「失った手札は、お前のドラゴンで補うぜ! バトル!」
「の前に! 俺はトリガーカードを発動!」
「このタイミングで、か?」
発動されたのは、《ファストマッチング》。これにより、輝明の《サラマンフリート・ムスプルヘイム》とリュウシの《リヴァイムート・オホーツク》。選ばれたドラゴン同士でまず、戦闘を行う。
「この時! 《サラマンフリート・ムスプルヘイム》は墓地のサラマンフリートの数だけコストが上がる! だが墓地には、《サラマンフリート・ステラー》と《サラマンフリート・バーナー》の二体のみ。よって上がるコストは二。でもこれで、コストは十二! お前の《リヴァイムート・オホーツク》は五! 差の七点、お前にダメージだ!」
リュウシの残り体力は、これで十七点。
「くっ! だが《リヴァイムート・アトランティス》の効果により、一枚ドローする!」
そしてここからが、リュウシがやりたかった本来の攻撃。《リヴァイムート・ニライカナイ》で《サラマンフリート・ブレイズ》に攻撃する。
「俺は手札最後の一枚の、トリガーカードを発動だ!」
それは、《耐熱装甲》。このターンの間だけ、自分の炎のドラゴンに戦闘破壊耐性を付与する効果。ただし次の輝明のターン終了時、この効果を受けたドラゴンは全て破壊される。
「……破壊できなきゃ、《リヴァイムート・ニライカナイ》ではドローできない…!」
差分の二点のダメージは、何とか輝明に入った。これで輝明の残り体力は二十七点。この時、《サラマンフリート・ブレイズ》の効果の発動に対し、リュウシは手札を捨ててそれを無効化。
「バトルでドラゴンを破壊できないか! だがダメージは受けてもらうぜ!」
リュウシは攻めた。《リヴァイムート・アトランティス》で《サラマンフリート・スパークス》に攻撃したのだ。これでさらに六点のダメージ。もちろん《サラマンフリート・ブレイズ》の効果は手札を捨てて無効化。
(残る手札は一枚だけだが、それは《グレイシャームーン》。ちょうど《リヴァイムート・アトランティス》で引けた! 返しのターンをこれで凌げば、輝明は自分で使った《耐熱装甲》の効果で場のドラゴンを全て失う! 逆にオレは生き残れる…)
そして輝明にターンが移る。
「……!」
ここで、彼はあるカードを引いた。
まずは下準備だ。《サラマンフリート・ブリムストーン》の効果を使い、《サラマンフリート・ボイラー》を疲労状態にすることで、コストを八点上げる。これに対し、リュウシは無効効果を使わない。
そして、
「リュウシ! 俺はこのスペルカードを使う! 《パワーオブドロー》だ!」
お互いに一枚、ドローする。それがドラゴンであれば、コストを支払わずに場に出すカード。
「賭けか? いや違うな……。デッキとの絆を試しているのか! ならばオレが負けるわけがない!」
「そうか、リュウシ…。だが俺も、信じているカードしかデッキには入れてないぜ?」
両者自分のデッキの上に手を置いた。そして引く。
「ドロー!」
まずはターンプレイヤーの輝明がドローカードを確認。
「運がいい、んじゃない! デッキが俺の思いに応えてくれている! 俺が引いたのは、コスト十! 地獄の業火は、全てを灰に変える。紅い炎で魂を包み込め! 《サラマンフリート・インフェルノ》!」
対するリュウシは、驚いた顔をしている。だがそれは、輝明が超大型のドラゴンを引き当てたからではない。
「《リヴァイムート・ニヴルヘイム》………」
そう。彼が引いたのは手札の数だけコストを上げられる、《リヴァイムート・ニヴルヘイム》。これは、最悪のドロー。何故ならリュウシの手札はたったの一枚。十一枚のカードを《リヴァイムート・バミューダΔ》の効果で捨ててしまったからである。
もし、この場に《リヴァイムート・バミューダΔ》が存在していなければ、今手札は十二枚あったはず。中にはトリガーカードもあったので、この状況にいくらでも対応できた。しかし彼は、この戦いにおける切り札を過信し過ぎたのだ。
「お互いにドラゴンを引いたか! それはコストを支払わずに場へ!」
輝明は《サラマンフリート・インフェルノ》をしっかりした手で、リュウシは《リヴァイムート・ニヴルヘイム》を震える手で場に出した。
(でもまだオレの手札には、《グレイシャームーン》がある。輝明が攻撃してくれば、その攻撃は無効、おまけにドラゴンは全て疲労状態に。そうなれば次のオレのターン、輝明を守るドラゴンはいない。大丈夫だ、オレの勝ちは揺るがない……!)
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