カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 22

公開日時: 2020年9月6日(日) 14:00
文字数:1,845

 リュウシにターンが回される。ドローしてエネルギーチャージを行うと、デッキはあと五枚。場には《リヴァイムート・ポセイドン》と《リヴァイムート・ニライカナイ》のみ。


「オレは勝つ! ドラゴンを召喚するぜ、《リヴァイムート・サルガッソー》!」


 コストは十。だからなのか亨はニヤリと笑い、


「クククククククククク! それでも俺の体力を削り切れないな? コストの合計は二十三だが、俺の場にはブロックできるドラゴンがいる!」

「果たしてそうかな?」

「何だ、ブラフか?」


 いいや、違う。リュウシの顔は、嘘を言っていない。


「《リヴァイムート・サルガッソー》は他のリヴァイムートの数だけ、自分のコストを上げられる!」

「だが、それでも十二。ソイツをブロックしてしまえば?」


 宣言通り、亨は《リヴァイムート・サルガッソー》の攻撃を《ヒュドラフニール・テトロドックス》でブロック。残る二体のリヴァイムートの攻撃を受けて、残り体力を十まで減らす。


「残念だったな? 俺にターンが来てしまったぜ?」

「…今のお前は、手札はゼロ。追い詰められてんのは、お前の方だぜ、亨!」


 確かにその通りである。だが実はリュウシの方も危うい。いくら相手のデッキを削っても、残るデッキの枚数の五枚は覆らないのだ。


「引けばいいんだよ、引けば! 俺のターン! ドロー!」


 その言葉通り、何と亨は今引きで切り札を引いた。


「出させてもらおうか! コスト十の究極の毒をなあ! 《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》!」


 しかしリュウシはそのコストの大きさに驚かない。


「今頃高コストのドラゴンを出しても遅いぜ? 次のオレのターンにトドメだ!」

「それは、次があればの話だろう?」

「な、何?」

「いいかよく聞け…。《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》はな、攻撃してもお前にダメージを与えられないが! 代わりに本来発生するダメージ分だけお前のデッキを削ることができるのさ!」

「こ、ここに来て! そんな効果を…!」


 リュウシのドラゴンは全て疲労状態。今、その攻撃を止められるカードはない。しかもそれだけではない。《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》にはもう一つの効果が。


「それは! コイツが破壊された場合、お前のデッキを十枚墓地に送る…! もうお前は、止められないんだよ!」


 だが、


「止められない? 違うぜ?」


 リュウシはトリガーカードを発動した。


「《デススキップ》! その効果でオレの場のドラゴンを全て破壊する代わりに、お前にはアタックステップをスキップしてもらおう!」

「な……?」


 攻撃できなければ、せっかくの効果も意味はない。それをリュウシは見抜いていた。ボードアドバンテージを失いはしたが、即死は回避できた。


「オレのターンだ!」


 ドローは強制なので、デッキは一枚減る。エネルギーチャージはしない。


「オレはまずスペルカード、《アタックスルー》を発動! そして一コスト下がって、《リヴァイムート・ニヴルヘイム》を召喚!」

「そ、それは…!」


 淳司とのバトルを終わらせた、ドラゴンである。


「さあ終わりにするぜ、亨! 今のお前は手札がないから、トリガーカードの心配もない。それに《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》でブロックもできない! さあくらえ、ブレイブ・ブリザード!」

「しまったあああああ!」


 リュウシの手札は五枚あるので、《リヴァイムート・ニヴルヘイム》のコストは十五。対する亨の残り体力は十点しかないので、上がっていなくても十分届いた。


 死闘、決着の時。



「決まったようです! リヴァイムートVSヒュドラフニール! 水と闇のバトル! この戦いを制したのは、祭田リュウシ選手! 残りデッキは四枚。よく凌ぎました!」


 リュウシは自分のカードを回収する時、たった四枚しかないデッキを見て、


(本当に危なかった! もしオレが、亨の言うように集中できてなかったら……間違いなく負けていただろう…)


 しかし、彼は自分の精神に勝ったのだ。


「リュウシ…!」


 一方の亨は何か言いたげな表情だ。


「何だ? 文句か?」

「お前の強さ……。俺にはよくわかった! きっとお前なら枝垂に、勝てはしないだろうが、いい勝負ができるだろうな!」


 違った。亨は純粋に自分を打ち負かしたリュウシのことを褒めたのである。


「そんなに強いのか、枝垂は?」


 コクリと頷く亨。


「だとしたら、ワクワクしてきたぜ…! もっと激しいバトルができるんだからな!」


 リュウシの心には、先ほどまでの恐怖がない。この一試合の間に、成長した証だ。


「なら、さっさと控室に戻れよ。俺はお前のこの後の戦いを観客席で見物させてもらうとするか…」

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