ボードアドバンテージの差は何とか埋められそうだ。が、
「リュウシ君。君は枝垂を倒したいと思ってはいないのか?」
「いきなり何を言う? お前のターンだぞ?」
「私が言いたいことは一つ…。その程度では絶対に勝てん! それを教えてやろう! 私のターン、ドローしてエネルギーチャージ!」
コスト七のドラゴンを場に出した。
「《節足竜目センチピード・ヒドラ》…。このドラゴンは君にとって、かなり厄介だろう。私はターンを終わる」
「大口叩いておいて、攻撃しないのかよ! 見え見えのブラフだぜ!」
回ってきたリュウシのターン。もちろん出すのは《リヴァイムート・レムリア》だ。
「効果発動! 場に出た時、二枚のドローが……」
だが、デッキが反応しない。
「どういうことだ? オレは効果の発動を宣言したぞ?」
「これが、《節足竜目センチピード・ヒドラ》の効果! お互いにカードの効果でドローできず、手札を捨てることも不可能となる!」
「そんな馬鹿な?」
ドローに優れる【リヴァイムート】にとって、致命的な妨害である。才林としては枝垂の【災害竜】対策に入れたカードだが、ここでメタカードとして役に立った。
「くっ……! このままターンエンドだ…」
弱気に飲まれるリュウシ。しかし活路はまだ見える。
(あのドラゴンさえ除去できれば、【リヴァイムート】は息を吹き返す!)
そんな希望を抱いているリュウシとは、全くの逆の考え方をする才林。
(その、逆転のキーカードが引けなければ意味はないのだよ、リュウシ君! 君のデッキはドローを加速してキーカードを引き当てるデッキ。最初の動きさえ封じてしまえば、こっちのものだ…。今は《節足竜目センチピード・ヒドラ》の駆除を最優先で考えているはず。だから私が取るべき行動は…)
普通、そのカードを守り抜くことに思える。しかし彼はそういう考えを持っていない。
「私のターン。コスト八、《節足竜目ホーネット・ファフニール》を召喚。その効果で、私の場の節足竜目と相手のドラゴンを一体ずつ破壊する!」
「あの、《節足竜目ホーネット・ファフニール》か……。これは厄介だな……」
リュウシもそのカードを持ってはいるため、驚きはしなかった。
才林は自分の《節足竜目アントリオン・コカトリス》を、リュウシの場から《リヴァイムート・パイシーズ》を破壊した。
(…何故、コストの低い《リヴァイムート・パイシーズ》を?)
リュウシにはそれがわからない。だが理由は簡単で、もし《節足竜目センチピード・ヒドラ》が除去されたら、《リヴァイムート・パイシーズ》は効果を使えるようになるからである。リュウシの場の他のドラゴンは、場に出た時にしか効果が発動しない。言い換えるなら、そのタイミングが過ぎればバニラ同然。今更それらを除去する理由はないのだ。
「効果を発動した《節足竜目ホーネット・ファフニール》は疲労状態になる。そして私は、《節足竜目ソースタッグ・バハムート》で直接攻撃!」
(来る…!)
リュウシの手札には、このタイミングで発動できるトリガーカード、《退化》がある。これを発動し、《節足竜目ソースタッグ・バハムート》の攻撃力を下げてからブロックすれば、返り討ちにできるが、
「先に言っておこう! 《節足竜目ソースタッグ・バハムート》はブロックはできないが、全てのバトルに勝つドラゴン! コストを下げても無意味だ」
「ならオレは! 《退化》で選ぶのは《節足竜目ホーネット・ファフニール》! 場にいる限りコストは三、下がるぜ! そしてその攻撃は《リヴァイムート・ネプチューン》でブロックだ!」
「…だろうな。私はターンエンド」
「オレのターン! ドローしてエネルギーチャージ!」
コスト七の《リヴァイムート・ニライカナイ》を場へ。そしてアタックステップ。《リヴァイムート・ニライカナイ》で《節足竜目ホーネット・ファフニール》へ攻撃。
「毎ターン場を荒らせるそのドラゴンを野放しにはできないからな!」
リュウシは得意気になってそう言った。だが相手の才林は少しも焦っていない。
(本来なら、《節足竜目センチピード・ヒドラ》を退けるために使いたいであろう手札を、《節足竜目ホーネット・ファフニール》に使わせる…。これが私の戦略。そしてこうなった場合の次の札は既にある)
返しのターン。
「私は《節足竜目ビートル・ドラグーン》を召喚。コストは六だ。さらに残った三コストで、スペルカード《予定孵化》を発動!」
その効果で節足竜目を一体、デッキから選んで、シャッフルしてからデッキの一番上に置く。
次はアタックステップ。全てのバトルに勝つ《節足竜目ソースタッグ・バハムート》で、《リヴァイムート・ニライカナイ》に攻撃。
「破壊はされた。だがオレはトリガーカード、《水の源》を発動! その効果で《リヴァイムート・ニライカナイ》以下のコストの水のドラゴンを一体、デッキから場に出すぜ! 出て来い、《リヴァイムート・アクエリアス》!」
これは《リヴァイムート・アクエリアス》の効果を考えれば、悪くない選択。
「そしてオレのターン!」
エネルギープールは八枚貯まった。よって手札にある、《リヴァイムート・アトランティス》を出した。
(効果はドローに関するものだから使えないが、《節足竜目センチピード・ヒドラ》よりはコストが高い。相手が攻撃してくれば、これで……!)
能動的な除去カードが引けていない現状、相手の動きに頼るしかない。けれどもそれすらも才林はお見通しなのか、
「私のターン。私は《節足竜目ソースタッグ・バハムート》で攻撃。この瞬間、《節足竜目ビートル・ドラグーン》の効果発動。相手の場の疲労状態ではないドラゴンを一体選び、それにブロックを強制させる」
「しまった!」
選ばれたのは、もちろん《リヴァイムート・アトランティス》。コストで勝っていても、効果でバトルに勝つ《節足竜目ソースタッグ・バハムート》には無力。リュウシは再びドラゴンを失った。場には《リヴァイムート・アクエリアス》と《リヴァイムート・レムリア》のみ。
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