学校終了のチャイムが鳴ると、祭田リュウシはすぐに駅前のカードショップに行く。今日はクラスメイトの城ケ崎菖蒲も一緒だ。
「平日なら混まないだろ!」
高校では、ゲームの類は禁止である。だから二人は放課後までカバンの中にカードをしまっておいてある。
「リュウシ、今日は負けないからね!」
菖蒲は自信満々だ。何か新しいコンボでも思いついたのだろうか。
だが、ショップに着いた二人を待っていたのは、
「今日はテーブル、俺が使わせてもらうぜ…」
他の客がいてもお構いなしにそんなことを言う、態度のデカい客だ。もちろん周りの人は文句を言うのだが、
「俺より弱いからって、ひがんでんじゃねえよ! 邪魔だどいてろ…」
と、全く意に介さない。
「今日はここでできないかもね、リュウシ…」
菖蒲は厄介ごとに巻き込まれたくないために、そう言った。しかしリュウシの考えは違う。
「ここは、みんなで使うスペースだぜ? 独占も予約もできないはずだが?」
何と、この男…相場景一郎にくってかかる。
「何だお前? 俺に文句があるってのか?」
「じゃあよ……。どっちの主張が正しいのか、これで決めようぜ!」
リュウシはカバンから自分のデッキを取り出した。
「おおお? 俺とやろうってのか! 面白い! お前、負けたら今日は帰って野良猫の食い残した魚の骨でもしゃぶってな!」
この時点で店の中が少しざわつき出した。
「アイツ、やめた方がいいのによ……。だって相場の野郎は結構な実力者だぜ? 去年の大会でも結構な成績だったんだ」
「そんな実力者に挑むのかよ!」
「無理に決まってる! 負けるぞ……。結果は火を見るよりも明らかだ」
明らかにリュウシにも聞こえる声で客は、そう言った。だが彼は退かない。相場と向き合ってテーブルに座る。
「名前を聞いておこうか?」
「リュウシ。オレは祭田リュウシだ。お前は?」
「俺は相場だ。言っておくが手加減はしねえ! それが、俺なりの相手に対する敬意! 全力をもってぶっ潰す!」
ゲームを始める前に、各自デッキをシャッフル。そしたら相手と交換し、互いにカット。これは不正行為防止のためである。それが終わると返却され、その後はシャッフルはできない。
「じゃあ、始めるか! カード・オブ・ドラゴンをな!」
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