カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 11

公開日時: 2020年9月3日(木) 13:00
文字数:2,589

「え?」


 そして菖蒲は、今までの行為の意味を知ることになる。


「私のターン! ドローしてエネルギーチャージ!」


 何故今まで喬子は、カードを墓地に送っていたのか。それは簡単だ。


「このドラゴンを場に出す場合、墓地に五種類以上霊骸竜がいないと駄目! だから送っていたのよ! 召喚! 《死霊骸竜しれいがいりゅうグレイブ・アポカリプス》!」


 厳しいを条件を満たすためだ。


「こ、コストは……二?」


 この場で出されたそのドラゴンのコストはたったの二である。異様すぎる。


「でもまだ私のエネルギープールには、疲労してないカードが五枚。だからスペルカードを使わせてもらうわよ! 発動、《カースドドライブ》! その効果でこのターンに場に出た《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》は攻撃が可能! さらに私はこのターン一切のダメージを受けない!」


 そしてアタックステップに移行。


「バートール! 私は《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》で《ビオランドラゴラ・ビサボレン》に攻撃!」


(ま、また自爆特攻…?)


 菖蒲でなくてもそう考えるだろう。


「違うわよ~? 《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》の効果! バトルでダメージが生じた場合、あなたも受けるのよ? おまけにバトルでは破壊されない!」

「う、うわあ!」


 一気に六点も、持って行かれた。


「《霊骸竜ギルティクロー》はバトルしないで…ターンエンド!」


 菖蒲のターン。反撃に移らなければいけないことは自覚している。だが、


(手札には…あのドラゴンを除去できるカードがない…。こういう場合は…)


 仕方なく、壁となるドラゴンを展開。エネルギープールは九枚と十分に貯まっているので、二体以上繰り出すことには苦労しない。


「私はコスト五の《ビオランドラゴラ・スクアレン》とコスト四の《ビオランドラゴラ・カンファー》を召喚して、ターンエンド…」


 ブロックした際にはバトルは行われるが、ダメージは生じない。だから《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》で攻撃されてもお互いにダメージは受けない。

 だが、この【霊骸竜】デッキを極めている喬子がそのことを忘れているはずもない。


「私はコスト三のスペルカード発動! 《イービルバトル》! これでブロックでもバトルダメージが発生することになるわよ~?」


(やはり、持っていた…。そういうカードを! でも《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》のコストはたったの二…。そんなのブロックする必要もない…)


 しかし、菖蒲の思うようにはいかない。


「まだ! 残ったコストで私は、もう一枚のスペルカード《強制防衛きょうせいぼうえい》発動だわ~!」


 それは、ブロックを強制するカードだ。


「じゃあ、行くわ? 《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》で、直接攻撃! 誰でブロックするのかな~?」


 ここはコストが一番低いカードで守るのが当然だ。しかし菖蒲は、


「《ビオランドラゴラ・ビサボレン》でブロック!」

「む?」


 これに喬子は驚いた。


「ちょっと舐めてるの? あなたにもダメージが行くのよ? ここはコストが一番小さい《ビオランドラゴラ・カンファー》で……」

「そんな小っちゃいこと言ってたら、いつまで経っても勝てない! 相手にもダメージを与えられるなら、ここはその最大値を狙う!」


 菖蒲の決意は固い。このバトルでお互いに六点のダメージ。残り体力、菖蒲は十八点、喬子は十一点。


「へえ? 結構やるじゃない?」


 その行為に感心する喬子。心地よくターンを渡した。


「私のターン!」


 強気な口調でドローをするが実際には、


(お願い、来て! この状況を打開できるカード!)


 その思いとは裏腹に、強いカードは引けなかった。続くエネルギーチャージで、コスト十のカードがエネルギープールに落ちる。


「あらあら~? それ、重要なカードじゃないの? エネルギープールに行っちゃったら、もう無駄…」

「それは違う! 私は《ビオランドラゴラ・ビサボレン》の効果を適用する! その効果で私はコストを支払えば、エネルギープールからビオランドラゴラを場に出せる!」

「何ですって?」


 エネルギープールのカードこそ減ってしまうが、今はそんなことを言っている暇ではない。


「風よ木よ、自然を穢す者に鉄槌を与えよ! 《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》!」

「こ、コスト十…。本当にエネルギープールから出しやがったわ…!」


 ただしこの効果でエネルギープールから出たドラゴンは、相手のターンが終わるとエネルギープールに戻る。


「《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》の効果発動! 場に出た時、相手のドラゴン一体選び…」

「あら? もし破壊するってなら、《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》は無駄よ? 私の体力が十五以下なら、効果でも破壊されな…」

「破壊はしない! エネルギープールにそれを送る!」

「な、んにゃろ~!」


 厄介なドラゴンを場から退けることに成功。これで一気に攻め込める。


「喬子! 君の残り体力は十一点! どうやら自分で減らし過ぎたようだね? 私の場のドラゴンで猛攻をかければ、それで終わり!」


 しかも前のターンに発動された《イービルバトル》の効果で、ブロックしてもダメージが発生する状況。


「……と、なることも想定済みでした~! 私はトリガーカード《デススキップ》発動! 私の場のドラゴンが全滅する代わりに、相手はこのターン、アタックステップを行えない!」

「……でしょうね? 私はターンエンド」


 喬子のターン。彼女はエースのドラゴンを失って、しかも場には《霊骸竜ギルティクロー》一体のみ。だがこんな絶望的な状況でも笑っていられるのが、喬子の恐ろしいところである。


「まず私は、コスト一でスペルカード、《エネルギースポイル》を使うわ!」


 このカードの効果はランデス…エネルギー系統に干渉することである。その効果でお互いのプレイヤーは、自身のエネルギープールのカードを一枚選び、それを墓地に置く。


「これで、よし! 菖蒲ちゅわ~ん? よくも私の《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》を倒してくれたわね? ご褒美に本っ当の切り札ってヤツを見せてあげるわ!」

「それじゃあ、《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》は切り札じゃないって言うの?」


 そして今、喬子が召喚しようとしているドラゴンは、特定のカード…《死霊骸竜グレイブ・アポカリプス》が墓地にいないと出せないドラゴンなのだ。


「戦場の闇より、血塗られた定めに抗う竜骨の髄! 今、その悲鳴を墓碑銘に刻め! 《死霊骸竜セメタリー・アルマゲドン》!」


 このドラゴンのコストは、何と一である。

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