おめぇらみてぇな若いのとあんまり付き合いたくはないんだが、この街のことを教えて欲しいって言うんなら、教えてやらんこともない。
この街はな「とうきょう」って言ってだな。こん中に文字の読める奴がいるかもしれんから、なんて書くかも教えてやるよ。東狂だ。
この街は人が100万いるってぇ言う奴もいるし、500万いるってぇ言う奴もいる。本当の所は誰もわからんよ。だってな、誰も調べねぇし、調べてもわかりっこねぇ。調べてる内にどんどん人が死んじまうし、調べてる奴だって死んじまうかもしれねぇんだからな。
この街にいるのは俺らみてぇな人ばっかじゃないんだぜ。ほんのちっと昔にやったユラノト様と漠軍政の戦争に使われた、ガモっていう奴らがいるんだ。簡単に言うと人じゃねぇ種族もいるってぇことだ。俺はあんまりアイツらのことを好きじゃないんだが、マギ族は楽しい奴らだよ。温和で毛むくじゃらでスタスタ歩くんだ。
アイツらのことはおめぇらの目で確かめた方が速いからここら辺にするぜ。
この街は色んな所があるんだ。ここいらみたいな砂漠に森、様々な見た目の家々。目まぐるしいぐらいだ。
それにこの街にはネジやら歯車がゴロゴロしてんだ。あれの中には魔法が詰まってるやつがあるから、極力関わらない方がいい。ネジを拾って酷いことになった奴を知ってる。
更にはほら。そこにあるみてぇな骨もゴロゴロしてんだな。なんの骨かは考えたって分かりっこないし考えたって無駄だな。
こんなイカれた街だから語れば俺が死んじまうまで語れるんだが――もちろん冗談だ。キリがないから後は暮らしてみてだな。
最後に、おめぇらにこの街で暮らす為の忠告をしておくぜ。口で伝えるのは面倒だからこれから書くことを読める奴が、みんなに伝えてやってくれや。
・裏道には行くな
・電車では居眠りをするな
・カジ王国と漠軍政では用心しろ
・ネジやら歯車やらは拾うな
・巣ガモには行くな
・魔法使いには気をつけろ
こん中には理解できねぇ忠告もあるとは思うが、この街で暮らしてりゃいずれわかる。
こんなもんでいいだろ。最後にアドバイスだぁ?そうだな。この街では自分の感覚を信じろとだけ言っておくよ。
え?俺の名前?ちっとも最後じゃねぇじゃねぇか。俺の名前はなボムだ。小生意気なガキ共からはボム爺って呼ばれてるただの老いぼれだ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!