リュウシにターンが回される。ドローしてエネルギーチャージを行うと、デッキはあと五枚。場には《リヴァイムート・ポセイドン》と《リヴァイムート・ニライカナイ》のみ。
「オレは勝つ! ドラゴンを召喚するぜ、《リヴァイムート・サルガッソー》!」
コストは十。だからなのか亨はニヤリと笑い、
「クククククククククク! それでも俺の体力を削り切れないな? コストの合計は二十三だが、俺の場にはブロックできるドラゴンがいる!」
「果たしてそうかな?」
「何だ、ブラフか?」
いいや、違う。リュウシの顔は、嘘を言っていない。
「《リヴァイムート・サルガッソー》は他のリヴァイムートの数だけ、自分のコストを上げられる!」
「だが、それでも十二。ソイツをブロックしてしまえば?」
宣言通り、亨は《リヴァイムート・サルガッソー》の攻撃を《ヒュドラフニール・テトロドックス》でブロック。残る二体のリヴァイムートの攻撃を受けて、残り体力を十まで減らす。
「残念だったな? 俺にターンが来てしまったぜ?」
「…今のお前は、手札はゼロ。追い詰められてんのは、お前の方だぜ、亨!」
確かにその通りである。だが実はリュウシの方も危うい。いくら相手のデッキを削っても、残るデッキの枚数の五枚は覆らないのだ。
「引けばいいんだよ、引けば! 俺のターン! ドロー!」
その言葉通り、何と亨は今引きで切り札を引いた。
「出させてもらおうか! コスト十の究極の毒をなあ! 《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》!」
しかしリュウシはそのコストの大きさに驚かない。
「今頃高コストのドラゴンを出しても遅いぜ? 次のオレのターンにトドメだ!」
「それは、次があればの話だろう?」
「な、何?」
「いいかよく聞け…。《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》はな、攻撃してもお前にダメージを与えられないが! 代わりに本来発生するダメージ分だけお前のデッキを削ることができるのさ!」
「こ、ここに来て! そんな効果を…!」
リュウシのドラゴンは全て疲労状態。今、その攻撃を止められるカードはない。しかもそれだけではない。《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》にはもう一つの効果が。
「それは! コイツが破壊された場合、お前のデッキを十枚墓地に送る…! もうお前は、止められないんだよ!」
だが、
「止められない? 違うぜ?」
リュウシはトリガーカードを発動した。
「《デススキップ》! その効果でオレの場のドラゴンを全て破壊する代わりに、お前にはアタックステップをスキップしてもらおう!」
「な……?」
攻撃できなければ、せっかくの効果も意味はない。それをリュウシは見抜いていた。ボードアドバンテージを失いはしたが、即死は回避できた。
「オレのターンだ!」
ドローは強制なので、デッキは一枚減る。エネルギーチャージはしない。
「オレはまずスペルカード、《アタックスルー》を発動! そして一コスト下がって、《リヴァイムート・ニヴルヘイム》を召喚!」
「そ、それは…!」
淳司とのバトルを終わらせた、ドラゴンである。
「さあ終わりにするぜ、亨! 今のお前は手札がないから、トリガーカードの心配もない。それに《ヒュドラフニール・ボツリアヌス》でブロックもできない! さあくらえ、ブレイブ・ブリザード!」
「しまったあああああ!」
リュウシの手札は五枚あるので、《リヴァイムート・ニヴルヘイム》のコストは十五。対する亨の残り体力は十点しかないので、上がっていなくても十分届いた。
死闘、決着の時。
「決まったようです! リヴァイムートVSヒュドラフニール! 水と闇のバトル! この戦いを制したのは、祭田リュウシ選手! 残りデッキは四枚。よく凌ぎました!」
リュウシは自分のカードを回収する時、たった四枚しかないデッキを見て、
(本当に危なかった! もしオレが、亨の言うように集中できてなかったら……間違いなく負けていただろう…)
しかし、彼は自分の精神に勝ったのだ。
「リュウシ…!」
一方の亨は何か言いたげな表情だ。
「何だ? 文句か?」
「お前の強さ……。俺にはよくわかった! きっとお前なら枝垂に、勝てはしないだろうが、いい勝負ができるだろうな!」
違った。亨は純粋に自分を打ち負かしたリュウシのことを褒めたのである。
「そんなに強いのか、枝垂は?」
コクリと頷く亨。
「だとしたら、ワクワクしてきたぜ…! もっと激しいバトルができるんだからな!」
リュウシの心には、先ほどまでの恐怖がない。この一試合の間に、成長した証だ。
「なら、さっさと控室に戻れよ。俺はお前のこの後の戦いを観客席で見物させてもらうとするか…」
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