カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 8

公開日時: 2020年9月2日(水) 14:00
文字数:2,088

 状況はかなり絶望的だ。リュウシの場には効果が無効になった《リヴァイムート・パイシーズ》が一体のみ。一方淳司の場には、多頭類が二体に奪ったリヴァイムートも。


(なるほどな。複数回攻撃が可能なドラゴン! それが【多頭類たとうるい】! 頭数は名前だけじゃないってことか!)


 しかし彼はここで諦めるような男ではない。そしてその思いに応えるかのように、デッキはカードを引かせるのだ。


「オレのエネルギープールにはカードが九枚! 召喚する、もう一度大型のドラゴンを! 来い、《リヴァイムート・パシフィス》!」


 この状況を打開できるカードだ。


(まず、淳司の場にはブロックできるドラゴンはいない。そしてあの《多頭類ティアマト》は厄介すぎて場に残せない。さらに《リヴァイムート・アトランティス》の効果も使わせない。となると、このドラゴンしかないぜ!)


 リュウシは攻撃を宣言する。対象はもちろん《多頭類ティアマト》。防ぐ手段のない淳司はこれを通し、破壊された。体力もやっと一点削られる。


「でも《多頭類ティアマト》は十分に働いてくれた! 僕のターン、ドローしてエネルギーチャージ! このメインステップに《リヴァイムート・アトランティス》の効果を発動!」


 そう宣言したものの、デッキはうんともすんとも言わない。


「あれ、おかしいですね…。一ターンに一度、一枚ドローできるはずでは?」

「残念だったな、淳司! 効果は間違ってないが、それは不可能だぜ!」


 これが、《リヴァイムート・パシフィス》の効果なのだ。


「コイツがオレの場にいる限り、お前はカードの効果でドローできない!」

「んな、何だって? まさか君は、自分のドラゴンが奪われた時のことも考えてデッキを構築していると言うのか!」


 ドロー効果は不発に終わる。


「ならば攻撃はどうです? 僕は《リヴァイムート・アトランティス》で直接攻撃!」

「ダメージこそ受けるが! トリガーカード、《ディープストライク》発動! 効果でオレが選ぶのは、《リヴァイムート・アトランティス》!」


《ディープストライク》は相手の場のドラゴンを一体、バウンスするカード。それは相手の場のドラゴンであっても、持ち主の手札に戻る。


「こ、この…!」


 全くドローできなかったために、淳司は苛立った。


「ならば僕は、《多頭類ラードーン》で直接攻撃!」


 これもリュウシは受ける。さっきの攻撃に加えて、今の一撃で体力は大きく減った。あと十点しか残っていない。


「ふう、十点もあれば十分だぜ!」


 淳司がエンド宣言をしたので、リュウシのターンが始まる。


「オレは手札に戻った《リヴァイムート・アトランティス》を召喚して、効果で一枚ドロー! おっと、二枚目の《リヴァイムート・ネプチューン》だ!」


《リヴァイムート・ネプチューン》はカードの効果でドローされた場合、コストを支払わずに場に出せる。さっきも同じことをしたので淳司も驚かない。


「一気に行くぜ! オレは《リヴァイムート・ネプチューン》、《リヴァイムート・パシフィス》、《リヴァイムート・アトランティス》で直接攻撃だ!」

「うわあああああああ!」


 三体のドラゴンの攻撃が、見事に炸裂。淳司の体力はあっという間に残り五点。もはや風前の灯火である。


(《リヴァイムート・パイシーズ》で追撃を仕掛ければ残り体力一点まで削れるが……)


 乗り気になれない。淳司の手札のトリガーカードを警戒し、リュウシは攻撃しない。これはプレイミスではなく、このターンに倒しきれないのなら次のターンでトドメを刺すつもりである。


「ぼ、僕の……ターン…!」


 だが淳司のエネルギープールも十枚。


「いい気になっていますね、リュウシ! でも僕はいいカードを引いた。いや、デッキが与えてくれた!」

「何を出すつもりだ…?」


 その十枚を疲労させて、淳司はとあるドラゴンを場に出す。


「日出ずる国の古に伝わりし神話が、暴虐の竜を生み出す! 八つの頭を持つ竜よ、底知れぬ欲望で勝利を噛み取れ! 《多頭類ヤマタノオロチ》!」


 それは、ありふれた名前ではあるものの、リュウシに鳥肌を立たせた。


(凄まじいプレッシャーだ! これは間違いなくヤバいドラゴン…!)


 淳司はすぐにアタックステップに移る。


「まず僕は、《多頭類ヤマタノオロチ》で《リヴァイムート・アトランティス》に攻撃!」


 コストの差は二。だからリュウシは大したダメージではないとこの攻撃を通す。


「まだです! 《多頭類ヤマタノオロチ》は相手のドラゴンとバトルした場合、疲労状態から回復する!」

「でも、多頭類共通デメリット効果で二度目以降の戦闘では俺は、ダメージを受けないんだろう?」

「誰がそんなこと言いました? 《多頭類ヤマタノオロチ》のデメリットは、直接攻撃が行えないだけです!」

「ま、マジかよ…!」


 ブロックしても、その後にブロックしたドラゴンとのバトルが行われるので、攻撃は始まったが最後、止められない。


「さあ次、《リヴァイムート・パシフィス》へ攻撃!」


 また一点、リュウシの体力がドラゴンと共にはじけ飛ぶ。これで後七点。


「まだです! 《リヴァイムート・ネプチューン》にも攻撃!」

「く、う!」


 差は四。なのでリュウシの体力は残り三点。


「の、残った!」

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