「どうした?」
「これだから、お前のようなヤツの相手は簡単なんだよ…」
選ばれた《ジャバコアトル・ピースキーパー》に乗っているサイコロの目を一に戻すと、
「王冠カウンターを一つ取り除けば、破壊から身を守ることができる。もちろん勝利は遠のいてしまうがね…」
「な……! 自分自身に守れる効果があるのか!」
これには驚きを隠せない輝明。
(じ、じゃあ、アイツを突破するには……。王冠カウンターをゼロにした上で、破壊しないといけない)
まだ佳樹のメインステップ。彼は盤面を強固にするため、二体目の《ジャバコアトル・タロス》を場に出した。
「僕はこれでターンエンドだ」
これで佳樹の《ジャバコアトル・ピースキーパー》は二度まで、破壊から逃れることができる。
「お、俺のターン…」
エネルギープールは九枚。これで大型のドラゴンを出して攻めたいところだ。
(待てよ…?)
ここで、輝明はあることに気がついた。
(あの《ジャバコアトル・ピースキーパー》を無視して佳樹本人に攻撃すれば! アレは王冠カウンターを乗せるために疲労状態になっているから、コストは十だがブロックはできない!)
案外、簡単なことに思えるかもしれないが、実は難しい発想である。特殊勝利に気を取られていると、それを除去することに集中してしまいがちなためだ。だからこれは盲点を突いた考え方。
「俺はコスト九の《サラマンフリート・ブリムストーン》を召喚! その効果で、俺の場の他のサラマンフリートを任意の数疲労状態にして、そのコスト分、自身のコストを上げる!」
選んだサラマンフリートのコストは、五。よって《サラマンフリート・ブリムストーン》のコストは十四に膨れ上がる。
「《サラマンフリート・バーナー》は自身に効果を使い、コストを十へ! そしてバトル!」
まだ、《サラマンフリート・ブリムストーン》の攻撃は温存する。ここは邪魔なドラゴンを除去するために、《サラマンフリート・バーナー》のみで攻撃。相手は《ジャバコアトル・ピースキーパー》。カウンターを除去しておくことに越したことはないため、相打ち覚悟での攻撃だ。
「それは通そう。だが《ジャバコアトル・タロス》が代わりに破壊される」
「ターンエンドだ」
「では僕のターン。僕は《ジャバコアトル・ピースキーパー》に再び、二個目の王冠カウンターを乗せるよ。で、このターンはバトルを行う。《ジャバコアトル・パトリオット》で《サラマンフリート・ヴァイオレット》を攻撃!」
これは当然の選択。他のサラマンフリートがいては、《サラマンフリート・ブリムストーン》が延々とコストを上昇できてしまうためだ。差分の一点が輝明の体力から引かれる。
「やっぱり攻撃するよな。絶対に勝てるって思ってんならよ!」
「何が言いたい? 僕が君の思惑にはまったとでも?」
「ああ! 俺はトリガーカード、《アクシデントバーン》発動だ!」
このカードは、自分のドラゴンが戦闘で破壊されないと発動できない。全く攻めてこない佳樹でも、輝明のドラゴンを減らしておきたいという考えは持っているために、これにかかった。
「効果で、俺のエネルギープールの枚数以下のコスト…つまり九以下のコストを持つ炎のドラゴンを墓地から蘇生! 甦れ、《サラマンフリート・ステラー》!」
それを見たら、一瞬だけ焦っていた佳樹の表情が戻った。
「何だ、ただの蘇生カードか。てっきり《ジャバコアトル・ピースキーパー》を破壊するのだと思ったよ」
「いいや。もう攻略法は見えた!」
「何を言うかと思えば、見え見えのブラフか…。相当できる手札ではないんだろう? だって次のターン、僕は勝つのだから!」
「それはどうかな?」
「うん…?」
耳を疑う発言に、佳樹は首を傾げた。
「俺の……ターン!」
そして、キーカードを引いた。
「僕はトリガーカードを使わせてもらう」
佳樹が発動を宣言したのは、《ソニックスタンバイ》。対象は《ジャバコアトル・ピースキーパー》で、それを疲労状態から回復させる。このタイミングで使用したのには訳があり、攻撃対象に選ばれた後に疲労状態から回復させても相手のドラゴンの攻撃を止められないからだ。
「これで、《ジャバコアトル・ピースキーパー》を攻撃することはできなくなったわけだ。そして君のデッキには、破壊系のカードは少ないから、効果破壊も怖くはない。それでもまだ僕に勝つと言うのかい?」
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