カード・オブ・ドラゴン

杜都醍醐
杜都醍醐

第十三話 海源竜VS灼炎龍

CARD 48

公開日時: 2020年9月13日(日) 12:00
文字数:2,145

 準決勝第一試合が終わった。死闘は枝垂が制し、菖蒲はこのトーナメントから姿を消す。控室にいる二人はそのことを、別々な捉え方をする。


(やはり枝垂が勝ったか…。優勝者の肩書きは伊達じゃない! 俺が勝てば決勝であたる! その時! 不敗神話を焼き尽くしてやるぜ…)


 輝明はそう考えている。一方のリュウシは、


(菖蒲が負けたのか……。一緒にここまで頑張ってきたのに…!)


 衝撃を受けている。枝垂の強さは知っているが、菖蒲が負けたことに驚きを隠せないのだ。


(で、でも……)


 しかし、今は目先の自分の試合に集中すべき、と思い直した。そして係員に呼ばれる。少し時間差があって、リュウシの方が会場に着いたのは後だった。

 両者、顔を合わせる。相手の目を見れば、複雑な思考はわからないにせよ、おおよそそれが行き着く先が何であるかがわかる。


(この試合、相手は輝明! 【サラマンフリート】の戦術は、コストを上げて相手に攻撃すること! 対策は二つ。攻撃する機会を与えないことと、こちらからコストを下げるカードを使うこと! そうすれば…)


(確か、リュウシのデッキは【リヴァイムート】だったな? ドローに優れる印象だ。きっとデッキに眠る強力なカードを引き当て、バトルを有利に運ぶ戦術。だとしたら、引かれる前に叩く! これができれば…)


 二人のゴール。それは同じである。


(勝てる!)



 勝負開始。先攻は輝明である。だがお互いに最序盤は出方を伺い、二ターン連続で《エネルギー・ギフト》を使用。そして先に動き出したのは、輝明だ。


「俺はコスト五の、《サラマンフリート・ブレイズ》を召喚だ」


 自分がダメージを受けた場合、その数値分コストが上昇するドラゴン。輝明は牽制しに来たのである。


「オレのターン! ドロー! エネルギーチャージ!」


 迂闊にダメージを与えられなくなった状況。だが、リュウシには秘策が。それは既に手札に存在している。


(コストは十と思いが…。《リヴァイムート・バミューダΔ》! 手札を捨てれば相手の攻撃か効果を無効にできる効果! 手札を増やしながら、これで押さえつければ…!)


 やや反則的な効果を持つ、このバトルにおける切り札だ。だが、その存在をにおわせれば、ピーピングハンデス…相手の手札を確認して選んだカードを捨てさせる効果に、先手を打たれてしまう。


(ここは、手札を増やしつつデッキ圧縮をアピールし、まだ何も握っていないと錯覚させる!)


 結局このターンリュウシは、《リヴァイムート・キャンサー》を召喚し、一枚ドロー。加えて残った二コストで《井戸汲み》も発動し、手札を交換。


「では、俺のターンだ」


 コスト六の、《サラマンフリート・バーナー》を召喚し、その効果を発動。自身のコストを二上げる。これでコストは八。


(攻めるには十分だが…? 万が一面倒なトリガーカードを握っていたら、こっちが不利になるな…)


 しかし今はまだ、その時ではない。ここで攻撃しても、おそらくコストの上がった《サラマンフリート・バーナー》の攻撃をブロックされ、《サラマンフリート・ブレイズ》の攻撃しか通らない。

 ここで攻撃しないのは、臆病な発想ではない。相手に余計な逆転の機会を与えないことも立派な戦術。そう考えれば何もしないことも重要。


「ターンエンド」

「じゃあ、オレのターンだな…?」


 リュウシはこの時、ホッとしていた。手札に攻撃反応型のトリガーカードはない。攻め込まれたら、ドラゴンも体力も失っていた。だが、ドローに手札交換したことで、輝明に躊躇いを植え付けることができたのだ。


「コスト四の、《リヴァイムート・パイシーズ》を召喚。さらに手札から《デス・ギフト》発動! オレの《リヴァイムート・キャンサー》を破壊し、一枚のドローとエネルギーチャージを行う!」


(手札をまた、補充した…? ということは…?)


 ここで、輝明はリュウシの手札を見抜く。引き当てたいカードがあるのだろうが、もしかするとそれがまだ、手札にないのでは、と。


(ならば、リスクは小さい! 次のターンで攻撃をし、できる限り体力を削るだけだ!)


 ターンが移り、輝明のターン。


「《サラマンフリート・ステラー》を召喚する!」

「ブロックしてもダメージを受けるあのドラゴンか!」


 効果の凶悪性は理解している。


「さらに《サラマンフリート・バーナー》の効果だ! 選ぶのは、自分自身! これでコストは十! 準備完了だ、バトル!」


 まず、《サラマンフリート・バーナー》でリュウシに直接攻撃。序盤で十点も失うわけにはいかず、リュウシは《リヴァイムート・パイシーズ》でブロック。


「でも、コストの差分……六点のダメージだぜ?」

「く…! だがオレはトリガーカード、《アベンジドロー》を発動だ!」


 その効果で、二枚ドロー。


「だが、今のお前の手札には、おそらく俺のドラゴンの攻撃を止める札はない! 続け、《サラマンフリート・ステラー》!」


 コスト七のドラゴンの攻撃宣言。


「……確かに、あの時オレの手札は悪かった。だがな、引いたぜ!」

「何!」

「その攻撃宣言時、トリガーカード発動! 《グレイシャームーン》!」

「しまったっ……!」


 それは攻撃を無効にし、相手の場のドラゴンを全て疲労状態にするカード。さらに自分の場にドラゴンが存在しない状況で発動したのなら、次の相手のスタートステップでそれらは回復できない。

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