場のドラゴンを全て失った菖蒲としては、この返しのターンで何とかしたい。既にエネルギープールには、このターンのスタートステップで九枚目のカードが置かれる。
「召喚! 《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》! そして《エクスティンクション・ラプトルジャー》に攻撃!」
この攻撃は通った。絢音はドラゴンを失ってさらに七点のダメージ。本来のコストの差は六だが、《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》は自分と相手のエネルギープールの枚数の差だけコストが上がるためである。
「でもトリガーカード、《化石の記憶》を発動です」
墓地のエクスティンクションを全て、自分のエネルギープールに送る強力なカードだ。発動条件は自分の場にドラゴンが存在しないことだが、さっきの攻撃で勝手に満たせたので発動。その効果で二体のドラゴンが墓地からエネルギープールへ。
「そして、私のターンですね! ドローしエネルギーチャージ!」
まずはドラゴンの召喚。今度はコスト四の《エクスティンクション・プテラニンバス》。
(この場面で、そんなドラゴン? 打つ手がないの?)
コストの差では、完全に《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》の方が上だ。だが、まだ絢音のエネルギープールには使われていないカードが七枚存在している。
「ここで、スペルカード発動…《化石の復元》! その効果で《エクスティンクション・プテラニンバス》を私のエネルギープールへ! そして私はエネルギープールから、エネルギープールの合計枚数以下のコストを持つ…つまり十二以下のエクスティンクションを場に!」
「ま、まさか!」
そう、そのまさか。ここでエネルギープールに送っておいた切り札を場に呼び出すのだ。
「古の時代を統べる暴君よ、今、この時代に甦れ! 《エクスティンクション・ティラグーン》!」
そして繰り出された、絢音の切り札。
「では、その効果を使います」
このターン、さっき発動された《化石の復元》のデメリットにより、菖蒲にはダメージが発生しない。だから攻撃ではなく、疲労状態にすることで発動できる効果を使う。
「自身を疲労状態にし! 相手の手札とエネルギープールのカードを選択! その二枚を墓地へ!」
「う、うわっ!」
ハンデスとランデスを同時に撃ち込む凶悪な効果。
(あのドラゴンはヤバい! 絶対に返しのターンで除去しないと…!)
そう思わせるには十分すぎる。そして慌てて菖蒲は自分のターンに移行。コスト八の《ビオランドラゴラ・ビサボレン》を召喚した。
(今、エネルギープールのカードは私が九枚、絢音が十一枚。差は二…それだけ《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》のコストは上がっている。この攻撃で撃破できる!)
迷うことはない。《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》で《エクスティンクション・ティラグーン》を攻撃した。コストは《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》が上回っているので、当然絢音へ二点のダメージ。これで残り体力は二十一点。
だが、肝心の《エクスティンクション・ティラグーン》が何故か場に残っている。
「どうして破壊されないの?」
「場をよく見てください」
言われた通りに見てみると、何と自分の場の《ビオランドラゴラ・ビサボレン》が消えている。
「一体何が…起きたの?」
「これが、《エクスティンクション・ティラグーン》なのです! 破壊される場合、代わりに他のドラゴンが身代わりとなるのです……つまり暴君には触れることは許されない!」
厄介な破壊耐性も持ち合わせたドラゴンだったのだ。バトルで負けた時に破壊が生じるのだが、それを他のドラゴンに押し付けることで自分の破壊をなかったことにする効果。
「そ、そんな…」
「では、私のターンに入りましょう。エネルギーチャージはしません。コスト八の、《エクスティンクション・ディメトロレドーム》を召喚します。そしてバトル! 《エクスティンクション・ティラグーン》であなたの《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》に攻撃!」
この攻撃が通ると、バトルでは負けているので、絢音は二点のダメージをまた受ける。だが、《エクスティンクション・ティラグーン》の破壊は他のドラゴンに押し付けることになる。
「…仕方がない! 《ビオランドラゴラ・フキコサンチン》の効果発動! エネルギープールのカード一枚を墓地に送って、相手のドラゴンの攻撃を無効に…」
「おおっと? させませんよ? 《エクスティンクション・ディメトロレドーム》の効果! 相手のドラゴンの効果が発動した時、自身を疲労状態にすることで、その効果を、相手の場の最もコストが高いドラゴンを破壊する、に上書きします!」
「そんな!」
このコンボによって、もちろん《エクスティンクション・ティラグーン》は破壊されることはなく、菖蒲のドラゴンが肩代わりさせられたことになるのは言うまでもない。
「攻撃は続行します! 直接攻撃!」
十点のダメージを受け、菖蒲の残り体力は十七点。
「トリガーカード、《グリーンソウル》発動……。デッキ上を二枚めくり、片方をエネルギープール、もう片方を手札に!」
サーチとエネルギーチャージを兼ね備えるカード。これで逆転できるカードを引き込もうという算段。
(よ、よし!)
一方は、《ビオランドラゴラ・スクアレン》。この場面では役に立たないので、これをエネルギープールに置く。
「あなたのターンですよ」
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