュウシは、疲労状態の《リヴァイムート・サルガッソー》を回復させた。


「オレのターンが終わると、疲労状態から回復できるのさ!」


 攻守を兼ね備えたドラゴン。それが《リヴァイムート・サルガッソー》である。


(コイツめ、一見すると後手後手に回っているようだが、確実に俺との間合いを詰めて着てやがる! このターン、プレイングに隙がなかった!)


 実はこの時、相場の手札には先ほど猛威を振るった《ウェポンマックス》があった。もしリュウシが直接攻撃をしていたら発動し、《リヴァイムート・サルガッソー》を破壊、コスト合計が十二になるようにデッキからドラゴニュートをリクルートできた。それをリュウシは回避したのだ。


「俺のターンだ、ドロー。そしてエネルギーチャージ…!」


 ここで相場には、迷いが生じる。


(もうリュウシの残り体力は十一点。ならば全力で攻めてもいいか……)


 その迷いが、このゲームの行方を左右することになるとも知らずに。

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