「俺はコスト六でスペルカード、《ウェポンフルバースト》を発動だ! その効果で俺は《ドラゴニュート・ハンマー》を選ぶ。このターン、他のドラゴニュートのコストは選んだドラゴンと同じになる! しかもこのターン、場に出たドラゴニュートでも攻撃できる!」
「な、何だってー!」
一気に決めるためのカードである。そのために相場は、高いコストを必要としない【ドラゴニュート】でありながら毎ターンエネルギーチャージを怠らなかった。
「俺は残ったエネルギーで三体目の《ドラゴニュート・サーベル》を場に出す!」
このゲームにおいて、同名カードは一ターンに一枚しかプレイできない。だが同名のドラゴンを場に出すことはできる。その場合、どちらかが場を離れるまで後から出た方の効果は無効化される。もっともこの場合、《ドラゴニュート・サーベル》はバニラなのであまり問題にはならない。
「さあ終わりだ、リュウシ! お前の場のドラゴンでブロックできるのは二体だけだが、俺は五体で攻撃可能! しかも全員がコスト三になっている! 《ドラゴニュート・ソード》以外は、与えるダメージも一増える!」
「でもそれはよ、大事にとっておいた《ドラゴニュート・ハンマー》と《ドラゴニュート・ソード》も攻撃したらだろう? いいのかよ、システムクリーチャーでバトルして?」
「うるせえ! ここは俺の勝ちが確定してんだ、口をはさむな!」
まず二体の《ドラゴニュート・サーベル》が攻撃。それをリュウシは自分のドラゴンでブロックした。
「続け! 《ドラゴニュート・ランサー》、《ドラゴニュート・ハンマー》!」
この攻撃は防げない。リュウシの体力は一気に八点も削られ、残り僅か三点。
相場は場の《ドラゴニュート・ソード》に手をかけた。
「この攻撃が通れば、俺の勝ちだ! 終わりだ、リュウシ!」
「いいや! 通らねえぜ! トリガーカード発動! 《ブルーウォール》!」
「何だとっ! このタイミングで、トリガーカードだとぉ!」
コスト八のそのカードの効力は絶大だ。まず、この直接攻撃を無効化する。そして次の自分のターンが終わるまで、自分の水のドラゴンは効果で破壊されなくなるのだ。
「どうせ手札に持っているんだろう、《ウェポンマックス》! 言っておくが使わせないぜ!」
(バレてやがったか…! だが…!)
この時、相場の手札は《ウェポンマックス》の他に一枚。トリガーカードの《ソニックスタンバイ》である。これは自分のドラゴンを一体、疲労状態から回復させるカード。
(これで三体目のドラゴンの攻撃さえ防げば! 俺の体力は十九点。ギリギリだが残る!)
「……俺のターンは終わった。さあ、さっさとお前のターンを済ませろ!」
「そう熱くなるなよ! じゃ、行くぜ! オレの体力は残り三点! 完全に後がない……背水の陣だ!」
そして運命のリュウシのターンが始まる。
「ドロー!」
ここで、キーカードを引いた。
「オレは《リヴァイムート・アクエリアス》を召喚! コストは五だ」
(五か…!)
ホッとし、安堵の息を零す相場。コストが五であるなら、そのドラゴンは場に出たターンに攻撃できない。
「バトルの時間だぜ! オレはまず《リヴァイムート・ネプチューン》で直接攻撃!」
相場の場には、ブロックできるドラゴンがいない。
「う、受ける!」
「さらに《リヴァイムート・レムリア》で追撃だ!」
この二回の攻撃で、相場の体力は一気に十二点減る。残り七点。
「ここだ……! 俺はトリガーカード、《ソニックスタンバイ》発動! 《ドラゴニュート・サーベル》を一体、疲労状態から回復させる!」
ここで菖蒲が叫ぶ。
「ま、マズい! 今のでブロック可能になったドラゴンが…!」
「……心配すんなよ、菖蒲! オレは《リヴァイムート・サルガッソー》で攻撃するぜ!」
「それはブロックだ! これでお前のドラゴンはもう、攻撃できない!」
「ああ、その通り攻撃は、な。だが効果はどうかな?」
「こ、効果だと…?」
リュウシは《リヴァイムート・アクエリアス》を疲労させて、《リヴァイムート・サルガッソー》を回復させた。
「何をしている? 今の攻撃、待ったとでも言う気か?」
「違うぜ。オレは既に《リヴァイムート・アクエリアス》の効果を発動していた!」
その効果は、シンプル。自分のリヴァイムートが疲労状態になる時、代わりに自身を疲労させることができるのだ。
「な、何だとコイツめええええ!」
もちろんこの効果で疲労状態から回復した場合、《リヴァイムート・サルガッソー》を再度疲労状態にさせることでもう一度攻撃ができる。
「終わりだぜ、相場! くらえ海の一撃! デストロイ・シュトローム!」
決まった。この一撃を防ぐ手段は相場にはない。
「うぐわああああああ!」
勝負終了。相場の体力はゼロになった。
「お、俺が……負けただと……?」
この死闘を制したのはリュウシ。相場は肩を落として落胆していた。
「さあ、オレの勝ちだぜ? ここはみんなで順番とルールを守って使おう! 文句はないよな?」
相場は不満そうな表情ではあるものの、ゲームに負けたために文句はない。
「……仕方ねえ、引き上げるか。だがなリュウシ! お前の名前は覚えたぜ! テイマーズカーニバルでこの雪辱を果たす!」
リベンジを誓った相場だったが、リュウシにも菖蒲にも意味が通じてない。
「何だそれは?」
「おい、知らねえのか? カード・オブ・ドラゴンの日本一を決める大会だろうが!」
それを聞くと、
「ああ、そんなのあったな…」
と二人は頷いた。
「まさか、出ねえなんて言わねえよな?」
「でも今まで大会とか出てないからね。私もリュウシも」
二人は所謂カジュアル勢で、大会とは無縁だ。だが、
「そんなのは俺が許さん! お前ら二人を出場させてやる。俺が運営に推薦すればすぐにでも通る。そして最高の舞台で、恥をかかせてやる!」
そう言って、相場はリュウシと菖蒲の名前をメモに書くと、ショップから出て行ってしまった。
「何か面倒なことになりそうじゃない?」
菖蒲は言う。
「いいさ! オレたちの実力を試す機会がやって来たと考えれば!」
前向きなリュウシ。彼の元に大会案内の連絡が来たのは、その一か月後のことだった。
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