カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

CARD 39

公開日時: 2020年9月11日(金) 13:00
文字数:2,432

 ボードアドバンテージの差は何とか埋められそうだ。が、


「リュウシ君。君は枝垂を倒したいと思ってはいないのか?」

「いきなり何を言う? お前のターンだぞ?」

「私が言いたいことは一つ…。その程度では絶対に勝てん! それを教えてやろう! 私のターン、ドローしてエネルギーチャージ!」


 コスト七のドラゴンを場に出した。


「《節足竜目センチピード・ヒドラ》…。このドラゴンは君にとって、かなり厄介だろう。私はターンを終わる」

「大口叩いておいて、攻撃しないのかよ! 見え見えのブラフだぜ!」


 回ってきたリュウシのターン。もちろん出すのは《リヴァイムート・レムリア》だ。


「効果発動! 場に出た時、二枚のドローが……」


 だが、デッキが反応しない。


「どういうことだ? オレは効果の発動を宣言したぞ?」

「これが、《節足竜目センチピード・ヒドラ》の効果! お互いにカードの効果でドローできず、手札を捨てることも不可能となる!」

「そんな馬鹿な?」


 ドローに優れる【リヴァイムート】にとって、致命的な妨害である。才林としては枝垂の【災害竜】対策に入れたカードだが、ここでメタカードとして役に立った。


「くっ……! このままターンエンドだ…」


 弱気に飲まれるリュウシ。しかし活路はまだ見える。


(あのドラゴンさえ除去できれば、【リヴァイムート】は息を吹き返す!)


 そんな希望を抱いているリュウシとは、全くの逆の考え方をする才林。


(その、逆転のキーカードが引けなければ意味はないのだよ、リュウシ君! 君のデッキはドローを加速してキーカードを引き当てるデッキ。最初の動きさえ封じてしまえば、こっちのものだ…。今は《節足竜目センチピード・ヒドラ》の駆除を最優先で考えているはず。だから私が取るべき行動は…)


 普通、そのカードを守り抜くことに思える。しかし彼はそういう考えを持っていない。


「私のターン。コスト八、《節足竜目ホーネット・ファフニール》を召喚。その効果で、私の場の節足竜目と相手のドラゴンを一体ずつ破壊する!」

「あの、《節足竜目ホーネット・ファフニール》か……。これは厄介だな……」


 リュウシもそのカードを持ってはいるため、驚きはしなかった。

 才林は自分の《節足竜目アントリオン・コカトリス》を、リュウシの場から《リヴァイムート・パイシーズ》を破壊した。


(…何故、コストの低い《リヴァイムート・パイシーズ》を?)


 リュウシにはそれがわからない。だが理由は簡単で、もし《節足竜目センチピード・ヒドラ》が除去されたら、《リヴァイムート・パイシーズ》は効果を使えるようになるからである。リュウシの場の他のドラゴンは、場に出た時にしか効果が発動しない。言い換えるなら、そのタイミングが過ぎればバニラ同然。今更それらを除去する理由はないのだ。


「効果を発動した《節足竜目ホーネット・ファフニール》は疲労状態になる。そして私は、《節足竜目ソースタッグ・バハムート》で直接攻撃!」


(来る…!)


 リュウシの手札には、このタイミングで発動できるトリガーカード、《退化》がある。これを発動し、《節足竜目ソースタッグ・バハムート》の攻撃力を下げてからブロックすれば、返り討ちにできるが、


「先に言っておこう! 《節足竜目ソースタッグ・バハムート》はブロックはできないが、全てのバトルに勝つドラゴン! コストを下げても無意味だ」

「ならオレは! 《退化》で選ぶのは《節足竜目ホーネット・ファフニール》! 場にいる限りコストは三、下がるぜ! そしてその攻撃は《リヴァイムート・ネプチューン》でブロックだ!」

「…だろうな。私はターンエンド」

「オレのターン! ドローしてエネルギーチャージ!」


 コスト七の《リヴァイムート・ニライカナイ》を場へ。そしてアタックステップ。《リヴァイムート・ニライカナイ》で《節足竜目ホーネット・ファフニール》へ攻撃。


「毎ターン場を荒らせるそのドラゴンを野放しにはできないからな!」


 リュウシは得意気になってそう言った。だが相手の才林は少しも焦っていない。


(本来なら、《節足竜目センチピード・ヒドラ》を退けるために使いたいであろう手札を、《節足竜目ホーネット・ファフニール》に使わせる…。これが私の戦略。そしてこうなった場合の次の札は既にある)


 返しのターン。


「私は《節足竜目ビートル・ドラグーン》を召喚。コストは六だ。さらに残った三コストで、スペルカード《予定孵化》を発動!」


 その効果で節足竜目を一体、デッキから選んで、シャッフルしてからデッキの一番上に置く。

 次はアタックステップ。全てのバトルに勝つ《節足竜目ソースタッグ・バハムート》で、《リヴァイムート・ニライカナイ》に攻撃。


「破壊はされた。だがオレはトリガーカード、《水の源》を発動! その効果で《リヴァイムート・ニライカナイ》以下のコストの水のドラゴンを一体、デッキから場に出すぜ! 出て来い、《リヴァイムート・アクエリアス》!」


 これは《リヴァイムート・アクエリアス》の効果を考えれば、悪くない選択。


「そしてオレのターン!」


 エネルギープールは八枚貯まった。よって手札にある、《リヴァイムート・アトランティス》を出した。


(効果はドローに関するものだから使えないが、《節足竜目センチピード・ヒドラ》よりはコストが高い。相手が攻撃してくれば、これで……!)


 能動的な除去カードが引けていない現状、相手の動きに頼るしかない。けれどもそれすらも才林はお見通しなのか、


「私のターン。私は《節足竜目ソースタッグ・バハムート》で攻撃。この瞬間、《節足竜目ビートル・ドラグーン》の効果発動。相手の場の疲労状態ではないドラゴンを一体選び、それにブロックを強制させる」

「しまった!」


 選ばれたのは、もちろん《リヴァイムート・アトランティス》。コストで勝っていても、効果でバトルに勝つ《節足竜目ソースタッグ・バハムート》には無力。リュウシは再びドラゴンを失った。場には《リヴァイムート・アクエリアス》と《リヴァイムート・レムリア》のみ。

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