「さあ、あんたのターンよ?」
「なら、行かせてもらう…」
菖蒲のターン。先にエネルギープールを九枚貯めた彼女は、より大型のドラゴンを出せる。
(でも手札がよく肥えてない…)
だから彼女はコストをまずは五支払って《ビオランドラゴラ・スクアレン》を、コストを四支払って《ビオランドラゴラ・カンファー》の二体を場に出した。ボードアドバンテージを得る作戦だ。
「これでターンエン…」
「の前に私はトリガーカード、《上皿天秤》を発動」
「うう!」
そのプレイングが裏目に出た。《上皿天秤》は自分のドラゴンが相手よりも少ない場合、相手にドラゴンを同数まで減らさせる効果を持っている。今、菖蒲の場にはドラゴンは四体だが、唯は二体。よって菖蒲は自分のドラゴンを二体選び、破壊しなければいけない。
「私が選ぶのは、《ビオランドラゴラ・カンファー》と《ビオランドラゴラ・スクアレン》…」
今出したばかりのドラゴンが、吹っ飛んだ。
「では、私のターン」
唯はスタートステップを済ませると、コスト九のドラゴンを手札から出す。
「《チーロン・リーガル》…。場に出た時、相手の場のドラゴンの数だけドローできるわ。あんたの場には、ビオランドラゴラが二体。だから二枚ドロー」
減った手札を補うと、何と唯はそのドラゴンで直接攻撃をしてくるのだ。さっきまでとは態度が明らかに違う。
「私は…」
「の前に、《チーロン・リーガル》の効果を発動。相手のドラゴンを一体選び、疲労状態にさせる。私が選ぶのは、《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》」
「でも、《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》は各ターン初めて疲労状態になったら…」
「《チーロン・ジャッジメント》の効果。疲労状態の相手のドラゴンの効果は無効化される」
全て計算済みなのだ。唯は盤面を築く時、無駄なカードを全く出さない。
「じゃあ、《ビオランドラゴラ・シトロネロル》でブロック!」
ブロックでバトルし、負けた《ビオランドラゴラ・シトロネロル》は自身の効果で墓地ではなくエネルギープールに送られる。
そして追撃を仕掛けて来ない唯。菖蒲のターンだ。だが《ビオランドラゴラ・チゴゲニン》はこのスタートステップでは回復できない。これも相手の効果によるもの。
「でも私のエネルギープールにはカードが十枚! 出せる! 《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》! その効果で私は、《チーロン・リーガル》をエネルギープールに送る!」
言われた通り唯は《チーロン・リーガル》をエネルギープールに置いた。が、同時に手札のドラゴンを場に出した。
「私の《チーロン・リーガル》が相手によって場から離れた場合、手札の《チーロン・イリーガル》は相手のターンだろうと場に出せるわ」
「そ、そんな…! せっかく除去したのに、またコスト九のドラゴンが?」
しかしコストでは、《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》が勝っている。
「なら、バトル! 私は《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》で直接攻撃!」
「それは通さない。私はトリガーカード、《冤罪》を発動。その攻撃をまずは無効に。そして私の場にチーロンがいれば、さらに相手のドラゴンを一体選んで疲労状態にさせる……けど、あんたの場には疲労状態のドラゴンしかいないから、これは不発だわ」
結局このターンのアタックステップは、空振りに終わった。
(かなり、マズい雰囲気…)
そして、嫌な予感を菖蒲は感じる。
「では、私のターン…」
この時唯はエネルギーチャージをしなかった。さっきのターンに無理矢理、自分の場のドラゴンをエネルギープールに送られたから、しなくてもコストが足りているのだ。
「コスト十のドラゴンを召喚。間違える者には、正しき鉄槌を。罪深き魂に厳しき裁きを。《チーロン・パニッシュメント》」
ついに切り札を降臨させた唯。だがコストは菖蒲の《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》と同じ。このままでは相打ちにしかならないが、逆に言えば、一方的に負かせる自信があるということでもある。
「その効果を使用。まず疲労状態の相手のドラゴンを全て破壊する。そしてこのドラゴンが疲労していない場合、あんたはドラゴンを疲労状態に出来なくなる」
これは強烈な効果である。盤面のリセットに加え、相手の行動を縛る。
(ここまで縛れば、もう何もできないはず…。でも……)
ここで唯は考える。自分の場には四体のドラゴン。そのコストの合計は、三十三。一点も減っていない菖蒲の体力をこのターンで削り切れる。
しかし相手のエネルギープールには既にカードが十一枚。手札は四枚。強力なトリガーカードを隠し持っていてもおかしくはないのだ。
だが、攻めなければ勝利を掴むことは不可能。唯は決めた。
「アタックステップ。まずは《チーロン・イリーガル》で攻撃」
「私はその攻撃時に、トリガーカード《クイックリバース》を発動! その効果で自分の墓地のドラゴンを一体選んで、私の場に戻す! 私が選ぶのは…」
ここで《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》を出された場合、《チーロン・パニッシュメント》が間違いなく狙われる。それを唯が良く思うわけがない。
「《チーロン・トライアル》の効果で手札から一度だけ、トリガーカードを私も使うわ。《贖罪》。相手がドラゴンを選ぶとき、それは私が選びなおす」
これで、《ビオランドラゴラ・ストリキニーネ》の復活はなくなった。唯は菖蒲に墓地のカードを見せてもらい、そこから代わりとなるドラゴンを選ぶ。強いドラゴンを選択するわけがなく、
「私は、《ビオランドラゴラ・メントール》を選択。それを場に出して」
菖蒲はその効果で一応エネルギーチャージをする。
「そのドラゴンは疲労状態にできないから、ブロックもできない。私は《チーロン・イリーガル》の攻撃を再開。これで…」
「これで、もう《チーロン・トライアル》の効果は使ったよね?」
「ん?」
すると菖蒲は、手札のトリガーカードを相手に見せた。
「私はトリガーカード、《緑化》を発動!」
「……しまった!」
それは、自分のエネルギープールの森のドラゴンを一体選んで場に出すカード。
(ここまで《贖罪》は温存すべきだった? でも…)
そこまで強力なドラゴンはエネルギープールには落ちていないはず。今までエネルギーチャージをくまなく確認してきたので唯にはわかる。
「私が選ぶのは…《ビオランドラゴラ・フコキサンチン》!」
「そんなドラゴンいつの間に…? はっ!」
菖蒲はそれをエネルギープールに置いていた。いや、正確には唯が置かせたのだ。《クイックリバース》の効果対象を《ビオランドラゴラ・メントール》にしたことで。
「さあ! どうする?」
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