ついに三回戦は、あと二試合しかない。
「も、もしかしたら…」
菖蒲はその、まさかを想像する。自分とリュウシが戦うかもしれない。
「オレはそれでも構わないぜ? その時はお互いに全力を出して、バトルするだけだ!」
「そうじゃなくて!」
実は、菖蒲にはできればリュウシとは戦いたくない理由があった。
それは、勝率の問題。菖蒲とリュウシはお互いのデッキの隅まで知り尽くすくらいに戦ったことがあるが、それでも彼女は負け越しているのである。感覚として、菖蒲が勝てるのは三割だろうか。純水にリュウシの方がプレイが上手いのだ。
今、控室に残っているドラゴンテイマーは、六人。内、枝垂と輝明は既に三回戦を終えているので、彼女らを除けば四人。この少ない人数では、身内とあたることは十分にあり得る。
しかし、そんな心配を撤去してくれる出来事が。控室に来た係員は、リュウシには声をかけず、菖蒲のことを呼んだ。
(ホッ! 次の対戦相手は、リュウシじゃない!)
そしてこの時安心できたおかげか、菖蒲は落ち着きを取り戻して会場に向かえた。
「さあ会場の皆様! 三回戦第三試合! 城ケ崎菖蒲選手対、庄子絢音選手! では早速試合を見ていきましょう!」
対戦相手は、二十歳の女性だ。
「よろしくお願いいたしますっ」
丁寧に握手を交わすと、ゲームの準備を始める。
勝負開始。先に動いたのは菖蒲の方だ。《ビオランドラゴラ・メントール》を場に出してエネルギープールの枚数を増やした。が、
「私も、《エクスティンクション・ラプトルジャー》を召喚します。効果でエネルギーチャージを行います」
絢音も森のドラゴンを繰り出し、テンポアドバンテージの差を埋めて来る。返しのターンに菖蒲は、
(もう少し、様子を見てみよう…)
そう思い、コスト五のドラゴンではなく四の《ビオランドラゴラ・カンファー》を出した。
「これでターンエン…」
「待って! 私はトリガーカードを使います。《魅惑の化石》…その効果でデッキからエクスティンクションを一枚選び、自分のエネルギープールに加えます」
絢音が選んだのは、コスト十の《エクスティンクション・ティラグーン》。【エクスティンクション】に置ける切り札だ。
「……相手がカードの効果でエネルギープールにカードを置いた時、《ビオランドラゴラ・カンファー》の効果で私も同じ数だけエネルギーチャージを行う」
デッキの一番上のカードをエネルギープールに加える。これで次のターンにはコスト七のドラゴンを召喚できる。だが彼女は他のことを考えていた。
(いきなり切り札を、エネルギープールに落とした…。もしやそこから直接出すつもり?)
デッキか墓地のカードを手札に加えることは容易い。だがエネルギープールのカードを手札に戻すとなると、手間がかかりやすい。そんなデメリットを承知で、絢音は切り札を落としたのだろうか?
(でも、出される前に倒せば!)
これで菖蒲のターンは終了。
「では、私のターンですね! コスト五、《エクスティンクション・アンキロモス》を召喚です」
攻撃は行えないが、疲労状態でもブロックできるドラゴンだ。絢音は守りを固めた。
「私のターン、ドロー! そしてエネルギーチャージ!」
出し惜しみをする意味はないので、コストの高いドラゴンを出して攻める。《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》を召喚した。
「アタックステップ! 私は《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》で直接攻撃!」
「それは、《エクスティンクション・アンキロモス》で防ぎます」
コストで負けている《エクスティンクション・アンキロモス》は破壊される。この時絢音は攻撃側のドラゴンの効果を使用せず、それを墓地に送った。
「よし、《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》は各ターン、最初に疲労状態になっ……」
「《エクスティンクション・アンキロモス》の効果発動です。バトルした相手のドラゴンをエネルギープールに送ります」
せっかく出した大型のドラゴンはすぐに排除されてしまった。
「でも、エネルギープールのカードは増えた。他のドラゴンで攻撃はしないでターンエンド」
「私のターンです」
コスト七の《エクスティンクション・パラザウラー》を絢音は召喚。そして攻撃に移る。
「このドラゴンは疲労状態でない相手のドラゴンに攻撃できます。だから攻撃先は、《ビオランドラゴラ・メントール》!」
「それは、《ビオランドラゴラ・カンファー》でブロック!」
ブロックならダメージは受けない。だから菖蒲はその攻撃を防いだ。が、
「でも、効果までは防げません。《エクスティンクション・パラザウラー》がバトルで相手のドラゴンを破壊した時、相手の他のドラゴンを一体破壊できます。あなたの場に残っているドラゴンは、《ビオランドラゴラ・メントール》。よってそれを破壊!」
一気に場の二体のドラゴンが吹っ飛んだ。そして後続の《エクスティンクション・ラプトルジャー》の直接攻撃を菖蒲はくらう。三点だが体力を食われた。
「と、トリガーカード発動! 《ハエジゴク》の効果で私のエネルギープールのカードの枚数以下のコストの相手のドラゴンを一体、エネルギープールへ! 選ぶのは《エクスティンクション・パラザウラー》!」
「それは防げないので、仕方ないですね…。私はターンを終了します」
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