カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

第二話 大会開催

CARD 6

公開日時: 2020年9月2日(水) 12:00
文字数:2,064

 大会会場は混雑している。観戦客が多く、ここでしか買えないプレイマットやプロテクターなどもあるためだ。


「ここがカード・オブ・ドラゴンのチャンピオンを決める場所か…」


 リュウシと菖蒲はあまり緊張していなかった。ただ、自分たちの最高のプレイングで大会に臨むだけ。


「ええ、ご来場の皆様方……! これよりカード・オブ・ドラゴンの日本一を決める大会…テイマーズカーニバルを開催します! 司会はワタクシ、上尾あげお耕平こうへいでございます!」


 司会の発言に、会場は熱を帯びる。


「本日お集まりいただいた大会出場者の皆様は! 運営が精査したえりすぐりのドラゴンテイマーでございます!」


 あの相場の姿ももちろんある。そして今日は昨年の優勝者及び準優勝者も参加している。他にはショップ公認大会で実績のある者や、リュウシたちのように実力者の推薦枠も存在する。激しいバトルが繰り広げられることに違いはない。


「ここで! カード・オブ・ドラゴンの生みの親、井筒いづつただし氏にマイクを渡しましょう!」


 井筒はそれを受け取ると、司会よりも落ち着いた声で、


「皆様、おはようございます。私、井筒正です。今日はこのようなイベントを四年連続で開催できたこと及び、日々カード・オブ・ドラゴンをプレイしてくださっているドラゴンテイマーの方々に感謝の意を表します。そして……」


 校長先生のような長い話が始まった。彼はきっと、自分の生み出したゲームへの思いをお押さえきれないのであろう。だがほとんどの人は聞く耳を持っていない。


(早くバトルしたいぜ…!)


 リュウシのような思考を持っている者は、大勢いる。

 井筒の話が終われば再びマイクは司会の手に移る。


「それでは、大会の方を始めたいと思います! ……ですが、本大会では公平性を保つために、トーナメント表は公開しておりません! 完全にランダムなのです!」


 それに驚く人もいれば、何も言わない人もいる。この大会は第二回以降はずっとそういう決まりなのだ。もし事前に誰と戦うかがわかってしまったら、相手のデッキに対して有利になるカードをデッキに投入することが可能になってしまう。それを防ぐための決まりである(そもそも不正防止のため、第三回以降は受付時にデッキレシピを用紙に記載する方式を取る。このランダムトーナメントは第二回目の名残だが、参加者に受け入れられたために継続された)。そして一回戦の組み合わせをランダムに決め、勝った者でまたランダムに対戦を決める形式。


「選手の方は番号札をもらったら、控室へ! 係員がバトル前に呼び出しに向かいます! では早速、移動を始めてください! 一回戦第一試合は十一時半から始まります!」


 この場はこれで解散。リュウシと菖蒲は大勢に混じって控室に向かう。くじ箱に入った番号札を引いて、そして扉を開く。


「うお……!」


 そこの雰囲気は、やや殺伐としている。みんな、歴戦のプレイヤーたちだ。


「ようリュウシ! やはり来たか!」


 相場が馴れ馴れしくリュウシの肩を叩いた。


「呼ばれたからには来るぜ!」

「いい意気込みだ…! まあとにかくよ、俺と当たるまでに負けんじゃねえぞ? お前を倒せなくなっちまうからな!」


 相場の目的はもちろん、この前のショップでのリベンジだ。


「お前こそ!」


 リュウシは相場の手を払いのけながらそう言った。

 控室にはテーブルがいくつか用意されている。おそらくテストプレイ用の席だろう。だが誰もそこには座らない。ので、リュウシと菖蒲がそこに着いた。


「どうするの? ちょっと肩慣らしに一戦やる?」

「いや…遠慮しておくぜ。ここでデッキを広げるのは、この場の皆に自分を倒してくれて言うようなもの。手の内をさらけ出すのは避けるのが無難だ」


 だからテーブルに座っても、デッキは出さない。


(自分の実力を知る、いい機会だ…。頼むぜ、オレの【リヴァイムート】!)


 カバンの中のデッキにリュウシはそう語り掛けた。


 やがて時間は過ぎ、最初の試合が始まる。


「オレじゃないのかよ!」


 呼ばれたのは全然違う人物たち。リュウシの出番はまだだ。控室にあるモニターで、初戦の様子を観察できる。二回戦以降に当たるかもしれないので、みんなその様子を見物する。


「………」


 そのレベルの高いバトルの内容に、思わず言葉を失うリュウシと菖蒲。自分たちがいかに場違いかを嫌でも思い知ることになる。他にも驚いている選手も多く、彼らはきっと初出場なのだろう。常連と思しき人物たちは盤面が覆っても少しも反応しない。


 しかし、


(いや! 行ける! オレでも十分に戦える!)


 寧ろレベルの高い相手とのバトルは大歓迎だ。逆に自分を奮い立たせた。


 そして、第一試合が終了。すると、


「七番の札をお持ちの祭田リュウシさんですね。こちらへどうぞ」

 すぐに彼の出番がやって来る。


「ようし! 相手はどんなだ? ワクワクしてくるぜ!」


 試合会場に行くと、同時に相手もやって来た。


「よろしく頼むぜ! オレはリュウシだ」

「僕は九頭竜くずりゅう淳司じゅんじです。よろしくです」


 両者向かい合ってまずは挨拶と握手。そしてお互いのデッキをシャッフルする。


「それでは、一回戦第二試合、スタート!」


 司会が叫んだ。

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