「それが、命取りじゃな…!」
枝垂がそう言うまでは。
「何を根拠に! お前の場のドラゴンは全滅! 俺の場には、四体のドラゴンが…!」
「まず一枚目のトリガーカード…《リベンジチャンス》を発動…。これでエネルギーチャージする」
十枚目のカードが、枝垂のエネルギープールに落ちる。
「これで、二枚のトリガーカード…《コンティニュー・ディザスター》と《セカンダリー・ディザスター》が発動可能!」
「な、何だそれは?」
「まずは、《コンティニュー・ディザスター》の方から! このカードはわれの残り体力が十点以下でなければ使えないのじゃが、コストの合計がこのターンに破壊された災害竜のコストの合計以下になるように、デッキから災害竜を選んで場に出す!」
破壊された災害竜のコストの合計は、十七。
「まずはコスト五、《災害竜UVレイ》と《災害竜ウルトラプリニー》! そしてコスト七、《災害竜マグマオーシャン》!」
一気に三体の災害竜が場に現れる。ただし《コンティニュー・ディザスター》の制約で、攻撃宣言は行えない。
「次に…《セカンダリー・ディザスター》の効果! われがコストを支払わずに災害竜を出した場合、手札から災害竜をコストを支払わずに場に出せる! 生命の礎は、母なる大地に築かれる。止まらぬ蠢きよ、竜となりて世界を動かし姿を変えよ! 胎動せよ、《災害竜アース・クエイク》!」
コスト十の魂のドラゴンが場に出た。
「何だコイツは…?」
「《災害竜アース・クエイク》の効果! 自身またはこの効果以外で災害竜が自分の場に出た時、墓地のドラゴンを一体選び、われの場に呼び出せる!」
「蘇生系のドラゴンだったか! だがお前の墓地には大したドラゴンは落ちてはいないはず!」
「それはどうかな?」
「……え? だって…」
「われが選ぶのは、コスト十! ほとばしる火の気は、星が生きている証。狂える昂りよ、竜となりて世界のしがらみを打破せよ! 顕現せよ、《災害竜ボルケーノ・エラプション》!」
そのドラゴンは、枝垂は場に出してはいない。ただ、《災害竜メテオフォール》の効果で墓地に送られてはいた。
「《災害竜ボルケーノ・エラプション》の効果! 自身または他の災害竜が場に出た時、相手に一点のダメージを与える!」
「おい待て! 私へ生じる効果ダメージは代わりにお前が…」
「それは、《龍聖軍ベータ・アンドロメダ》の効果が生きておれば、の話であろう? 《災害竜UVレイ》が場にいる限り、疲労状態の相手の場のドラゴンの効果は無効化されておるのだ!」
「うう…!」
孝斗の体力はこれで一点削られた。
「だが、たかが一点!」
「そうかな? 《災害竜マグマオーシャン》の効果! この効果以外で相手が効果ダメージを受けた時、さらに相手に一点のダメージじゃ!」
合計二点、体力が減り、残りは十八点。
「……ターンエンド、だ…」
そしてターンが枝垂に移る。
「われのターン! エネルギーチャージをしてから…《エネルギースポイル》を発動!」
その効果で、エネルギープールのカードを一枚、自ら墓地に送る。
「われは残ったコスト十で、さらにドラゴンを召喚! 闇を切り裂く光は、一瞬の煌めき。閃く瞬きよ、竜となりて世界が歩むべき道を照らし出せ! 超越せよ、《災害竜ライトニング・ストライク》!」
「また、場に災害竜が!」
今度は光のドラゴン。
「ふふふ、《災害竜ライトニング・ストライク》の効果! 自身またはこの効果以外で自分の場に災害竜が出た時、デッキから災害竜を一体リクルートできる。まずはそれを使い、コスト六の《災害竜ポリューション》を場に! ところでわれの場に、災害竜が二体出たよな?」
ゴクリ、と孝斗は唾を飲んだ。
「よって! 《災害竜アース・クエイク》、《災害竜ボルケーノ・エラプション》の効果が二回発動! われの墓地のドラゴンを二体場に出し、そなたに二点のダメージ。その時受けるダメージは、《災害竜マグマオーシャン》で一点ずつ追加!」
これで孝斗は四点のダメージを受けた。残り十四点。
「われが墓地より蘇らせるのは、《災害竜フォトンベルト》と《災害竜ロー・プレッシャー》!」
また二体、災害竜が場に出たので効果が発動する。今度は《災害竜ライトニング・ストライク》のリクルートも、だ。
「まずは《災害竜ボルケーノ・エラプション》と《災害竜マグマオーシャン》で四点ダメージ! そして《災害竜ライトニング・ストライク》で二体リクルート! デッキから《災害竜カルデラ》と《災害竜デフォレステーション》!」
さらに四点のダメージが生じ、孝斗の体力は残り十点。
「まだ終わらぬ! 二体のドラゴンが新たに場に出たことで、《災害竜アース・クエイク》と《災害竜ボルケーノ・エラプション》の効果が発動!」
連鎖的に起きる災害の数々。
「こ、これが、【災害竜】…!」
モニター越しでもその恐怖は十分に伝わって来る。菖蒲は目を逸らし、リュウシは腰が抜けた。
「四点のダメージ後、墓地の《災害竜ランドスライド》と《災害竜アイスエイジ》を蘇生! そして新たにドラゴンが場に出たことで…」
そう。【災害竜】はキーカードこそコストが重いものの、揃ってしまうと止めることが困難になる。
この時の孝斗の手札には、ダメージを受けた時に発動できる《天体観測》があったが、受けているダメージは一度に一点ずつなので、強力な龍聖軍を場に呼び出せないのである。しかもまた違うトリガーカード、《メガスターフュージョン》については、相手のドラゴンの攻撃宣言時でないと使えない。もっとも孝斗は《災害竜ロー・プレッシャー》の効果で、五枚…握っていた手札全てを捨てさせられているのだが。
(駄目だ…。枝垂はバーンで削り切るつもりなんだ……。《龍聖軍ベータ・アンドロメダ》で攻撃さえしていなければ…!)
今頃後悔しても、もう遅かった。
「墓地の《災害竜ダウンバースト》と《災害竜ブリザード》を蘇生! そして《災害竜ライトニング・ストライク》と《災害竜ボルケーノ・エラプション》の効果! 二体の災害竜をリクルートしつつ、そなたに四点のダメージ!」
この時点で、孝斗の体力は二点しか残っていない。だが、さらに枝垂はドラゴンをデッキから呼び出す。
「《災害竜タイダル・ウェーブ》を場に出し、一枚ドロー! だが、もうそなたの体力は燃え尽きたな?」
ガクッと孝斗は頭を下げた。
「き、決まりました! チャンピオン、鮮やかな逆転勝ち! 本村孝斗選手も惜しかった! しかしチャンピオン、皇枝垂選手がそのプレイングを上回ったああ!」
司会はそう言うが、
「違う…! 完全に私の負けだ! 逆転? それは幻想だ…。最初から踊らされていたんだ!」
孝斗はそう思っていた。そして悔しさのあまりテーブルをグーで叩いた。
一方の枝垂は、デッキを片付けると、うなだれている孝斗に一度振り向いて、
「だが……そなたのプレイングは決して悪いものではなかったぞ? まだまだ見込みのあるドラゴンテイマーじゃな。またわれの前に立つ時が楽しみじゃな」
そう言って、控室に戻った。
「ねえ、強すぎない?」
菖蒲はリュウシにそう言った。
「これが優勝者の戦い…なのか…」
あまりにも衝撃的過ぎてリュウシは言葉を失ってしまった。
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