このスタートステップ、《サラマンフリート・プロミネンス》は疲労状態なので効果は発動しない。そして引いたのは《サラマンフリート・ステラー》。本来なら、ブロックでも相手にダメージを与えられるカードだが、コストが上がるカードを出されているために自分の首を絞めかねないカードになっている。
(これは出せない……。となると、こっちか?)
少し迷った後、輝明は《サラマンフリート・バーナー》を召喚し、効果を使って自身のコストを二上げ、八とした。
「おい、何を考えている…?」
ここで、枝垂が口を開いた。
「何って、どのドラゴンならこの状況を打開できるか考えて……」
「違う。今のそなたからは、闘志が感じられぬ。その瞳からは状況の打開ではなく、何とかして防ごうというその場しのぎの発想しか伝わってこない」
「だが、俺は最善の選択を……」
「われが手札に加えたカードを忘れたか?」
「え……?」
ターンは枝垂に移り、
「われはコスト五、《災害竜パンデミック》を召喚。効果発動、サイコロを二個振り、出目の合計分、このターン相手の場のドラゴンのコストを下げる」
「あ!」
出目の合計は、九。よって輝明の場のドラゴンは全滅。
「では、こちらからも攻めてみるか。《災害竜ウルトラプリニー》で直接攻撃じゃ」
先制したのは、枝垂。五点のダメージを輝明に与えた。
「われのターンは以上じゃ」
「お、俺のターン……」
この時、輝明はあるカードを引く。
(《サラマンフリート・ムスプルヘイム》……! 俺のデッキの切り札! だが、今はまだエネルギープールにはカードが八枚。当然召喚できない………)
普通に考えるなら、無駄なドローである。だが、
(いや、違う! このカードを引いた意味を考えろ! デッキが俺に語り掛けてるんじゃないのか……? 勝負はまだ始まったばかりだ、と!)
輝明にとってそれは、転換のキッカケ。
(そうだ…! 俺が諦めてどうする! それは今まで倒してきた対戦相手に失礼じゃないか! 俺がここに立っている意味は! 彼らの代わりに枝垂に勝つ! 弱気になるために俺はカードを握っているんじゃない! 勝つためだ!)
甦る闘志、瞳の炎。
(目が覚めたか……)
枝垂は輝明の目の色を見ることで、それを察した。
「俺は《アタックスルー》を発動! 次に俺がドラゴンを召喚する時、一コスト下げられる。そしてそのドラゴンはコスト五以下でも攻撃することができ、このターンはブロックされない!」
そして召喚するのは、《サラマンフリート・マーズ》。
「バトル! 俺は《サラマンフリート・マーズ》でお前の《災害竜ウルトラプリニー》に攻撃だ!」
ブロックはできないので、攻撃は通る。そして《災害竜ウルトラプリニー》を破壊し、枝垂に一点のダメージ。
「たかが一点かもしれない。お前からすれば痛くも痒くもないかもしれない! だがな枝垂! 俺にとってこの一点は、勝利への種火! ここからドンドン燃えていく!」
「らしいな……」
枝垂のターンが始まる。まずは《災害竜パンデミック》の効果を発動。出目が八以上なら《サラマンフリート・マーズ》を除去できるが、
「二……?」
サイコロは両方とも、一の目を出した。
(傾いているのかもしれんな、ゲームが輝明の方へ…! だが……)
最悪の目だが、冷静に対処するまで。
「《災害竜フォレストファイア》を召喚! 召喚時に効果発動!」
相手のエネルギープールを一枚墓地に送るという、いわゆるランデス効果。
「墓地に置いても大した脅威にならなさそうなカード……そうだな、《サラマンフリート・スパークス》を墓地へ」
「削られたか…!」
そしてアタックステップに移行。《災害竜フォレストファイア》が《サラマンフリート・マーズ》に攻撃してくる。
「それは! 《レッドトリップ》を発動し、無効だ!」
手札から《サラマンフリート・ムスプルヘイム》を捨てたので、そのコスト……十を場の《サラマンフリート・マーズ》に加算。
(今は、捨ててしまっている。でも大丈夫だ! 俺のデッキなら、墓地からでもドラゴンを出せる)
そして返しの輝明のターン。枝垂のターンが終わったことで、《災害竜パンデミック》の効果も切れ、元々のコストが戻る。
「十八、か……」
大きさの割に、枝垂は焦っていない。ブロックしてしまえば無意味と化すからだ。
「いや、違う! 俺は《サラマンフリート・ステラー》を召喚!」
「むむぅ!」
その効果は枝垂も知っている。
「バトル! 俺は《サラマンフリート・マーズ》で《災害竜フォレストファイア》に攻撃!」
これを通せば、十点のダメージ。しかし《災害竜ゲリラレイン》でブロックしても十点。
「……《ブロッサムシード》を発動! これで《災害竜フォレストファイア》を、われのエネルギープールへ移動」
「なら、直接攻撃だ!」
「まだじゃ! トリガーカード、《ブロッキング・ディザスター》を発動! われの災害竜を一体破壊する代わりに、その攻撃を無効に!」
攻撃を無効にすることで、枝垂は凌いだ。だが、無効になった場合は、サラマンフリートの共通効果は発動せず、コストは下がらない。
(破壊したのは、《災害竜パンデミック》か。確かに《サラマンフリート・マーズ》がいると、他のサラマンフリートのコストが下がると、その分自分のコストが上がってしまう。さっきの出目は最悪だったんだし、当然か…)
《サラマンフリート・ステラー》で攻撃はせず、ターン終了。
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