初動では動ける手札ではなかった。それはリュウシだけではなく、淳司も同じ。数ターンの間、スペルカードを使うだけの低速である。
(ここで引いたぜ!)
既にリュウシのエネルギープールにはカードが四枚。このターンのスタートステップで五枚目が置かれる。
「オレはコスト四の《リヴァイムート・パイシーズ》を召喚!」
そのドラゴンは自分の他のリヴァイムートが疲労状態になった時、一枚ドローできる能力がある。次のターンにリュウシのエネルギープールは六枚となり、大型のドラゴンを出して攻撃しつつ手札を補充できる。
「では僕のターン!」
しかし、淳司もエネルギーを貯め込んでいる。
「僕は《多頭類アンフィスバエナ》を召喚します。コストは五です」
彼はリュウシのよりもコストの高いドラゴンを出した。
(コストは五……。だがオレは《リヴァイムート・パイシーズ》で攻撃することは考えてはいない。次のターンに出すドラゴンで処理するか!)
そんなに大きな事とは捉えなかったリュウシは次のターンに、コスト六のドラゴンを場に出す。
「オレのドラゴンは《リヴァイムート・レムリア》! その効果で二枚ドロー!」
引いたカードを確認する。今回は運が良かった。
「よし、いいぞ! オレは《リヴァイムート・ネプチューン》を引いた! これを自身の効果で場に出すぜ!」
すぐにコスト六のドラゴンを二体並べた。
「バトルだ!」
「の前に! 僕はトリガーカード、《緊急成長》を発動します! その効果によって、このターンの間だけ《多頭類アンフィスバエナ》のコストは三上昇します」
だが、リュウシは怯まない。
「オレは《リヴァイムート・ネプチューン》で攻撃だ!」
「それをブロック!」
当然パワーで負けている《リヴァイムート・ネプチューン》は破壊。しかし相手の場の一体しかいないドラゴンが疲労状態になった。
「先に《リヴァイムート・パイシーズ》の効果で一枚ドローするぜ。それから…攻撃だ、《リヴァイムート・レムリア》!」
この攻撃は通るはず。リュウシはそう考えていたが、
「それは違いますね」
「何を言う?」
「実は、《多頭類アンフィスバエナ》が相手のターンに疲労した場合、一度だけ回復できるんですよ」
そう言いながらカードの向きを直す淳司。
「どうします? それでも攻撃しますか?」
こうなった場合、無駄にボードアドバンテージ…場のドラゴンを失うだけである。
「……やめておくぜ…」
「では、僕のターンに入ります」
淳司もコスト六のドラゴンを出せる状態。
「では、《多頭類ラードーン》を召喚! そして攻撃に移ります!」
「しかし、ソイツのコストは六だ! オレの《リヴァイムート・レムリア》と相打ちだぞ?」
「そうはならないんですよ…?」
そう。《多頭類ラードーン》は相手のドラゴンとバトルする時のみ、コストが一だけ上昇する。
「く…! 仕方がない、《リヴァイムート・レムリア》でブロックだ!」
体力を温存しておくべきと考えた結果、リュウシはブロックを選んだ。一応、ブロックはドラゴンを疲労させるので《リヴァイムート・パイシーズ》で一枚ドローはできる。
「ただ失うだけじゃないぜ? トリガーカード、《リベンジチャンス》を発動! その効果で一枚、エネルギーチャージをする!」
「しまった! どうやら次のターンに反撃が来そうですね……。僕は《多頭類アンフィスバエナ》で攻撃は行わず、ターンを終了します」
そしてリュウシのターン。
「コストを八、支払うぜ! 召喚するのは…《リヴァイムート・アトランティス》!」
コストの高さだけあって、効果は絶大。
「その効果で一ターンに一度、一枚ドローできる!」
引いたカードは、《ブルーウォール》。これで守備も完璧だ。
「バトル! オレは《リヴァイムート・アトランティス》で《多頭類ラードーン》へ攻撃!」
「それは通せないですね…《多頭類アンフィスバエナ》でブロックです」
その時、さらに《リヴァイムート・パイシーズ》の効果で一枚ドローしようとした際、淳司が待ったをかけた。
「僕のトリガーカードの方が先です! 《チェーンファング》を使います」
その効果でリュウシではなく代わりに淳司が一枚ドローを行う。
(変だな…? 何故、《リヴァイムート・アトランティス》の効果に使わなかったんだ? やろうと思えばできたはずだが…?)
リュウシの頭で疑問が渦巻いた。
「それと、僕も《リベンジチャンス》を使ってエネルギーチャージをしておきますよ」
淳司へとターンは移る。スタートステップでエネルギーチャージを済ませると、八枚も貯まっている。
「行きますよ…?」
「く、来るのか!」
しかし大型のドラゴンは飛んで来ず、まずはスペルカードを使用。
「一コストで《アタックトレジャー》発動! このターン、一度だけドラゴンを召喚する際に支払うコストを一下げます。そしてそのドラゴンが攻撃するたびに、僕は一枚ドローができる!」
これはコンボ前提カード。ただ使っただけでは、手札の《アタックトレジャー》がドローカードに変わるだけの手札交換にしかならない。
「そして本来ならコストは八ですが! 今は一下げて七コストで召喚! 《多頭類ティアマト》!」
双頭のドラゴンが場に現れた。
「ここからですよ、ここから! バトル! 僕は《多頭類ティアマト》で、《リヴァイムート・アトランティス》に攻撃!」
「相打ちか?」
「それはどうでしょう?」
「何?」
《多頭類ラードーン》の例があるので、この攻撃も普通ではないのだ。
「《多頭類ティアマト》の効果! 攻撃対象のドラゴンのコントロールを得る!」
「ば、馬鹿な?」
コントロール奪取という、凄まじい効果を持っていた。
(この攻撃を無効にできれば……だが、《ブルーウォール》は直接攻撃しか無効にできない。防げな…? そ、そうか!)
リュウシは閃いた。何故前のターンに《チェーンファング》で《リヴァイムート・アトランティス》の効果を無効にしなかったのか。その理由がわかったのである。
「《チェーンファング》でドラゴンの効果を無効にした場合、場にいる限り無効化しますからね。それでは僕の場に移っても、《リヴァイムート・アトランティス》でドローできない。だから使わなかったんですよ!」
そして、《アタックトレジャー》の効果で一枚ドローすると同時に、淳司は《リヴァイムート・アトランティス》のコントロールを得た。
「まだですよ? 多頭類は一ターンに何度か、攻撃が可能です。もちろん《多頭類ティアマト》も! 二度目の攻撃を僕は行う! でもそれで相手はダメージを受けない」
普通なら無意味なプレイ。だが、
「……《アタックトレジャー》でドローするため、だろ?」
コクリと頷く淳司。彼はこのターンだけで二枚の手札と一体の大型のドラゴンを得た。
「次は《多頭類ラードーン》で直接攻撃です!」
「う、受ける…!」
均衡が破れた。リュウシの残り体力、二十四点。
「これで僕のターンは終わりです」
「お、オレのターン! ドロー!」
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